がん保険の選び方|『がん保険の免責期間』この期間の存在を考慮すべき、というはなし
一般的ながん保険には、他の生命保険商品にはない特徴がひとつあります。それは、契約が有効になっても、すぐには保障をしてくれない、『免責期間』というものが存在することです(※1)。多くのがん保険において、加入後、90日間は、がんになっても保障(お支払い)できませんという規定が設けられています。
この90日間の免責期間、実は気をつけないと、あとでつらい思いをする可能性があります。
そこで今回は、がん保険の手続きに際し、この90日間の免責期間を考慮しなければならないケースについて、考えていきたいと思います。
まさに今、『がん保険の新規申込、見直し』をしようとしているあなたへ、お届けしたいはなしです。
(※1) ちなみにすべてのがん保険ではなく、一部免責期間を設けない保障も存在します。
目次
この免責期間の期日と、詳細を理解する
がん保険は、契約から90日間は保障がされません。しかも、月々の保険会社への支払い(保険料と言います)は、行わなければなりません(※2)。少し厳しい感じがしますが、これについては、ルールですのでどうしようもありません。
こういった厳しいルールができたことには、背景があるのですが、そういったがん保険の歴史を学ぶことが、このサイトの目的ではないので、それについてはここでは触れません。それよりも、この90日間があなたにどのような影響を与える可能性があるか、知っておいていただきたいと思います。
(※2) 免責期間が明けてから、保険料負担が始まるがん保険も一部あります
免責期間が明ける日を確認
がん保険の契約が成立したものの、90日間は保障されない。まず、がんの診断日が、何月何日からであれば、がん保険からお金を受け取ることができるのか、日にちベースで確認することが大切です。
これについては、どの日を起点に数えるか、確認すればわかるのですが、担当者や保険会社に確認することをおススメします。保険会社によっては、契約後に届く、『保険証券』にその日付が載っている場合があるので、その場合は安心です。3か月は、普通に生活しているとあっという間かもしれませんが、念のために確認はしておいた方が良いと思います。
がん診断されたら契約が無効
私は過去に、10,000回以上の保険相談会に携わってきました。私が担当したお客様の中で、がんの診断を受けてしまった方もいらしゃいます。その中で、この免責期間に診断を受けた方は、幸い、いらっしゃいませんでした。
ただ、万が一この90日の間にがんの診断を受けた場合、がん保険契約は、契約時にさかのぼって、無効となります。どうことかというと、契約をしなかったという扱いになります。故意でなければ、払ったお金(保険料)も戻ってきます。ただし、がんの診断を受けてしまったので、あらたにがん保険に入りなおすことは、困難になります(※3)。確率は高くはないですが、シビアなはなしです。
(※3) がんの診断後のがん保険加入が困難なことについては、過去の記事「がんの備え|『がん保険はいつでも入れる?』お金を払えば入れると思ってはいけない、というはなし」を、是非ご覧ください
新規加入の場合、スケジュールの確認を
現時点でがん保険の加入がなく、これから新規に検討をする方については、単純に90日が無事に過ぎることを祈るしかありません。また、この90日があるから、何でもいいから早く加入するということまでは、する必要はないと思います。
ただ、何らかのがん保険に加入する意思があるのであれば、他の種類の生命保険と違い、この90日があるがゆえに、注意が必要です。
健康診断のスケジュール
会社員の方の場合、毎年健康診断を受けるかと思います。ある程度スケジュールも会社の都合に合わせることも多いのではないでしょうか。がん保険に加入した直後に、健康診断を受けるスケジュールとなった。何もないことの方が多いかもしれませんが、結果が出るまでの間、あまり気持ちのいい時間ではないと思います。
また、健康診断を受けて、まだ結果が出ていないタイミングで、がん保険を申込もうとする場合があります。私の過去の経験ですが、この場合、保険会社から健康診断の結果が出てから、その結果をふまえて、あらためて手続きすることを求められることがあります。
加入の可否(診査条件)に関しては、個々の保険会社で定めています。私が断定的なことを申し上げてはいけませんが、一般的、そして過去の経験的に、健康診断の便検査で、『便潜血』が確認されると、ほぼ『要精密検査』の判定となります。これは、『大腸がんの疑い』とみられる可能性があるので、精密検査を受診して、異状なしの判定がないと、がん保険の加入は難しいかもしれません。
必要であれば先送りしない
また、そろそろがん保険考えようかどうしようか、迷っている時に、体調不良で受診し、がんではないものの、なんらかの診断を受けてしまうケースがあります。若しくは、もうすでに受診中で、それがきっかけで、がん保険に加入したいという人もいるかもしれません。
その受診(治療)内容と、がんに、関連性が高ければ高いほど、がん保険加入のハードルは高くなることが予想されます。もし、がん保険が必要だと思われているのであれば、健康診断の予定や、急な体調不良が出る前に、検討することをおススメします。
見直しの場合、保障に穴をあけないこと
それから、すでにがん保険に加入していて、最新のがん保険に見直しをしたいというケースがあります。ここでもやはり、他の保険種類と違い、90日免責を考慮する必要があります。一般的な生命保険や医療保険であれば、新しい保険のプランを申込み、その診査がとおったら、古い保険の解約手続きを進めます。
ところが、がん保険の場合、診査がとおっても、90日間保障されません。ここは慎重に段取りを理解する必要があります。
保険料の重複
お客様サイドからすると、もったいないという思いになるかもしれませんが、約3ヶ月の間は、新しいがん保険と古いがん保険の契約を、並行していく必要があります。そして、無事に90日が近づいてきたら、古いがん保険の解約書類を取り寄せ、90日が経過した瞬間に、その書類を提出する、それが重複を最低限にするやり方です。
万が一ですが、90日の期間でがんの診断を受けてしまった場合、新しく申し込んだがん保険は無効となります。そのため、当初見直そうと思った古いがん保険を継続することとなります。
解約を忘れずに
このケースにおいての注意点ですが、新旧のがん保険を並行させて、90日が経過したあとも、古いがん保険の解約を忘れてしまうケースがあります。私も過去、自分のお客様へはこのスケジュールは、入念に説明した記憶があります。
忘れないようにメモをとって、3か月は家の中で目立つようにしておくなどの工夫が必要かと思います。
がんを知り、必要な保障はお早めに
明確にがん保険が不要という人は、加入する必要はないと思います。ただし、『そのうち考えた方がいいかなぁ~』というようなあいまいな気持ちの方は、注意が必要です。まだ保険に加入したことがない方であれば、致し方ないことではあるのですが、がん保険を始めとした、生命保険には、健康状態に関する診査があります。
がん保険は、お金を払えば必ず入れるものではありません(※4)。過去に私は、がんになってしまったので、がん保険に入りたい、という相談の方にお会いしたことがあります。これは、ほぼ不可能であるのが現実です。
(※4) お金を払っても、がん保険に入れないケースについては、過去の記事「がんの備え|『がん保険はいつでも入れる?』お金を払えば入れると思ってはいけない、というはなし」を、是非ご覧ください
まずは、がんの情報を
私は、がん保険自体には、加入してもしなくても、どちらでもいいと思います。なぜなら、がん保険がなくても、がんと戦うことは可能だからです。もちろん、がん保険以外での、経済的な裏付けは必要ですが。
ただ、がん保険はなくてもいいですが、がんに対する正しい情報は、必須だと思っています。いくらお金があっても、正しい情報がなければ、おそらくがんに振り回されることになります(※5)。ですから、若くて健康不安が低い時に、がんのことを知ってもらいたいと思っています。
そして、がんに対する知識があれば、がん保険に入るべきかどうか、正しく判断もできますし、先送りもしないのではないかと思います。
(※5) がん情報の重要性については、過去の記事「がんの備え|『がん患者の家族』を経験して初めて分かった、がんに関しての情報の出どころを学んでおくことの大切さ」を、是非ご覧ください
気になれば一度相談を
もし、がんに対する知識をつけたいとなった時に、日本ではがんの情報だけを提供してくれる場所がありません。とはいえ、自分で必要な情報をすべて集めることも困難な可能性があります。そのため、一度、がん保険の加入を前提にせずに、来店型保険ショップなどへ相談してみてはいかがでしょうか。そこで、がん保険が必要かどうかに対する情報が出てきます。
その機会に、あなたの保険の担当者から、がん保険の商品情報だけではなく、がん治療の実態や、実は大事な日本の医療のルールなどについても情報を得て、正しいがんへの備えを作っていただきたいと思います(※6)(※7)。
保険商品のはなししかできない人は、がんについて、しっかり学んでいない可能性があります。もし、はなしの内容が薄いと感じたならば、他でセカンドオピニオンをとってでも、正しい情報をとっておくことをおススメいたします。それくらい、事前にがんを学んでいるかどうかは、大きな違いだと思っています。それは、正しいがんの知識を持たずに、約9年間、がん患者の家族という立場を体験した、私の実感でもあります。
(※6) がん治療の実態については、過去の記事「がんの備え|私たちが日本でがんになってしまった時、選択肢となる『4つのがん療養』」を、是非ご覧ください
(※7) 実は大事な日本の医療のルールについては、過去の記事「がんの備え|がんと日本の医療のルールを知らないことにより、主治医とのミスコミュニケーションが生じる可能性があるというはなし」を、是非ご覧ください