がん保険の選び方|『うちがん家系なので、がん保険に入りたい』保険加入は別にしても、この人はきっかけがあるからいい、というはなし

日本だと、『がん家系』という言葉を耳にすることがあります。私も以前は、そういうことがあるのは、普通のことだと思っていました。要は、がんは遺伝性があるということで、親などががんになっていると、自分もがんになる可能性が高いというような理解です。

私は過去に、10,000回以上の保険相談会に携わってきましたが、『うちがん家系なので、がんへ備えたい』ということをよく伺いました。ご夫婦で相談にいらっしゃった方で、『夫の方はがん家系、妻の方は大丈夫、だから夫の方だけはがん保険入っておきたい』、そんなリクエストもありました。

そこで今回は、日本でわりと定説になってしまっていると思われる、がんの遺伝性と、それがあるがゆえのメリット・デメリットについて、一緒に見ていきたいと思います。

まさに今、『うちはがん家系だから、がん保険に入りたい』と思っているあなたへ、お届けしたいはなしです。

本当にがんに遺伝性はあるのか?

日本でよく耳にする、がん家系とか、がんは遺伝の病気という言葉。どうやらこの理解、完全な間違いではないようですが、正解とも言えないようです。いつの間にか、そういうものだということが定着して、特に正されることなく、ずっと来てしまっているようです。

遺伝性は5%程度

遺伝とか遺伝子といったことは専門外なので、少し医師の説明を引用します。

 がんは、遺伝子の損傷による細胞の不死化が原因となる「遺伝子の病気」です。しかし、遺伝はがんの発生要因全体からみれば5%程度にすぎません。遺伝する病気という見方は誤解です。
 確かに、生殖細胞の遺伝子の異常が代々受け継がれて、特定のがんが発症しやすい家系も存在します。米女優のアンジェリーナ・ジョリーさんもその一人で、遺伝子検査の結果、BRCA1という遺伝子の異常が発見されたため、乳腺組織と卵巣を予防的に切除しています。
 

出典:知っておきたい「がん講座」リスクを減らす行動学 著者:中川恵一 発行:日経サイエンス社 発売:日本経済新聞出版社

ということで、確認さているがんの遺伝性は存在するものの、比率としては小さなものだということです。

過度に心配することはない

もう少し引用を続けます。

 こうした家族性腫瘍はがん全体の5%にすぎません。ほとんどの「遺伝子の傷」は体の細胞(体細胞)に後天的に生じるものです。がん細胞にできた突然変異は次の世代には遺伝しません。
 どの遺伝子が傷つくかはランダムに起こりますので、がんは運の要素も多い病気と言えます。禁煙など生活習慣の改善で遺伝子変異のリスクは大きく減らすことはできますが、完璧な生活でもがんを完全に防ぐことはできません。

出典:知っておきたい「がん講座」リスクを減らす行動学 著者:中川恵一 発行:日経サイエンス社 発売:日本経済新聞出版社

とうことで、遺伝性よりも生活習慣、そして運次第というところもあるようなので、親ががんだからという理由だけで、過度に気にしなくても良いようです。

考えるきっかけがあることはメリット

結果、がん家系自体は都市伝説のようなものでしたが、防ぎようのないところもあるということを考えると、やはり備えはしておいた方が良さそうです。

ただ、うちはがん家系だからといって、相談にいらっしゃる方は、がんが怖いと思うきっかけがあるので、それはメリットと言えます。その点は良い点で、そう思った段階で、正しい情報と備えについて考えると良いと思います。

がんを知って予防する

防ぎきれないところはあるものの、生活習慣の影響もあるようなので、がんという病気を知って、出来る備えはするというスタンスが良いと思います。その際、いきなりがん保険どれがいいか?というはなしよりも、出来る予防策を知ることが第一だと思います。

それでも、万が一がんになってしまった時、どのような治療の流れになるのか、治療にはどういった選択肢があるのか、納得した治療を受けるためには、何が必要なのかという、いわゆる情報を持っておくことが大切です。がんは、情報戦とも言われています。お金があるだけでは戦えないという実態もあるので、まずは情報の重要性を押さえることが大切です。

がんのお金も知っておく

一定のがんに対する知識(情報)が得られたならば、実際になってしまった時に、どういったお金がどの程度かかかる可能性があるかという見積もりに基づき、現在の貯蓄の状況から、がん保険などの保障が必要かどうか、考えていった方が良いかと思います。

がん家系だからがんが怖いという入り口から、がんを正しく恐れるという方向で考えていくことが大切なのだと思います。

『うちはがん家系ではない』がデメリット

一方、このがん家系という都市伝説が、逆効果となってしまっているケースがあります。ご自身の親や親族などに、がんになった人がいない場合、自分は『がん家系ではない』という認識になる場合があります。

全く気にならない

自分はがん家系ではないということで、がんは全く心配ないという感覚になってしまうと、そもそも気にならないことが考えられます。やみくもにがんを怖がればいいということではないですが、『自分はがんにはならない』という認識になることは、いざという時を考えると実は怖いことになると思います。

余計ショックは大きい

そもそも自分はがん家系ではないから、がんにはならないという人が、万が一本当にがんになってしまうと、『なんで自分が?』というショックが、とてつもなく大きくなる可能性があります。また、そもそもならないという人だと、おそらくがん保険などの備えもしていない可能性があります。当然ですが、情報の備えもないことが考えられますから、とてもつらい闘病生活になるかもしれません。

がんは全員が知るべき

冒頭で引用したように、がんは運の要素も大きい病気です。そしてまだまだ分からないことも多いと言われている病気です。そして、日本では、毎年約100万人の人が、新たにがんの診断を受け、約40万人の人が、がんでお亡くなりになっています。

国民病とも言われているがん、やはり多くの人ががんになる前に、がんのことを知っておく必要があると思います。

がん教育がスタート

数年前から、中学校・高校では、『がん教育』がスタートしています。将来を担う若い世代に、早いうちからがんのことを知り、備えていくことの大切さを学んでもらうことは、非常に意義深いことだと思います。

ただ、優先順位という観点からすると、本当はすでに社会人になってしまっている、私たちの方ががんの罹患リスクは高くなっています。国は、本当は日本の社会人世代に、がんのことを知ってもらいたいと考えているのですが、残念ながら社会人にとって、がんを学ぶ場がないということが、課題となっています。

生命保険検討時を

残念ながら、日本で普通に生活しているだけだと、なかなかがんの情報は入ってこず、どうしても自分事としてとらえるのが難しいと思います。その中で、ひとつ自然とがんのことが話題となる場があります。それが、生命保険の検討(相談)時です。生命保険のはなしをする時には、リスクのひとつとして、がんが出てきます。

是非みなさまも、がん保険を検討する機会には、あなたの保険の担当者から、がん保険の商品情報だけではなく、がん治療の実態や、実は大事な日本の医療のルールなどについても情報を得て、正しいがんへの備えを作っていただきたいと思います(※1)(※2)。

がんと聞いて、がん保険商品の選択肢しか出せない人は、がんについて、しっかり学んでいない可能性があります。もし、はなしの内容が薄いと感じたならば、他でセカンドオピニオンをとってでも、正しい情報をとっておくことをおススメいたします(※3)。それくらい、事前にがんを学んでいるかどうかは、大きな違いだと思っています。それは、正しいがんの知識を持たずに、約9年間、がん患者の家族という立場を体験した、私の実感でもあります。

(※1) がん治療の実態については、過去の記事「がんの備え|私たちが日本でがんになってしまった時、選択肢となる『4つのがん療養』」を、是非ご覧ください

(※2) 実は大事な日本の医療のルールについては、過去の記事「がんの備え|がんと日本の医療のルールを知らないことにより、主治医とのミスコミュニケーションが生じる可能性があるというはなし」を、是非ご覧ください

(※3) 生命(がん)保険相談のセカンドオピニオンについては、過去の記事「がんの備え|『がん保険選びにもセカンドオピニオン』一番大切なことは、オトクながん保険選びではない、というはなし」を、是非ご覧ください

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