【CFPが解説】選んではいけない貯蓄型がん保険。結局解約に至る2つの理由|がん保険の選び方

【貯蓄型がん保険を選ぶことが合理的でない理由】

要約

多くの方が加入するがん保険。来店型保険ショップなどでがん保険を比較していると、おそらく目にする、貯蓄型と言われるがん保険。月々の負担(保険料)がもったいないと考える人にとって魅力的に映るが、途中で解約をして恩恵を受けられていない人がいるのも現実です。そして、払い損がないメリットがあるという点、これは本当にメリットだけなのか?基本的にがん保険においては、貯蓄型は選択すべきではないと考える2つの理由と、その注意点について、一緒に見ていきたいと思います。

この記事は

■がん保険を選んでいる中で、貯蓄型のものに魅力を感じる
■掛け捨てのがん保険は、もったいない

といった方のためにまとめてあります。

この記事を読むことで

●貯蓄型がん保険のデメリットがわかります
●貯蓄型がん保険を選ぶ合理性が少ない

ことがわかります。

貯蓄型がん保険を選択すると、がん保険を検討しようと思った本来の目的がブレてきます。貯蓄型がん保険が魅力的に感じてくることの問題点、そしてなぜ掛け捨てのがん保険がもったいないと感じるのか、ということについて、一緒に見ていきたいと思います。

まさに今、『保険ショップで貯蓄型がん保険を選択』しようとしているあなたへ、お届けしたいはなしです。

70歳で288万円の払戻しを楽しみにスタート

大阪在住、大学卒業以来ファイナンス会社で総務の仕事についていた、当時40歳女性の佐藤裕子さん(仮名)

約1年半前、同期入社の同僚が乳がんになり、自分もそれまで備えをしてこなかったことに対し

がん保険入った方がいいのかな…

と思うようになりました。

勤務先の最寄り駅近くにある来店型保険ショップで仕事帰りに相談

担当してくれたのは20代と思われる女性スタッフで、様々ながん保険のパンフレットを並べてひととおり説明してもらい

いかがですか?

と聞かれるも、正直あまり違いがわからない。

毎月の負担(保険料)が安いもので、ひとつくらい入っておこうかな…

と思っていたところ、ふと目に着いた

がんで使わなかったら、今まで払ったお金が全額戻ってくるがん保険

というキャッチフレーズ。

40歳の私が今加入して、70歳まで毎月8000円(保険料)を払っていき、その間にがんになって保険を使うことがなければ

30年間の支払い(保険料)総額288万円が、すべて私の手元に戻ってくる

そんながん保険。

保険ってふつう『かけすて』などと言って、何もなければ払い損ってイメージだけど、これならむしろ払っていく楽しみがある。 よしっ、これに決めた!

まさかの介護離職でがん保険解約

それからの佐藤さん、特に何事もなく日々を過ごしていました。30年後の288万円払い戻しに向けて、がん保険も継続中。

そんなある日、同居の70代の父親が突然の脳梗塞で緊急入院。手術により、一命はとりとめたものの、重度の介護が必要な状態に。母はすでに他界していて、兄弟のいない佐藤さんは、仕事をしながら父の介護の負担もひとりで負うことに。

よくよく確認してみると、父親の貯蓄はそれほど潤沢ではなく、このまま介護に費用が掛かれば、そう遠くない時期に底をつくことが確実な状況。佐藤さんが経済的な負担も追うことになりそうです。

仕事、家事、介護、そしてそれら全般の経済的負担、すべてをひとりで負担することは、想像以上に厳しく、佐藤さん自身も体調を崩しがちになりました。

有給休暇や家族の介護で利用できる休暇制度などを利用しましたが、それらもすべて使い切り、とうとう

介護離職

という結果になってしまいました。

収入が激減し、貯蓄も取り崩す生活となった佐藤さん。先々のため、無駄な出費をカットしようと、家計の見直しを行うことにしました。そこで目に着いた

がん保険 月8000円

1年半前、がん保険に加入した時のことを思い出しました。これはかけすてではないので

ムダな出費ではないのでは…?

と一瞬思いました。しかし

今、30年後のことを考えている余裕はない

と思い直し、がん保険も解約することにしました。

さらに自分が大腸がんの診断を受ける

先日受けた健康診断の結果の中にある

便潜血(要精密検査)

の文字。

予約を取って大きな病院で大腸内視鏡検査を受けた結果、なんと佐藤さん自身が、大腸がんの診断を受けることになってしまいました。

数週間の入院・手術に、その後の通院治療。しかし、がん保険はすでに解約済み。費用はさらに貯蓄を取り崩すことになります。そこに父親の介護。

現役世代のがん患者さんが、自分のがん治療に加えて、年老いた親の介護の負担も負っていく。肉体的、精神的、そして経済的に、想像以上に困難な状況になる可能性があります。

決められた定義はありませんが、こういった状況を

老がん介護

と呼んでいる人もいます。


解約に至る2つの理由

佐藤さんは、70歳までがん保険を継続し、途中がんになって保険を使うことがなければ

それまでに支払った金額(保険料)の総額288万円が全額戻ってくる

ということを楽しみに加入をしました。

しかし、経済状況が激変し、がん保険は解約。今まで支払った金額の2割程度の金額が払い戻され、契約は終了しました。

まずひとつ押さえておくべきことがあります。貯蓄型がん保険は、契約の途中で解約した場合、一般的に今まで支払った金額よりも少ない金額しか戻ってきません。

つまり損をすることになります。

佐藤さんも契約時にそのことは説明を受け、理解していたはずです。ただ、当時は経済的にもゆとりがあり、がん保険ひとつの出費が払えなくなることはないであろうと、おそらく思っていたのだと思います。

そして、どちらかというと

70歳の時に288万円の払戻し

ということを目的にがん保険契約をしてしまったふしがあります。ですから家計が厳しくなった時、不要な出費として解約という選択になったのだと思います。

がん保険に入ろうと思った本来の目的は、がんが心配で、がんに備えたかったから。その本来の目的を忘れなければ、今回がんの診断を受けた時、がん保険に助けてもらうことができたかもしれません。

私は過去に、10,000回以上の保険相談会に携わってきましたが

保険の見直しをしたい

という相談のお客様で、貯蓄型がん保険に加入している方への対応も行ってまいりました。考え方はそれぞれという前提ではありますが、基本的に

がん保険はかけすてでどうでしょうか

といった問いかけをしていました。

現実、佐藤さんのように貯蓄型がん保険を途中で解約してしまっている人も存在します。がん保険をがん治療費への備えと考えた時、貯蓄型がん保険の選択が、合理的ではない理由が2つあります。

月々の負担が高額

まず原則的な話しですが

かけすて型と貯蓄型

を比較すると、がんになってしまった時の保障が同程度であれば、貯蓄型がん保険の方が、月々の支払いの負担(保険料)は高額となります。

毎月の保険の負担(保険料)が高額になるのは嫌だ、と思う人は多いかと思いますが

貯蓄型ならいいかな…

と感じる方も少なからずいらっしゃいます。まさに佐藤さんもそうでした。ただ

これくらいの金額なら払える

という見積もりは、あくまで保険に加入する時点でのもの。長く生きていれば、今回の佐藤さんのように、家計状況が急変することもあり得ます。

今回の佐藤さんの事例において、佐藤さんへがん保険を提案した担当者が、そういったところまでイメージできるような注意喚起をしていたとしたら…。

違った選択をした可能性もあったかもしれません。そして大腸がんの治療を始めた時

がん保険に入っておいてよかった

と思えたかもしれません。

がん治療の実態の変化

佐藤さんが、仮に父親の介護などの経済的な負担が無く、がん保険を長く継続できていた場合においても、貯蓄型がん保険の選択が合理的ではない理由があります。

それは

がん保険は入ったらおしまいではない

ということです。

佐藤さんの貯蓄型がん保険は、70歳までの30年間、がん保険を継続するということが前提でした。

がんはいまだに分からないことも多く、世界中で新しい治療方法や薬の研究が行われている病気です。

がん保険加入から長い時間が経過している場合、途中でがん治療のトレンドが変化し、自分が加入しているがん保険では、がんになってしまった時に最新のがん治療に対応できない(お金を受け取れない)可能性があります。

がんになって保険会社に請求をした時に

これしかお金を受け取れないの...?

ということが起こり得ます。

日本で初めてがん保険が販売されたのが、昭和49(1974)年ですが、少なくとも当時から現在に関して言えば、がん治療の現場では大きな変化起こっていて、おそらく今後もその流れは変わらないと思います。

ですからがん保険に加入したら、自分のがん保険の内容と、その時代のがん治療の実態にズレが無いかどうか、定期的にチェックしていく必要があります。

そして、そのズレが大きくなっているようであれば、解約して新しいものに入り直すなど、見直しを考えていくことが非常に重要です。

つまりがん保険は、常に解約の可能性があるということです。ですから、がん保険において

貯蓄型の保険の選択

には、合理性が無いということが言えます。

今見てきた2つの解約理由ですが、がんを良く知る保険の担当者であれば、がん保険の相談の中で必ず伝えるべきものですが、今回の佐藤さんの事例においては、そこが語られたとは考えにくい結果となっています。


がん保険は解約(見直し)を前提に

今まさに、来店型保険ショップなどでがん保険の提案を受けている方にお伝えしたいことがあります。

それは

今のがん保険は、今のがん治療のためのもの

ということです。

そして、今加入したがん保険は、10年後には、その時代のがん治療に対応できない可能性があります。

ですからがん保険検討時には、パンフレットをたくさん並べてどのがん保険が良いかという選択だけではなく、がん治療が時代とともに変わっていくということを知ることが、とても大切です。

それを知れば

30年間がん保険を続けたら…

という話しは出てこないと思います。

かけすてでコストを抑える

あらためてになりますが、がん保険に貯蓄性を求めることはおススメできません。かけすてで毎月のコスト(保険料)が安く、保障内容の良いものから選択した方が良いと思います。

そして、時間が経過した時に、その時代のがん治療の実態と自分のがん保険の内容にズレが無いかどうか、チェックしてください。チェックをした時にズレを確認したならば、躊躇なく見直しを考えてください。

理想を言えば、自分でチェックというよりも、がんをよく学んでいる保険の担当者に気軽に相談できることがベストだと思います。 そういった意味でがん保険を選ぶ時には、信頼できる担当者を探すということも大切なことだと思います。

保険は保険、貯蓄は貯蓄で

がん保険を含めた保険の中には

かけすて型と貯蓄型

のものが存在します。

どうしても

かけすてはもったいない

というふうに感じてしまう方もいらっしゃいます。

ただ、貯蓄型がメリットばかりかというとそうではありません。

今回の佐藤さんが選択した貯蓄型がん保険は、70歳までがん保険を使うことがなければ、それまでに支払った総額288万円(保険料)が戻ってくるというものでした。

ただそのメリットは、70歳までの30年間、お金を保険会社に拘束されることにより得られるものです。つまり30年間は使えないということです。

貯蓄型がん保険ではなく、かけすて型がん保険を選ぶことで、一般的には毎月のコスト(保険料)は安く抑えられます。安く抑えた分、手元に自由に使えるお金が多く残り、そのお金を将来に向けて運用していくことが可能です。

そして、手元で運用しておけば、必要な時に自由に使うことも可能です。ですから

保険は万が一のための保障

と理解して、必要な保障を安いコスト(保険料)で備えるということが合理的であると思います。

がん保険の相談をした時に、いろいろ話しを聞いたけれど

やはりかけすてはもったいないのではないか…

と感じたとしたら、あなたの保険の担当者から十分な情報が提供されていない可能性があります。なぜならあなたが

このがん保険が必要だ

と感じていないからです。 保険の相談をする際、もし担当者の説明に納得感が無ければ、あわてて結論を出さず、別の担当者、別のお店で相談するなど、しっかり時間をかけて判断することをおススメいたします。

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