がん保険の選び方|『指定代理請求人』がんは家族単位での戦い、後でストレスにならないよう、早めに整備をしておくべきというはなし

がん保険を始めとする、たいていの生命保険商品には、『指定代理請求人』の指定がされています。これは、例えばがん保険において、がんの診断を受けお金を請求できる条件が整った時、原則は受取人(通常はがん患者さん)が、自分で請求しなければなりません。ただし、病状が悪く自分で手続きができない時に、この指定代理請求人が、代わりに手続きをすることができるという制度です。

がんに対する保障内容ではなく、手続き上のはなしなので、あまり重要に感じることも少ないかもしれません。ところが、いざがんになってしまった時のために適切に整えておかないと、後々大きなストレスを感じることがあります。特に70歳以上などの高齢者の契約でそこに問題があると、そのストレスは大きくなる可能性があります。

そこで今回は、加入しているがん保険の指定代理請求人をどのようにしておくべきか、不適切な場合どのようなストレスが発症しうるかについて、一緒に見ていきたいと思います。

まさに今、親が『がん保険』に加入しているあなたへ、お届けしたいはなしです。

一般的には、配偶者や親を指定

がん保険に加入の際、指定代理請求人を指定します。一般的には、配偶者、親や兄弟などから、1人を指定します。万が一がん保険に加入した本人が、請求活動ができない時に、その指定代理請求人が本人に代わって請求活動を行うことができます。また、最近はかなり少ないかと思いますが、がんになったのですが、本人に正確な病名が告知されていない(がんということを知らせていない)時に、指定代理請求人から請求ができます。

この指定代理請求制度は、今では当たり前になっていますが、古い契約の場合、誰も指定がされていないケースがあります。もし、指定がなければ、後から追加できる場合がありますので、担当者へ確認されることをおススメいたします。

70代以上の方の場合

がん保険に加入している70代の方は、たくさんいらっしゃると思います。その中で配偶者がいらっしゃる方は、ご夫婦相互で指定代理請求人となっているケースが多いと思います。今は70代といっても、お元気な方がたくさんいらっしゃいますが、一方で認知症などを発症する方も増えています。

指定代理請求人の指定が形式化していて、実際がんになり、ご本人が動けない時に、認知症や介護など何らかの理由で、指定代理請求人も動けないといったことも起こります。

40代以上の方が親を指定

また、40代以上でシングル(独身)世帯の方が、70代以上の親を指定している場合にも、同じことが起こり得ます。また、もしその方が、その親と同居していない場合、指定代理請求人になっている親が、そもそもその事実を知らないというケースもあり得ます。

がん保険加入時には、保障内容や月々の負担額(保険料といいます)などが、検討ポイントになるかと思います。もちろん、それは大切なことなのですが、プランが確定した後には、実際使う(請求する)時のことも、契約前に押さえていただきたいと思います。

昭和の時代は、本人でなくとも手続きができた

今20代、30代の方には、イメージが薄いかもしれませんが、昭和の時代には、今ほど『本人確認』が厳しくありませんでした。何か契約の手続きをするにも、夫の名前の契約を、妻が代わりに書類を記入して、それで契約が成立してしまうなどという、今では考えられないことが、まかり通っていた時期もあったのです。

ここでは、過去のことに対しての評価をすることが目的ではないのですが、過去の慣習が、現在に影響を与えているところもあるので、確認しておきたいと思います。

すべて妻まかせの夫

すべてのご夫婦がそうではありませんが、元々昭和の時代に、なんでも妻に任せてしまってきた人で、そのことに完全に慣れ切ってしまっていて、退職後も自分で動くことが面倒だという人が、私の周囲にもいらっしゃいました。私も来店型保険ショップで仕事をしていた時に、配偶者(妻)が来店し、

『主人の保険の変更手続きをしてほしい』

といった、お申し出をいただくことがありましたが、今は法律も厳しくなっており、それは原則できません。そして、人生100年時代などともいわれています。80代、90代の保険契約者の方も、ますます増えていくことになります。早めに今の時代に対応しなければなりません。

知らなければ動けない

すべて配偶者(妻)まかせにしてきて、夫の側が何も知らないままに来てしまってきた場合のはなしです。配偶者(妻)の側ががんになってなってしまい、万が一身動きが取れなくなってしまった場合に、夫がそもそもがん保険があるのかどうか、あったとしてもどこの保険会社なのか、保険証券がどこにあるのか、何をしたらいいのか、全然わからず、あたふたしてしまうケースがあります。

本当は、治療や看病に専念したいところですが、どうしていいかわからないと、がん保険を始めとした、様々な諸手続きが、非常にストレスに感じる可能性があります。

フットワークが軽い人がならなければ、機能しない

がん保険は、万が一がんになってしまった時に、治療費などお金の面で助けてもらうために加入します。家族ががんになってしまうと、今までの仕事や日常生活はそのまま続く上に、がん患者さんの生活面でのサポートや、健康保険の高額療養費(※)やがん保険の手続きなど、やらなければいけないことが増えて、家族の負担は少なからず増します。

ただし、がん保険などの手続き関係は、さっさと問合せして、書類を取り寄せるなど動いていけば、難しくはありません。また、最近はHPから書類請求できる保険会社も増えています。なので、フットワークよく動くかどうかだけなのです。ですから、この指定代理請求人は、そういったタイプの人がなることが、本来は望ましいと思います。

※1 高額療養費については、過去の記事「『高額療養費』がんに限らず、覚えておいて損はないというはなし」を、是非ご覧ください

変更は可能

最初の保険契約時に配偶者を指定していたとしても、後から変更することは可能です。いままで指定代理請求人に対する認識がなかった方は、一度保険証券を確認することをおススメいたします。

さきほどまでは、高齢者のケースを見てきましたが、例えばまだ30代、40代で、シングルマザーの方が、未成年の子供を指定代理請求人にしているケースもあります。小学生の子供が保険の手続きを行うことは、かなり困難ではないでしょうか。子供が成人するまでは、親や兄弟など、具体的に動ける人になってもらうことをおススメいたします。

指定できる対象者が拡大

ライフスタイルの多様化から、実は指定代理請求人になれる人の範囲が広がっています。今までは、近い親族しかなれないのが原則でしたが、内縁状態のパートナーや同性カップルのパートナーなども対象とできる保険会社が出てきています。

もし、過去の保険契約時には、不可だったため、別の親族を指定していた方も、保険会社の規定が変わっている可能性があります。もしそういった方がいらっしゃったら、一度保険会社に確認することをおススメいたします。

親の加入している保険を知っておくことが大切

がんは、家族単位での戦いになるケースもあります。ご家族の人数やその関係性などの状況はそれぞれではありますが、少なからず家族に影響は出てきます。がん患者さんになる人が、高齢であれば、一般的にはその子がいろいろ対応することもあると思います。実際私も母のがん治療において、主治医の先生とのやり取り、医療保険、がん保険などの手続き、病院往復の車の運転など、いろいろ経験しました。

がん保険についても、動く人がその存在をしっていないと、手続きしたくても

・保険証券が見当たらない
・どこの保険会社で契約しているのかわからない
・そもそもがん保険に入っているかどうかわからない

ということが起こり、確認するのに大変な手間がかかります。医療系の保険に関しては、親子間など、実際動いてくれる人にその存在をあらかじめ知っておいてもらい、いざという時に、すぐ確認できる準備はしておいたほうがいいと思います。

最近は、保険会社HP内で、契約者専用ページなどがあり、そこへログインすれば、内容の確認、書類手続きの依頼などができるようになっています。そういったものの、ID、パスワードを管理することも大切です。

特に医療、がん、介護系

がん保険もそうですが、医療保険、介護保険など、病気などが原因で支払いを受ける保険の場合、病院で診断書を作成してもらう必要があるケースが多いです。本来治療を受ける前に、保険会社へ書類を請求し、治療に行った際に窓口で診断書作成を依頼すると、病院に行く手間がはぶけます。

これが退院などをしてから請求しようとすると、診断書作成依頼だけのために、再び病院へ行かなければなりません。また、出来上がった後、取りに行かなければならないケースもあります。がんを治すだけでなく、いろいろ手続きは出てきます。がん保険の手続きで、ストレスが出ない体制を作っておくことも、実は大切ではないかと思っています。

加入時だけでなく、入ってからも

こういった、実際がん保険を使う時のことは、お客様サイドであらかじめ押さえておくことが、なかなか難しいかもしれません。ですから、実際がんになってしまう前に、またなってしまったら速やかに、アドバイスを提供してくれる保険の担当者が必要なのだと思います。何か困った時に安心して頼れる担当者がいることも、ひとつの備えなのだと思います。

是非、がん保険や生命保険の相談の機会に、あなたの保険の担当者から、がん保険の商品情報だけではなく、がん治療の実態や、実は大事な日本の医療のルールなど、そして今回のテーマ、実際がんになってしまった時の影像が浮かぶ情報を得ながら、正しいがんへの備えを作っていただきたいと思います(※2)(※3)。そして、契約時点だけでなく、その後も頼りになる存在かどうか、見定めていただきたいと思います。

がんと聞いて、がん保険商品の選択肢しか出せない人は、がんについて、しっかり学んでいない可能性があります。もし、はなしの内容が薄いと感じたならば、他でセカンドオピニオンをとってでも、正しい情報をとっておくことをおススメいたします(※4)。それくらい、事前にがんを学んでいるかどうかは、大きな違いだと思っています。それは、正しいがんの知識を持たずに、約9年間、がん患者の家族という立場を体験した、私の実感でもあります。

(※2) がん治療の実態については、過去の記事「がんの備え|私たちが日本でがんになってしまった時、選択肢となる『4つのがん療養』」を、是非ご覧ください

(※3) 実は大事な日本の医療のルールについては、過去の記事「がんの備え|がんと日本の医療のルールを知らないことにより、主治医とのミスコミュニケーションが生じる可能性があるというはなし」を、是非ご覧ください

(※4) 生命(がん)保険相談のセカンドオピニオンについては、過去の記事「がんの備え|『がん保険選びにもセカンドオピニオン』一番大切なことは、オトクながん保険選びではない、というはなし」を、是非ご覧ください

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