#29 仕事を辞めない!|がん保険のトリセツ|第3章 がんとお金のはなし

今回から第3章 がんとお金のはなしに入ります。そのお金に関してですが、がんの診断を受けてしまった時に、最初に気をつけなければならないことがあります。

がんのお金というと、治療にいくら掛かるのか?ということが気になると思いますが、まずは、タイトルにある『仕事を辞めない』ということを知っていただきたいと思います。これががんのお金に関する、最初の戦いだからです。

5人に1人が離職

日本では毎年約100万人の人が、あらたにがんの診断を受けると言われています。そのうちの30万人以上は、現役世代の人です。

厚生労働省によると、がんと診断された方の約20%は離職をしているとのことです。もちろん体調など、やむを得ないケースもあるかと思います。ところが現実はそういう理由だけではないようです。

50%以上が治療前

がんの診断後に離職した方のうち、半分以上の方が、まだ治療を行っていないにもかかわらず、退職してしまっています。しかも、そのうちの約6%の方は、がんの診断が確定する前に離職をしています。

少し想像してみてください。もしあなたが、がんの疑いがあるということで、精密検査を受けることとなったら…。すぐに退職を考えるでしょうか。

メンタル的ダメージの大きさ

がんの告知を受けると、それだけ精神的にダメージを受けるということの現れだと思います。退職などはその時に考える必要のないことにも関わらず、冷静な判断ができなくなってしまう、これもがんの特殊性です。

また、退職の申し出を受ける会社側も、がんのことに理解がなく止めようとしない、またどのように接していいかわからない、という社会全体での課題もあります。

がんでいくら掛かるかの前に

なぜ会社を辞めないことが大事なのか。当たり前ですが収入を失うからです。これから負担するであろう、治療費の財源となるのが、毎月の給料などの収入です。

もちろん貯蓄も対象ですが、その貯蓄を積むためには、やはり収入が必要です。がんのお金を考える際、まず収入面に目を向けることが大切だと、私は考えています。

様々な収入源を失わない

一般的な会社員ががんになってしまった場合、まず有給休暇で休むことができます。この間は、今までどおりの給料を受け取れます。そして有給休暇が無くなっても、その後、傷病手当金という保障を受けることができます。

退職をしてしまうと、これらの権利も消滅します。傷病手当金は、最長1年6ヶ月まで受けることができます。働けなくても収入を確保できる、非常に安心感のある制度です。

離職は治療が長期化した時に

がんでは、再発や転移といったことで、治療が長期化する可能性があります。治療が長期化してくると、治療による副作用や体力の低下等で、離職も視野に入れることもあるかと思います。

ただそれは、数年単位の時間が経過してからのことです。ひとまずがんの疑いや、がんの診断の時点で、退職のことを考える必要がないことを、知っていただきたいと思います。

何故こういうことに?

では何故あわてて退職をしようとするのか。もちろん人それぞれではありますが、絶望感の大きさということがあるのではないかと思っています。

いまだに『がん=死』という印象を持っている人が、日本人の場合、多いのではないでしょうか。今、国は『がんとの共生』ということを課題としてあげています。それは、がんでも亡くならない方がたくさんいらっしゃるからです。

がんを知らないから

それにもかかわらず、どうしてがん患者さんのうち、少なくない割合の方が、すぐに離職をしてしまうのか。それはやはり日本人が、がんを知らないということが、大きな理由だと思います。

がんになると痛みがひどくて寝たきり、といったイメージを持っているのかもしれません。がんとともに普通の社会生活を送っている人がたくさんいるということを、知っておくことも大切なのかもしれません。

がん10年生存率

国立がん研究センターによると、がんになられた方の6割以上が、10年以上生存されているということです。『がん=死』は、30年くらい前のイメージです。

がんと共生しながら、長く生きていく。生きていくということは、当然生活費が必要となります。その財源となる収入は、簡単に手放さない方がいいかと思います。

3人に1人が20~60代

今の日本は、毎年約100万人ががんと診断を受ける時代になっていて、そのうち約3割が、20代~60代と言われています。

すなわち現役時代にがんの診断を受け、がんとともに生きていく人が増えているということです。これは今後も続くと見られていますし、そういったことが特別ではないということを知っておく必要があると、私は考えています。

働きながらがん治療

厚生労働省によると、2019年の調査で、がん患者さんのうち、仕事を持ちながら通院している人の数は、約44万人だそうです。

これは、その3年前の調査よりも約8万人増加しているそうです。がん治療しながら仕事もする。がんが身近でない方からすると、想像しがたいかもしれませんが、これが今の日本の現実です。

今後の展開

これまで現役時代とは、60歳または65歳までという考え方が一般的でした。ところが、急速な少子高齢化の影響で、働く期間は70歳まで、75歳までと、さらに長くなることが考えられます。

そうすると、働いている間にがんの診断を受けてしまう確率は、さらに高まることが考えられます。そして10年生存率も医療技術の発展で、ますます高くなるかもしれません。今後ますます収入を守るということが大事になるかもしれません。

最後に

がんのお金というと、治療費などの費用ばかりに目が行きがちです。治療費は、治療が終わってからの話しです。ところが今回の話しは、がん診断時(疑いの段階も含め)に知っていなければいけないことです。

ですからがんの備えとは、まだ治療費が発生していない診断時の段階から、冷静に対応できるための準備も含めて、初めて成り立つのだと思います。そしてそれはがん保険に入るだけでは決してできない、私はそう考えています。

是非、あなたのがん保険の担当者が、がん診断時の対応の場においても、サポーターであることを願っています。

次回は『#30 がんで離職…その後に』というタイトルでお話ししたいと思います。今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

◇◆◇補足◇◆◇

このがん保険のトリセツは、1つのコラムでの文章量は少なめに抑え、要点だけをお伝えするようにしています。内容について、もう少し詳しく知りたいと思われた方は、是非関連する別のコラムもお読みください。

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