#37 がんのお金は大きく3つ|がん保険のトリセツ|第3章 がんとお金のはなし

ここまで、がんで掛かるお金について確認してきました。様々な費用がありましたが、大きく分けてみると、がんのお金は3つあると、私は考えています。

その3つの費用をあらためてひとつずつ再確認して、どのような優先度で備えていくか、一緒に考えていきたいと思います。

標準治療を受けるための費用

がんのお金と言えば、多くの方が治療費を想像するかと思います。がんを治すための治療法のひとつとして、標準治療があります。

これは診療ガイドラインに掲載された、最も患者さんに推奨されるべき治療で、原則、主治医の先生から提案される治療です。また、痛みや苦しさなどが出た場合には、それらを取り除く緩和ケアもあります。

健康保険適用で原則3割負担

この標準治療と緩和ケアを受ける場合、健康保険証を提出して受けることができます。30~40代の一般的な所得の方の場合、発生した医療費の3割の負担で済むため、経済的負担は比較的小さくなります。

また、手術などで1か月の医療費が高額となった場合には、高額療養費の申請が可能で、月の医療費負担は10万円程度に抑えることが可能です。

長期戦になった場合の治療費

それでも、がんが再発・転移してしまい、抗がん剤治療など長期の薬の治療が続いた場合には、月数万円の負担がだんだんと厳しくなる可能性があります。

私の母も以前、数年単位の抗がん剤治療を受けましたが、約9年間の治療期間で、累計約300万の医療費自己負担となりました。

先進医療などへのお金

がん治療の中には、標準治療とは別に、先進医療や自由診療と言われる治療法があります。これはまだ、十分な科学的根拠が得られていない治療と言われています。

また他に、健康食品やサプリメント、鍼灸(はり・きゅう)など、補完代替療法と言って、がんにいいであろうということで行われるものがあります。これらのものは、推奨はされていませんが、がん患者さんにとっては魅力的に映ることもあります。

健康保険がきかず全額自己負担

どういった選択をするかは、がん患者さんの自由ではあります。ただ、ひとつ大きな注意点として、一度の治療で数百万円など、標準治療ではありえない費用負担となりことがあります。

これは健康保険証が使えないことが理由ですが、健康保険がきかないということは、国は推奨していないということ。結果に対しても自己責任となります。

トラブルに注意

がん患者さんの中には、こちらの選択をしている方も少なくないかもしれません。ただ自由診療の中には、実際ほとんど効果が無いにも関わらず治療を継続し、数百万、数千万円の費用を請求され裁判沙汰になっているものもあります。

こちらに関しては、費用面も含めて自分でよく内容を吟味して、経済的な負担にも注意して判断する力が必要だと思います。

QOLを維持するためのお金

ここまで見てきたのは、治療費がメインでした。ところが、治療が長期化した場合、薬の副作用などで体力の低下を招き、今までできていた仕事が続けられずに、収入を失うことがあります。

それにより、日々の日常生活に支障が出る恐れがあります。がんで最も経済的にシビアになるのがこのシナリオです。QOL(クオリティオブライフ:生活の質)の維持するためのお金に対する備えも非常に大切です。

治療費負担よりも高額に

万が一、がんにより収入を全く失ってしまったとしても、日々の暮らしは続きますし、そのために一定の生活費が必要となります。

生活水準は人それぞれですが、例えば、生活費月20万円が1年分で、240万円。これだけで、標準治療の治療費を超えることも考えられますし、生活費と並行して治療費も掛かり続けます。

見落とされがちなシナリオ

この生活費に影響が出るようなシナリオ、がん保険に加入しているすべての方が想定しているとは、とても考えられません。

なぜかと言うと、がん保険を扱っているすべての担当者が、このシナリオを知っているとは思えないからです。『がん保険選びは、担当者選びから』という側面があると、私は考えています。

優先度をどう考えるか?

がんで発生する3つのお金をまとめると

①標準治療を受けるためのお金
②先進医療などを受けるためのお金
③QOLの維持のためのお金

の3つに分けられました。

がんの備えを考える際、必ずこうして全体像を見ることが大切です。そして、それに対しどこを備えていくか、検討することが大切だと、私は考えています。

最も厳しいシナリオから

私ががんへの備えを考える時の、これら3つの優先度は

③⇒①⇒②

の順です。③は、どの治療を選択したとしても起こり得ることで、また経済的に最も厳しいシナリオだからです。保険を考える場合、最も厳しい想定から考えることが大切です。

そして、治療について、①と②があるわけですが、まずは国が推奨して、しかも比較的経済的負担の小さい、標準治療を受けられる状態を目指すことが適切かと思います。

想定にふさわしい保険選択を

がん保険は、基本的にがん治療費に対しての備えの保険だと、私は考えています。一部のがん保険を除き、その保障内容からQOLの維持までカバーすることは難しいと思います。

また別に触れますが、がんになってしまった時のQOLの維持に対応できる保険の存在を知っていただきたいと思っています。

最後に

がん保険に入っていれば、がんの時のお金は安心だと考えている方もいらっしゃると思います。ただ、今回見たとおり、それは最も厳しいシナリオまで想定した備えをした場合の話しです。

ですからがんのお金の備えとは、どんなお金がどのように掛かるのか、優先的にどんなお金に備えるのか、それをイメージできて、初めてできるのだと思います。そしてそれはランキング上位のがん保険に入るだけでは決してできない、私はそう考えています。

是非、あなたのがん保険の担当者が、がんのお金の備えを考えるうえでの、良きサポーターであることを願っています。

次回は『#38 がん保険の役割』というタイトルでお話ししたいと思います。今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

◇◆◇補足◇◆◇

このがん保険のトリセツは、1つのコラムでの文章量は少なめに抑え、要点だけをお伝えするようにしています。内容について、もう少し詳しく知りたいと思われた方は、是非関連する別のコラムもお読みください。

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