がん保険の選び方|『上皮内がんでも払ってくれるがん保険』素晴らしいけど、使い方に注意!というはなし

がんには、その進行度を示す『ステージ』というものがあります。日本においては、0期~4期までの5段階に分けられていますが、一番初期の0期を、上皮内がん(新生物)と呼んでいます。上皮内新生物について、国立がん研究センターでは、以下のように定義しています。

上皮内新生物(intraepithelial neoplasia;neoplasm):遺伝子に傷がついた異常な細胞のうち、上皮内にとどまっているものを、上皮内新生物といいます。上皮内新生物は、基底膜を越えていないため、多くの場合手術で取り除くことが可能で、転移していることはほとんどありません。

出典:国立がん研究センターがん情報サービス

私は医師ではないので、この上皮内新生物に対する、医学的な評価はできませんが、そこまで心配せずともよいのでは?と思っています。そして、がん保険のはなしでいうと、多くのがんの保障において、この上皮内がんは、支払い対象外です。

ただ、がん保険商品によっては、この上皮内がんも、ステージⅠ以上のがんと同じ評価で、支払い対象となるものがあります。支払い範囲が広いことは良いことですが、少しだけ押さえておくべきことがあります。

そこで今回は、そういったがん保険で、上皮内がんでお金を受け取った後に、確認しておくべきことについて、考えていきたいと思います。

まさに今、『上皮内がんも支払い対象のがん保険がいい』と思っているあなたへ、お届けしたいはなしです。

おそらくもらったお金は余る

がん保険には、『がん診断給付金』などという名称で、がんの診断を受けたら、100万円支払います、といった保障があります。この保障ですが、ステージゼロの上皮内がんでも支払ってくれるがん保険があります。一方、上皮内がんは、支払い対象外というがん保険もあります。

上皮内がんだけでは、そこまで医療費がかかる可能性は低いですし、仕事への影響も低いと思います。ただし、出るのと出ないのと選べるならば、出る方が…という人も多いかと思います。そこで、上皮内がんでも支払われるがん保険について、確認していきたいと思います。

枠が一緒かどうか?

上皮内がんを支払い対象とするがん保険ですが、大きく2つに分けることができます。それは、枠を分けているかどうか、です。ステージ0から4期まで、特に分けることなく、どれかに該当したら支払われるタイプと、0期は0期だけ、それとは別に1期から4期まで用に、保障が分かれているものがあります。

保障を分けているタイプは、 1期から4期での支払いは、100万円、それに対し上皮内がんでの支払いは、10万円とか50万円とか、金額を調整しているものを多く目にします。このあたりは、がん保険によって違うので、要確認です。

不払い期間がスタート

枠が分かれている場合は、それぞれの支払要件があるので、それをよく確認して選べば良いと思います。一方、枠が分かれていない場合、もし、上皮内がんで受け取った場合、そこから次の支払いへ向けてのしばりが始まることが多いことは、注意が必要です。

例えば、がんの診断を受けたら、100万円お支払い、2年に1回という条件で、回数無制限、といったものがあります。もし、上皮内がんで受け取った場合、そこから2年間の不払い期間が始まります。上皮内がんで100万円受け取っても、おそらくほとんど余ると思います。そうなると、儲かった!と、うれしくなります。でも、その不払い期間に転移する可能性のあるがんの診断を受ける可能性は、もちろんあります。

余ったお金は、旅行やショッピングで使わず、取っておく必要があるという点が注意です。

その注意点を押さえれば、あとはメリットを享受

今述べた注意点を押さえれば、上皮内がんで受け取れることは、メリットだと思います。ただし、がん保険の選択のポイントは、上皮内がんが支払い対象かどうかだけではありません。これだけにこだわらず、全体の保障のバランスや月々の負担(保険料と言います)などをふまえて、総合的に判断することが大切です。

保険料免除はありがたい

上皮内がんまで保障対象とするがん保険をもし選択する場合、『保険料払込免除特約』などといった名称の、がんの診断を受けたら、その後の保険料は払わなくて良いというオプションがあった場合、これはつけておいた方が良いのではと思っています。

上皮内がんでも、一度診断を受けてしまうと、その後新たにがん保険に加入することができなくなる可能性があります(※1)。そうなった場合、その時加入しているがん保険を継続するしかないのですが、その際に月々の負担が無いことはメリットになるかと思います。

(※1) 一度上皮内がんの診断を受けると、新たにがん保険に加入できない可能性については、過去の記事「がんの備え|『がん保険はいつでも入れる?』お金を払えば入れると思ってはいけない、というはなし」を、是非ご覧ください

がん用の貯蓄がある

上皮内がんで、100万円などの一時金を受け取って、それを銀行口座へ残しておけば、ステージ1以上のがんになってしまった時に、すでにがん用の貯蓄ができている状態となります。そして、1回目の100万円の受取りから時間が経過していれば、再び100万円を受け取れるかもしれず、そうなれば安心感は高まると思います。

上皮内がんをきっかけにがんへの備えを

ステージ0の上皮内がんの段階で見つかることが多い部位のひとつに、大腸があります。大腸の場合、内視鏡検査をした時に、ポリープを発見したら、その場で内視鏡で切除して、その後そのポリープを検査したら、上皮内がんであったというケースが多くあります。ちなみに、それを持って治療も終了です。

がんに対する意識向上

私のお客様でも、過去に大腸上皮内がんの経験をお持ちの方がいらっしゃいました。その方は、30代の男性でしたが、いろいろお話をお伺いしていると、上皮内をきっかけに、がんのことを学ぶようになったとおっしゃっていました。

一定期間ごとに経過観察で受診するため、そこで先生からいろいろと情報をもらっているようです。なかなか何もない人が医師からがんについてのはなしを聞く機会はないですから、受診の機会を良い機会にしているようです。

こまめに検査

大腸がんは、内視鏡検査をすることで、大ごとになる前に見つけることができるとも言われています。上皮内がんを味わった方は、その意義を知っているので、その方も定期的に内視鏡検査を受けているようです。

がん検診の受診率がなかなか上がらないことを、国は課題としていますが、どれだけ自分事としてとらえられるかということが大切なのだと思います。

がん保険選択自体は総合的な判断を

さきほども少し触れましたが、上皮内がんで、支払いを受けられたり、保険料免除になったりすること自体は、助かると思います。ただし、そこだけががん保険の比較対象ではありませんので、総合的に比較して結論を出すことをおススメいたします。

何を守るか明確に

がん保険どれがよいか?ということを入り口とするのではなく、がんになるとどのようなシナリオが起こり得るのか、ということを明確にして、そのうえでがん保険が必要なのかどうか、判断していくことが大切です。もし、保険が必要になった時、ふさわしい保険が上皮内がんは、支払い対象外であるかもしれません。

幅広い視野でのアドバイスを

そのようなことも含め、是非がん保険を検討しようと思った時は、がん自体を知る機会にもしていただきたいと思います。がん保険は、もちろんがんになってしまった時に、経済的に助けてくれると思います。ただし、がん保険には一定の限界もあります。がん保険に入ったからがんは安心と、盲目的に思い込んでしまうと、本当にがんになってしまった時に、つらい思いをすることもあります。

是非がん保険の相談の機会に、あなたの保険の担当者から、がん保険の商品情報だけではなく、がん治療の実態や、実は大事な日本の医療のルールなどについても情報を得て、正しいがんへの備えを作っていただきたいと思います(※2)(※3)。

がんと聞いて、がん保険商品の選択肢しか出せない人は、がんについて、しっかり学んでいない可能性があります。もし、はなしの内容が薄いと感じたならば、他でセカンドオピニオンをとってでも、正しい情報をとっておくことをおススメいたします(※4)。それくらい、事前にがんを学んでいるかどうかは、大きな違いだと思っています。それは、正しいがんの知識を持たずに、約9年間、がん患者の家族という立場を体験した、私の実感でもあります。

(※2) がん治療の実態については、過去の記事「がんの備え|私たちが日本でがんになってしまった時、選択肢となる『4つのがん療養』」を、是非ご覧ください

(※3) 実は大事な日本の医療のルールについては、過去の記事「がんの備え|がんと日本の医療のルールを知らないことにより、主治医とのミスコミュニケーションが生じる可能性があるというはなし」を、是非ご覧ください

(※4) 生命(がん)保険相談のセカンドオピニオンについては、過去の記事「がんの備え|『がん保険選びにもセカンドオピニオン』一番大切なことは、オトクながん保険選びではない、というはなし」を、是非ご覧ください

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