【CFPが解説】がん転移による家計の大幅赤字で全生命保険解約という苦渋の選択|がんの備え

がん治療の長期化による家計収支悪化のリスクと保険料払込免除特約の存在

要約

夫:会社員、妻:専業主婦という昭和の時代には一般的であったライフスタイル。子供2人の4人家族で稼ぎ頭である夫に死亡時の保障をメインとした高額の生命保険の加入。しかし夫ががんに罹患し治療が長期化、収入に影響が出てきたものの、死亡給付主体の生命保険からは一切の保障を受けられず。それにもかかわらず毎月の高額の保険料は継続していくという悪循環。体調が悪化し収入が減って家計が大幅な赤字となり、こういった時のために加入した生命保険を解約するという苦汁の選択。『がん=死』という時代から『がんと共存していく』時代になっている今、生命保険をかける際にも注意が必要です。実際どのような注意が必要か、それに対しどういった保険の選択ができるか、みていきたいと思います。

この記事は

■結婚して子供が誕生足したので生命保険を考えている
■がんについても気になりだしている
■がんに対しどのような保障が必要か知りたい

といった方のためにまとめてあります。

このコラムを読むことで

●家族のために加入する保険のあり方
●がんでどのような家計リスクが発生するか
●がんへの備えとしての保険の選択肢

を知ることができます。

いまだに『がん=死』という印象を持っている方も多いかもしれません。ですが、その発想で家族を守るための生命保険を考えることには危険もあります。なぜなら現在は『がんは長期で付き合っていく病気』に変わっていて、それにより

治療費がかかるだけではなく毎月の収入に影響を及ぼす

可能性があるからなのですが、がん治療の実態とがんで本当に備えが必要なケースを知らなければ正しい保険選択をすることができません。そして保険相談に行った場合には、最新のがんの実態を学んでいる担当者からの情報をもとに判断することがとても大切です。

そういったことについて、なぜ大切なのか事例をもとに一緒にみていきたいと思います。

まさに今、『保険ショップで家族のために生命保険に加入』しようとしているあなたへ、お届けしたいはなしです。

家計を支える夫が胃がん発症

千葉県流山市在住、専業主婦で41歳の西村優子さん(仮名)。

家族はふたつ年上の夫と長女、長男の4人家族。夫は大学卒業後商社に勤め年収は約900万円。こどもは現在7歳と5歳で、長女はピアノと英会話、長男は水泳の習い事につかせています。5年前現在の一戸建ての自宅を購入し、夫名義の住宅ローンを返済中です。貯蓄は約500万円で、子供たちの教育関連や住宅ローンの繰り上げ返済などに充てようと考えています。

現代では夫婦共働きというライフスタイルも一般的ですが、西村さん夫妻に関しては親の影響なのか夫が仕事で家計を支え、妻が家事と子育てを担うという形で結婚以来過ごしてきています。

そういったスタイルで経済的には夫に全負担がかかっている西村家の家計ですが、3年前会社の健康診断から夫に胃がんが発覚し現在に至ります。がんの宣告を受けた際には『がん=死』というイメージだった西村さんは絶望の気持ちになってしまいましたが、夫は手術を受けその後も薬の治療を受けながら仕事に復帰することができ心の底から安堵の気持ちになりました。

ところが1年半前の定期検査でがんが転移していることが発覚、再び治療を始めることになりました。今度は手術ができない状態とのことで、3週間に1回の通院で抗がん剤治療を受けています。

加入している保険は全て死亡保険

西村さん夫妻は5年前、第2子である長男の誕生をきっかけに生命保険の見直しをしました。家計はすべて夫が支えているため、保険の対象はすべて夫で加入した保険は以下のとおりです。

① 終身保険 保険金額1000万円
② 収入保障保険 保険金額月額25万円
③ 学資保険 満期学資保険金額220万円×2

相談に行った来店型保険ショップで、夫の死亡時に必要な保障金額を試算ソフトでシミュレーションし、当時は約8500万円の保障が必要との結果となりました。仕事の経験がほとんどなく、夫に万が一のことがあった場合に自分で稼ぐ自信が全く無かった西村さんは、必要になる額の分生命保険に加入してもらいたいという気持ちがあり、夫もそれに応じて3種類の商品に分けて死亡時の保険に加入してくれました。

②の収入保障保険は掛け捨ての死亡保険ですが、①と③は貯蓄タイプで、①は夫婦の老後の貯蓄、③は子供の大学進学時の学費の貯蓄も兼ねています。保障される金額が8500万円と高額であること、そして貯蓄タイプを3本加入しているため、月々の保険料は約5万円を超えますが、加入時の家計状態では毎月の収入で滞りなく払えていました。

医療保険やがん保険についても話題になりましたが、健康保険の高額療養費などを考慮すると掛け捨てで保険に加入するよりも貯蓄を作ることを重視して、医療系の保険は見送ることにしました。 実際に夫が胃がんを発症して医療費はかかりましたが、入院時は高額療養費の申請をして15万円程度の自己負担で済みましたし、その後の通院治療費も貯蓄からねん出できていたので特に問題は感じていませんでした。

がんが進行状態なのに生命保険解約の悲劇

がんの転移で夫が抗がん剤治療を開始してから3ヶ月経過したあたりから副作用が思いのほか強く出てきて、夫は治療の前後には仕事を休まざるを得なくなってしまいました。今までは営業職の最前線で活躍し、海外出張にも頻繁に行っていた夫ですが、体調面との兼ね合いからそれが困難に。

会社とも相談し負担の少ない事務職へ配置転換、状況に応じて在宅勤務での対応にしてもらうなど、がん治療との両立に対し配慮をしてくれたのですが、毎月の給与収入は大幅に下がることになりました。

有給休暇も使い果たし、今後長期で休職となる場合には傷病手当金の受給も視野に入り始めていますが、その場合収入は年収ベースで半額以下になってしまう模様です。

収入が減ったにもかかわらず抗がん剤治療の費用が毎月数万円掛かり続け、毎月の家計収支が大幅な赤字に陥ってしまっているのですが、しばらくは毎月貯蓄で補填しながら過ごしてきました。夫がなかなか思うように働けないので西村さんが働きに出ることも考えましたが、家事や子育て、そこへ夫の看病も加わり思い通りには動けません。

このまま進んでしまうと、貯蓄が底をつき破綻を招く恐れがあるため西村さん夫妻は家計状況を改善することにしました。ただ節約できるところはするにしても、子供たちの教育関連費は削りたくないし、生活水準も急には変えられません。

そこでとてもつらい選択ですが、毎月約5万円の負担である生命保険を解約するしかないという結論に至りました。

今回の西村さん夫妻の判断はこういった状況になってしまった以上やむを得ない部分もあるかもしれませんが、保険加入の時点に遡ると一定の問題点があるといえるかもしれません。こういった結果を招かないために、以下で保険選択の観点から2つの問題点について確認したいと思います。

全く想定外のがんによる収入減

まず問題点の1つ目はがんなどの大きな病気での死亡リスクは考えたものの、仕事ができず稼げないというリスクについては全く考慮されていないことです。西村さん夫妻が生命保険を検討した際の思考は

① 夫が生存=給料を稼げるので経済的に安心
② 夫が死亡=給料を失い家族が経済的に困窮

というものになっていたため、備えが夫の死亡保険のみに集中するという選択になっています。これは30年以上前であれば一般的でありましたが、現在のがんを取り巻く状況からするとそれは現実的ではない選択であったといわざるを得ません。

上の思考の図式ですが、がんのリスクを考える際には

① 夫が生存=給料を稼げるので経済的に安心
② 夫ががんに罹患も生存=給料が下がり治療費などで出費が増える
③ 夫が死亡=給料を失い家族が経済的に困窮

というがん治療をしながら今までどおりの生活が長く続くというシナリオを加える必要があります。盲点のような展開ですが、②で経済的に厳しくなり、さらにその後③に至るというシナリオが最も経済的にダメージが大きくなるといえます。

がんになっても継続する毎月の保険料

家計収支が厳しくなった時に、節約の対象としてあがってくる生命保険。西村さん夫妻も月々約5万円と金額の大きい保険料をカットするという選択をしました。ただこの生命保険ですが、本来はこういった状況になった時のために加入したのではないでしょうか。

がんに罹患し死亡リスクが高まった時に生命保険を解約するということは、本来の保険加入の目的を全く果たしていませんし、その決断はとてもつらいものです。

2つ目の問題点ですが、それは保険をかける対象が不適切であったということです。がんも不治の病といわれた時代もありましたがそれはもう30年以上前の話しになります。現在は国のがん対策においても『がんとの共生』ということがうたわれており『がん=死』という認識は不適切といえます

がんへのリスクを考える場合には、先ほど示した『夫ががんに罹患も生存=給料が下がり治療費などで出費が増える』というシナリオを想定する必要があるのですが、そうなった時に毎月の保険料負担が厳しくなり節約対象になるかもしれないというところまで、保険加入時にあわせてイメージできるかどうかが非常に大切です。

特定疾病保険料払込免除特約の活用

今回の事例では家計を支える夫ががんになってしまった時に、家族の生活費をカバーするために加入していた生命保険の保険料が家計を圧迫し、最終的に解約せざるを得ないというとてもつらい結果を招いてしまいました。こういった事態を引き起こさないためにとるべき対策は様々あるのですが、今回のような事例(リスク)には実は多少の費用負担で備える手段があります

生命保険の保障の中に『特定疾病保険料払込免除特約(※1)』というものが存在します。これは一般的に

がんを含めた特定疾病(がん、心疾患、脳血管疾患)で所定の状態になった場合に将来の保険料が不要になる(※2)

という保障です。

保険というと何かでお金を受け取るというイメージが強いかもしれませんが、実はがんなどの大きな病気になってしまった時に『保障は今までどおりに継続するが毎月の保険料負担がなくなる』という家計負担を助けるための保障が存在し時代とともに重要度が増してきています。もし今回の事例においてこの特約が付帯されていたら

■毎月5万円超の保険料が不要になり
■8500万円の死亡保障が継続し
■老後と子供の学費の貯蓄が継続

され、当然ですが生命保険を解約というシナリオは発生することはありませんでした。

(※1)保障の名称は保険商品ごとに異なる場合があります。
(※2)保険料が不要になるための要件は保険商品ごとに異なる場合があります

がん罹患時の現状

がんは昭和56年に日本人の死因の第1位になりその後ずっと1位のまま推移しています。40年以上前からのはなしになりますが同じ死因の1位でも、がんを取り巻く状況は大きく変わっています。

いまだに『がん=死』というイメージが残っていますが、国立がん研究センターによると、現在のがん5年生存率は60%を超えています。つまりがんに罹患しても多くの方ががんとつきあいながら暮らしていくことになります。今回の事例のように、仕事と治療を両立しながら過ごしている人も実はたくさんいます。

ただ両立をしていく場合に

■継続的な治療費による月々の支出の増加
■がん治療の影響による月々の収入の減少(喪失)


という可能性があることをあらかじめ知って備えをしておかないと、経済的に困窮してしまうリスクがあります。

がんでの収入減に備える際の2つの選択肢

がんというと治療費のイメージですが、実は今回の事例のようながん罹患による収入への影響の方が経済的リスクは大きくなる可能性があります。そういったリスクに保険で備える場合に2つの選択肢があることを知っておいてください。それは

■がんの診断で1000万円支払われるといった現金を受け取る保障
■保険料払込免除という保険料負担をなくす保障

の2つです。①はがんで1000万円受け取るというわかりやすい内容ですが、②も経済的には効果が大きくなる可能性があります。 今回の事例では、月々5万円の保険料負担でしたが、その場合1年で60万円の家計負担です。年間60万円は5年続けば300万円、10年で600万円です。将来に向けた600万円の支出がなくなることも経済的に大きな影響があります。

保険でがんのリスクに賢く備えるために

子どもの誕生で家族が増えたことをきっかけに生命保険の検討をする人も多いかと思います。その中でがんへの備えを考えることもあるかと思いますが、現在のがんの実態をふまえて保険選択を行わないと実際がんになってしまった時、今回の事例のように生命保険を解約するという苦汁の選択をすることになる可能性があります。

がんは日本人の国民病とも言われますが、毎年約100万人が新たにがんの診断を受けていますし、がんの診断を受ける方の3人に1人は現役世代というデータもあります。つまり働いて収入を稼ぎ、家族を養いながら老後の準備としての貯蓄を作っている段階でがんを発症してしまうリスクがあるということです。

そういった前提のもと保険でがんのリスクに賢く備えるために、とても重要なことが2つあると、私は考えています。

がんは長期戦を想定

先述したとおり以前は『がんは不治の病』ともいわれ、多くの人が『がん=死』というイメージを持ち、いまだにそのイメージを抱き続けている人もいます。しかし現在は『がんと共存していく』時代という認識にあらためる必要があります。国立がん研究センターによると、がんの5年後生存率はがん全体で60%を超えており、女性に多い乳がん、男性に多い前立腺がんなどは早期発見された場合には、ほぼ100%という数字になっています。

つまりがんが怖い病気であることは変わりありませんが、怖さの質が以前とは違うということを知る必要があります。それを前提に考えると、がんで経済的に厳しくなるケースは、亡くなるケースというよりは、がんの再発転移などで治療が長期化

① 長期的に治療費が掛かり続ける
② 治療の副作用等で仕事ができなくなり収入が得られなくなる

という状況を想定しなければなりません。それに対し手元の現金預金や副収入等で対応可能ということでなければ、保険加入の検討が必要になりますが、今述べた①②のケースどちら(もしくは両方)に備えるかを慎重に判断し、それに見合った保険選択をすることが非常に重要です。

【再重要】早めのサポーターの確保

がんによる経済的リスクに備えるには現在のがんの実態を正確に理解して、それに対して適切な備えをしていく必要があるのですが、実はそこには難しさもあります。それはがんを取り巻く環境は常に変化していくということです。

具体的には

■がん治療の進化
■国のがん対策の方針変更
■健康保険制度などの変更

などがありますが、がんの備えは一度しても時代の変化とともに見直しをしていく必要が出てきます。そのために常に最新の情報を得ておかなければならないのですが、それをすべて自分で行うことはかなり難しい可能性もあります。

そういった意味で「がんに対して適切な備えをしたい」と考える方に対して贈るメッセージとして『早いうちから相談できる人(場所)を確保する』ことがあげられます。

今回のような事例に対する専門家としては『がんや医療への備えを専門とするファイナンシャルプランナー(FP)』の存在があります。また『がんに詳しい保険担当者』なども選択肢としてあげられるかと思います。何か専門的なことを相談したいと思った時に

どこで、誰に相談できるのか?

ということがわからないことも少なくありません。ですからそういった選択肢を早めに確保しておくこともがんに対する備えといえるためのかもしれません。是非保険の選択とともに気軽に相談できるサポーターも確保することをおススメいたします。

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