#31 がんで入院するといくら掛かる?|がん保険のトリセツ|第3章 がんとお金のはなし

私は過去に、10,000回以上の保険相談会に携わってきました。その中で、がんの話しもたくさんしてきました。多くの方が、がんはお金が掛かると感じているようです。

そこで今回は、早期のがんでわりと多く行われると言われる、入院・手術のケースでどの程度の費用負担があるのか、ということについて一緒に見ていきたいと思います。

いくら掛かると思いますか?

多くのお客様がどのような印象を持っているのか、よくこの質問をしていました。あまりパッと答えられる方は少なかったと思います。

そして、がんが身近でない方ほど、実際掛かる金額よりも大きめの金額で回答される傾向がありました。

100万円単位の印象

最も多い回答が『100万円くらい…』というものでした。がんの手術で一定期間入院して、最後に会計で100万円を支払う。

お客様によっては、300万円くらい掛かるという回答もありました。多くの方が、がんの治療には、まとまったお金が掛かるという印象を持っているようです。

お金を掛けるほど治る

またがん治療の話しが進んでいくと、金額が高いほどいい治療であるという印象もあるようです


すなわち、お金持ちでいくらでも治療費を掛けられる人の方が、治る確率も高いという印象の方もいらっしゃいました。ただ、がん治療費の実際は、すこし違うイメージかもしれません。

10万円くらい

一般的ながん治療を行う病院で、例えば一定期間入院し、標準治療の手術を受けたとします。そして退院日、最後に会計をするわけですが、そこで請求される医療費の自己負担額は、10万円程度です。

以前、保険相談会でこの話しをすると、多くの方が驚かれていました。『えっ!それだけ…』というようなリアクションです。でも実際そうなのです。

高額療養費の存在

日本の健康保険証を持っていると、『高額療養費』というものを申請できます。詳しくは別に触れますが、1か月あたりの医療費自己負担が、一定額を超えた場合、その超えた額の大半を負担しなくていいですよ、というものです。

ちなみにこの制度、発生した医療費額が大きければ大きいほど、効果も大きくなります。ですから、がんで入院・手術での、医療費負担は10万円程度と思っていただいてもいいと、私は考えています。

数百万円単位は自由診療

多くの方ががんの治療で一度に数百万円掛かるという印象をお持ちなのですが、それは先進医療や自由診療を受けた場合の話しです。

科学的根拠があり、国が推奨する標準治療を受けている限り、一度に100万、200万という請求を受けることは、原則ありません。

入院は非常に短期化

以前から日本の医療の世界では、国の取り組みとして入院の短期化が進められてきました。これは急速に少子高齢化が進む日本において、医療費の抑制を目指すものです。

これは、もちろんがんの分野も含めた話しです。がんに関して言うと、平均入院日数は、20年前と比べて約半分になっています。

乳がんの手術で8日間

私の母も以前、乳がんで手術を受けましたが、入院日数はわずか8日間でした。当時は、がん入院は数か月単位という印象があったため、驚いたことを覚えています。

がんに関して言うと、国の政策もありますが、手術の技術が高まっていることも影響しています。以前よりも手術による傷が癒えるのが早くなっていて、リハビリに要する時間も短くなっていると言われています。

諸雑費も低額に

入院をすると、医療費以外に、食事、身の回り品、家族の交通費などの諸雑費が発生します。人によっては個室を希望して、部屋代が別途掛かる場合もあります。

入院日数が短期化することで、これらのコストも低下することになります。そういったことを総合すると、入院費用に対して、過度に心配することはないとも言えるかもしれません。

じゃあがん保険いらない?

以前保険相談会を行っていた時、さきほどの高額療養費を正式な数字を使ってご案内したところ、『これで済むなら医療保険(入院・手術の保険)いらない』という声も少なくありませんでした。

私もそのご意見にはおおむね同意です。ただ、その流れでがん保険も不要となってしまうことには、注意が必要です。

がんの特殊性

がんが他の病気と違うところとして、再発や転移といった怖さがある点があげられます。最初の手術でがんをきれいに取り除けたとしても、再び現れて治療が長期化する可能性があります。

実際私の母も、約9年間治療を受けることになりました。そして、がんで治療が長期化すると、先ほどの高額療養費が使えなくなるという特殊性ががんにはあると、私は考えています。

がん保険の必要性は別問題

そういった特殊性があるので、一般的な医療保険とがん保険を同じような考え方で見てしまうことは危険だと思います。

また、がん保険が必要かどうかは、今の家計や貯蓄の状況、家族構成など、様々な要素をふまえて決めていく必要があります。入るかどうかは別にして、検討することは重要だと、私は考えています。

最後に

今回の高額療養費とがん入院、これを知っておくことで、不要な心配はしなくて済みます。日本には公的保障が意外と多くあり、それを知ることががん保険検討の第一歩です。

ですからがんの備えとは、ただがん保険に入るだけではなく、同時に利用する公的保障制度を理解することも含めて、初めて成り立つのだと思います。そしてそれは、がん保険に加入するだけでは決してできない、私はそう考えています。

是非、あなたのがん保険の担当者が、保険だけでなく公的保障の分野においても、サポーターであることを願っています。

次回は『#32 高額療養費とがん治療』というタイトルでお話ししたいと思います。今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

◇◆◇補足◇◆◇

このがん保険のトリセツは、1つのコラムでの文章量は少なめに抑え、要点だけをお伝えするようにしています。内容について、もう少し詳しく知りたいと思われた方は、是非関連する別のコラムもお読みください。

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