#30 再就職のカベ|がん保険のトリセツ|第3章 がんとお金のはなし
前回は、がんの診断を受けた方の一定割合が、治療開始前に離職をしてしまっている現実について見てきました。今回は、その選択をした後のことについて、一緒に確認していきたいと思います。
がんを理由に離職をした後、再就職を考えた時に、がん患者さんの悩みとなることがいくつかあります。あらかじめそういったことがあるということを、知っておいていただきたいと思っています。
目次
最初の悩みどころ
一度離職をして、再就職を考えるがん患者さんにとって、がんではない人には分かりづらい悩み事がいくつかあります。
国もそういった点を解消しようと、がん患者さんへの就労支援策をとってはいますが、まだまだ課題もあるようです。がんの備えを考えるうえで、そういった社会の現実を知ることも大切だと、私は考えています。
がんを申告すべきか?
採用面接の段階で、会社側に自身のがんや治療歴について申告をするかどうか、再就職で動き出した時に発生する悩みです。申告することで、採用の結果に悪影響が出るのでは?という思いになると言われています。
企業は健康状態を理由に判断を変えることはしないという建前はあると思いますが、同じ年齢で、ある程度同レベルのスキルやキャリアを持った人がいて、がん患者さんとそうでない人で、どちらを選ぶか?という話しがあります。
不採用がストレスに
通常不採用となった場合でも、その理由を明確に教えてもらえることはありません。どうしても不採用が続いてしまうと、疑心暗鬼な気持ちになってしまう可能性もあります。
そうであればと、面接時に申告をしないという選択肢を取りたくなってしまうかもしれません。それにより採用されて、無事に再就職がかなったら、すべてが順調にいくかというと、実はそうではない、という現実もあります。
入社後の新たなストレス
入社時に自身のがんについて申告をしなかった場合、入社してから新たな悩みが出てくる場合があります。
その悩み、体調が良い時にはそれほど問題になりませんが、体調に不具合が出た時には、かなり重いストレスになる可能性があります。やはり面接時に申告をする方が望ましいかもしれません。
場合により懲戒処分も
がんであることを隠したことに対し「就労に影響する重大な事実を偽った」と、会社側が判断するかどうかによって、処分に発展する可能性があります。
例えば、副作用で急激に体が動かなくなるような病状がある場合、事務職としてはほぼ問題なく勤務できるくらいでしょうが、公共交通機関の運転手としては不適切とみなされることは、十分考えられます。
隠していることがストレスに
もうひとつは、最初に隠したらすっと隠しつづけなければならない、ということです。副作用などで体調が優れない時、定期的な通院の時、休みを取る必要があっても虚偽の理由を考える、などといったことがあります。
また、ずっとそのようなことを続けていると、隠していること自体に疲れてしまう可能性もあります。
周りの理解も必要
仕事についているがん患者さんの多くは、仕事上で様々な支援を必要だと感じていると言われています。その内容は、がん患者さんから直接聞かないと、会社側も対応することができません。
あらかじめ会社側に申告をしておくことで、病気に対する理解も得られますし、円滑なコミュニケーションが取れるかと思います。
適切な職場配置
がん治療の副作用などで、行うことが難しい業務もあります。まず、配属に当たりその点を考慮してもらう必要があります。
また、通勤時間の負担や通院しやすい場所など、配属される場所に配慮してもらうなどということもあるかもしれません。
業務負担の調整
仕事と治療を同時並行で行っていく場合、どうしても体調との相談という話しが出てきます。体調が優れない時に、業務量を考慮してもらうことや、必要に応じて休みをもらうなどの配慮が必要となることがあります。
最近では、会議の参加をリモートでも可能という配慮をしている会社もあるようです。対応方法は様々ですが、気軽に相談できる関係が築かれていることが大切だと思います。
がん診断時に立ち返り
国は、がん患者さんの就労支援について、様々な対策をとっています。対策をとるということは、何らかの問題点があるということでもあります。
がんと共生ができる時代になったと言っても、がんの治療をしながら仕事も続けていくということは、想像以上に負担が大きいということを物語っています。
退職は焦らない
がん治療と仕事を両立していくうえで、やはり会社の理解は重要であると思います。その理解を得るうえでも、もともと勤めている会社と、新しく入社する会社では、相談のしやすさも違うのではないでしょうか。
がん患者さんによって、悩み事はそれぞれですので一概には言えませんが、やはりがん診断の時点で退職を考えるのはあまり適切な判断ではないかもしれません。
早期に相談支援センターへ
ただ、がんの診断を受けてメンタル的なダメージの中で、適切な判断をするためにどうすればいいのか。まずは、がんになる前にこういったことがあるということを知っておくことだと思います。
そして、実際の現場では、早期にがん相談支援センターなどと繋がることが大切だと思います。がん治療に限らず、仕事のことについても相談が可能です。ひとりにならないことが重要であると、私は考えています。
最後に
今回触れた話しも、がんになってから初めてひとつひとつ知ることになると、知るたびにストレスを感じることになるかもしれません。
ですからがんの備えとは、様々な判断をする場面で、冷静に対応できるための準備も含めて、初めて成り立つのだと思います。そしてそれはがん保険に入るだけでは決してできない、私はそう考えています。
是非、あなたのがん保険の担当者が、治療選択の場においても、サポーターであることを願っています。
次回は『#31 がんで入院するといくら掛かるの?』というタイトルでお話ししたいと思います。今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
◇◆◇補足◇◆◇
このがん保険のトリセツは、1つのコラムでの文章量は少なめに抑え、要点だけをお伝えするようにしています。内容について、もう少し詳しく知りたいと思われた方は、是非関連する別のコラムもお読みください。
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