がんの備え|『がんであると分かるのが怖いから』がん検診を受けない。これもひとつの本音、というはなし

日本は質の高い医療技術、医療サービスをもつ、医療先進国などと言われています。ただ、がんに関しては、国をあげて課題に取り組んでいるものの、成果が出るスピードがあまり早くない印象があります。国が考えていることが、なかなか国民に浸透しないためか、意識のギャップがあるように感じます。

低いがん検診受診率と、がんが増え続けている現実

国は、がん撲滅のため、早期発見・早期治療をひとつのテーマとして掲げています。そのための具体的な対策のひとつが、がん検診受診率の向上で、市町村にも様々な働きかけをしています。

ところが、がん検診受診率は上昇しているものの、がんの診断を受ける人、がんで亡くなる人は増え続けているという現実もあります。様々な原因があるのでしょうが、まだまだ課題があるようです。

国が推奨する5つのがん検診

国はがんのなかでも、胃がん、肺がん、大腸がん、乳がん、子宮頸がんの5つのがんについて、がん検診を受けることを推奨しています。それだけ、がんのなかでも死亡率の高いもののようですが、だいたいの検診受診率は、40%から50%くらいです。以前は、30%台から40%台であったので、これでも向上はしてきているのですが、国はここをもっと高めるべく、取り組みを進めています。

ずっと死因の第1位

昭和56年に、日本人の死因の第1位が『がん』になって以降、その後もずっと『がん』が第1位のままです。現在は、毎年、約40万人の方が、がんで亡くなっています。また、新たにがんの診断を受ける人の数ですが、こちらは、

毎年約100万人

となっており、増加傾向です。2016年に、日本人の出生者数が、100万人を割り込んで、その後減り続けているのですが、ちょうどその頃、がんの診断者数は、100万人に近づいてきて、とうとう新規のがん診断者数の方が、出生者数より多くなってしまいました。この数字、比べるものではないのかもしれませんが、あまり気持ちの良いものではありません。

がんに対するイメージと、がん検診を受けない理由

東京大学付属病院の中川恵一先生は、国民へのがん教育推進のための活動をしていることで有名ですが、その著書のなかでこのように語っています。

 私が医者になった35年前はがんの告知は全く行われていませんでした。私も肺がんは、肺にカビが生える「肺真菌症」といった説明をしていました。放射線治療をするときに「カビに光をあてる」などと説明していたことを覚えています。
 しかし患者、家族、医療者がチームとして情報を共有しない限り、適切な治療は難しくなります。複数の選択肢があっても患者に選んでもらえませんから、以前は医師が勝手に治療法を決めるのがふつうでした。
 かつては「がん=死」というイメージが今よりもずっと強かったため、家族には告知をしても、患者本人にがんという病名を伏せたままにしておくことが一般的だったのです。
 最近はよほどの事情がない限り、ほぼ100%、本人にも告知をします。
 この背景にはがん治療が進歩し、治癒率が高くなってきた(がん全体で6割、早期であれば多くのがんで9割以上)ことや、自己決定権、知る権利、個人情報などを尊重する意識が高まってきたことがあると思います。治療の開始に本人の同意が求められるようになってきたことも大きいでしょう。

出典:知っておきたい「がん講座」リスクを減らす行動学 中川 恵一著 発行:日経サイエンス社 発売:日本経済新聞

まだまだ、がん=死

内閣府が、平成28年11月に行った、がん対策に関する世論調査では、

・約70%の人が、がんは怖いという印象を抱いており

その理由として

① がんで死に至る場合があるから:72.1%
② がんの治療や療養には,家族や親しい友人などに負担をかける場合があるから:55.2%
③ がんそのものや治療により,痛みなどの症状が出る場合があるから:50.0%
④ がんの治療費が高額になる場合があるから:46.3%
(複数回答,上位4項目)

といったことがあがっています。日本で生活していても、医療技術の進歩などに関する情報が入ってこないため、身近にがん患者さんがいないと、まだまだ多くの方にとって、『がん=死』のイメージが残っているようです。

怖いのは分かるが…

まだまだ低い、日本人のがん検診受診率について、受けない理由の調査において、

① 受ける時間がないから:30.6%
② 健康状態に自信があり,必要性を感じないから:29.2%
③ 心配なときはいつでも医療機関を受診できるから:23.7%
④ 費用がかかり経済的にも負担になるから:15.9%
(複数回答,上位4項目)

といった回答が多くなっています。そして、5番目に、

⑤ がんであると分かるのが怖いから:11.7%

という回答もあがっているのも現実です。②③の回答は、がんに対して恐怖心が薄い方なのかもしれませんが、①④⑤に関しては、おそらくがんは怖いけど、受けていないというものではないでしょうか。先ほどの中川先生のコメントにもありますが、早期であれば、治癒率も上がってきています。だけどがん検診を受けないというギャップは、情報が届いていないことの表れなのだと思います。

国はがんが減らない理由を、私たちががんを知らないからだと考えている

国、医療者側と、国民の間に、この情報のギャップがあることは、国も分かっています。ずっと前からがんで亡くなる人が増え始めて、対策はいろいろ行ってきたものの、正しい情報を届けるということに関しては、あまり成果がなかったのかもしれません。ただ数年前からですが、新たな取り組みが始まっています。

学校でのがん教育がスタート

数年前から、中学校、高校で、『がん教育』が始まっています。ダンスやプログラミングなどの学校教育も話題になりましたが、がん教育も行われています。これ自体は、非常に有意義なことだと思います。いろいろな知識を吸収する時期に、がんに対する正しい情報を学校で教えることで、がんの予防に取り組む人も増えると思います。また、仮にがんになってしまっても、『がん=死』ではないということを知っていれば、冷静な判断もできるようになると思います。

ただし、ひとつだけ押さえておかなければいけないことが、この取り組みの成果が現れれるのは、おそらく20年、30年先だということです。今教育を受けた人は、がんのリスクが高まる年齢に達した時期に、適切な行動をとってくれることが期待されます。一方、今優先的にがん教育が必要なのは、すでに学校を出て、社会人となっている人たちです。

がん10年生存率は、58.9%

学校でがん教育が始まったことは、非常に良いことですが、すでに学校を出てしまった人々へのがん教育は、なかなか難しいところがあります。

ただ、ひとつ押さえておきたいことがあります。2021年11月に、国立がん研究センターは、がんと診断された方の、5年生存率、10年生存率の最新データを公表しました。結果は、

5年生存率:68.9%
10年生存率:58.9%

ということで、がん患者さんの半分以上の方は、がんになっても、10年以上生存されていることがわかります。『がん=死』というイメージは、捨てていく必要があると思います。こういった明るいデータを、すでに社会人になっている人々へ、届けることが大切だと思います。

がんは怖い、だからこそがんを知り、正しく恐れる

いくら生存率が高くなったとは言え、やはり怖さは消えません。そして、がんになってしまうと、昔よりもがんと長く付き合っていくことになります。だとしたら、がんについて正しく知り、可能な備えをしていくことが大切だと思います。

人生100年時代ということは…

今の時点でも、新たにがんと診断される方の3分の1は、働く世代の方と言われています。そしてこれから先、人生100年時代と言われていますが、働く期間が、今よりもさらに長くなる可能性があります。がん治療は今後も進化して、亡くなる率は低くなるかもしれませんが、働いている間に、がんと向き合っていく人の割合は、ますます高くなる可能性があります。

日本においては、社会人になってからがん教育を受ける場は、あまりありません。残念ですが、がんに備えるためには、自分から情報を取りにいかなければ、情報は入ってきません。では、どこに取りに行けばよいのか?

社会人のがん教育の場

社会人の方が、自然とがんを話題とする場、そのひとつに『生命(がん)保険の検討(相談)時』があげられます。生命保険、がん保険を考える時に、保険商品の善し悪しだけでなく、担当者から、がんへの適切な備え方に対する情報を得ていただきたいと思います。がんになってしまった場合、どのような治療の選択肢があるのか、仕事にどのような影響があるのか、経済的にどれくらいのダメージあり得るのか、といった具体的なイメージができるはなしを聞いて、そのうえで適切な保険の選択を行っていただきたいと思います。

担当者があまりがんについて詳しくなければ、是非セカンドオピニオンをとることをおススメいたします。

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