#34 傷病手当金とがん治療|がん保険のトリセツ|第3章 がんとお金のはなし

前回、がん治療が長期戦となり、働くことができなくなるリスクについて見てきました。その時に、傷病手当金という公的保障があることをご紹介しました。

そこで今回は、その傷病手当金がどのような保障なのか、またその注意点などについて、一緒に確認していきたいと思います。

働けないことへの公的保障

傷病手当金は、一定期間以上働けない状態が続いた時、今までの収入を保障してくれる国の制度です。働けない時に収入を保障してくれるので、がん治療において、非常に安心感のある保障だと思います。

ただし、注意点があります。この制度、会社員や公務員は対象ですが、基本的に自営業の方は対象外です。その方たちは、自分で備えを考える必要があります。

月収の約6割

傷病手当金から保障される金額は、正確には細かい計算式があるのですが、ざっと今までのお給料(ボーナス除く)の6割くらいと捉えておくといいかと思います。

職場での有給休暇を使い切ってしまい、その後も復帰がかなわない場合、必要書類を揃え、申請書に主治医と勤務先の証明印をもらい申請することができます。

通算1年6ヶ月まで

受け取り始めた傷病手当金ですが、通算1年6ヶ月までという限度があります。一定期間受け取って職場復帰した後、再び働けなくなった場合も、通算で1年6ヶ月受け取っていなければ、再び受け取れます。

1年6ヶ月使い切ってしまった後、一定の要件を満たすと、再びゼロから受け取ることができます。ただ、がんの場合、その条件を満たすことは難しいかもしれないので、ここでは割愛します(※)。

※ そのケースについては別のコラムで発信しています。当コラムの終わりの部分にリンクがあります。

治療が長期化した場合の備え

この傷病手当金の保障、がん治療のどの場面で使う機会が訪れるのか。もちろんがん治療の推移は人それぞれではありますが、一例を確認していきたいと思います。

傷病手当金は、最長1年半までの保障ですので、単発の治療に対してというよりは、比較的治療が長期になった時の備えと考えていいかと思います。

最初の入院・手術は有給休暇で

初めてがんが見つかった時、がんの進行が早期段階であった場合、標準治療では手術が選択肢となる可能性があります。

手術の場合、一定期間入院することになりますが、現在がんの手術の入院日数は比較的短いため、その期間は有給休暇を使用することで、一定の収入を確保することが可能であることが一般的です。

長期の通院治療時に

がんが進行してしまい、最初のがんからの転移などが体中で見つかると、抗がん剤など薬の治療が行われると言われています。薬の治療の場合、通院での対応が多くなってきており、治療が長期化することもあります。

薬の治療を行うことのデメリットに、副作用の存在があります。副作用の出方や強さは患者さんそれぞれですが、それが長期化することで体力の低下を招き、働くことへ支障が出てくることが考えられます。

全てはカバーできない

傷病手当金の保障は、会社員など、利用できる方にとっては、非常に手厚い保障のひとつであると思います。

ただ、この保障だけで必要なお金全てをカバーすることはできません。この保障を受けるケースの家計状況等をイメージすることが大切だと思います。

生活費への備え

まず、傷病手当金は収入に対する保障なので、月々の生活費への備えという捉え方がふさわしいかと思います。当然、約6割程度の金額なので、その不足分はどのようにカバーしていくか、検討する必要があります。

数万円の不足額、1、2か月の話しであれば、貯蓄でカバーできるかもしれません。しかし1年を超えるようになると、負担が大きくなってしまいます。

治療費は貯蓄かがん保険で

傷病手当金は生活費で使われてしまうので、毎月通院治療で発生する数万円の治療費負担は、貯蓄から払っていくことが一般的です。生活費の不足も発生している場合、貯蓄の減り方が早くなる恐れがあります。

貯蓄が潤沢でない場合、あらかじめがん保険に加入しておくことが備えとなりそうです。以前にもお伝えしたとおり、がん保険は、がん治療費への備えです。まさにここが出番と言えます。

このシナリオへの備えを

私は過去に10,000回以上の保険相談会に携わってまいりました。そこでがんの備えに関する話しもたくさんしてきましたが、がんが身近でない方の多くは、がんになって、その時の入院・手術で何百万円も掛かるというイメージを持っています。

しかしすでに触れてきたように、それは違います。がんは長期戦になることで、治療費が累計で高額になるという特殊性があります。単発の入院・手術ではなく、この長期戦こそ備えが必要です。

がん保険は治療費への備え

がん保険の役割は、まさにこの長期戦の治療費を助けることだと私は考えています。毎月数万円単位で貯蓄が減っていくことを防いでくれる、そのためにがん保険を活用すべきだと思います。

がん保険に加入している方は、ご自身のがん保険が、長期戦で力を発揮する保障内容になっているかどうか、是非確認していただきたいと思います。

陳腐化のリスク

別で詳しく触れますが、がん保険に加入している方へお伝えしたいことがあります。それは加入したがん保険の保障内容が、陳腐化していないか確認していただきたいということです。

がんの治療は日進月歩で変化していっています。過去に加入したがん保険の保障が、現在の治療のトレンドについていけていない、つまり治療を受けたのにお金が出ない可能性があります。これもがんの特殊性のひとつなので、注意していただきたいと思います。

最後に

がん保険に加入するには、まずどんなお金がどのくらい金額が、どれ暮れ来の期間で掛かるのか、知ることが必要です。そしてそれに対して、自分の余裕資金がどれくらいあるのか、そういった具体的なシミュレーションを行って、初めて適切な保険選びが可能です。

ですからがんのお金の備えとは、安くていいと言われるがん保険選びではなく、あなたの家計状況に適した商品とプラン設計ができて、初めて成り立つのだと思います。

そしてそれはランキング上位や口コミがいいがん保険に入るだけでは決してできない、私はそう考えています。

是非、あなたのがん保険の担当者が、あなたの家計におけるリスク管理においても、サポーターであることを願っています。

次回は『#35 がんのお金は治療費だけ?』というタイトルでお話ししたいと思います。今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

◇◆◇補足◇◆◇

このがん保険のトリセツは、1つのコラムでの文章量は少なめに抑え、要点だけをお伝えするようにしています。内容について、もう少し詳しく知りたいと思われた方は、是非関連する別のコラムもお読みください。

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