がん保険の選び方|『がん保険、一括前払い? or 都度都度事後払い?』どちらのタイプ?それとも…?というはなし

がん保険の賢い選び方についての3つのステップをご案内します

『がんが心配だからがん保険に加入したい』。私は過去に10,000回以上の保険相談会に携わってまいりましたが、このセリフはよく耳にするもののひとつでした。それと合わせて聞いたものが『ネットで調べたけど、情報が多すぎて訳が分からなくなった…』というもの。これが相談にいらっしゃるきっかけだったのだと思います。

日本では数十社の保険会社が、それぞれにがん保険を販売しています。同じものはひとつもありません。当然ですが、がんが心配なので良いものを選びたい。ただ、この数十社のがん保険のパンフレットを順番に読んでいってしまうと、途中で訳が分からなくなると思います。実はがん保険には押さえるべき特徴がいくつかあります。その特徴で分類していくと、あなたに必要ながん保険を絞っていくことができます。

そこで今回は、その特徴の中で、がん保険からのお金が、どのようなタイミングで、どのように支払われるか?という点から、がん保険を分類するということについて、一緒に見ていきたいと思います。

まさに今、がん保険の情報が多すぎて、訳が分からなくなっているあなたへ、お届けしたいはなしです。

『お金の払われ方』を軸に、がん保険を分類する

たくさんあるがん保険の中から、あなたに合ったがん保険を探していく場合、なんらかの比較ポイントとなるものを軸に比較をした方が、納得感をもって選択できると思います。もちろん『安いものがいい…』というご希望はあると思います。ただ、安さだけが問題であれば、加入しないという選択が一番安くなります。

そうではなく、必要ながん保険を安くということであれば、値段(保険料と言います)は一旦おいて、あなたにとって重要なことを満たすがん保険の中から安いもの、予算に合うものを選んでいただきたいと思います。そういった意味で、今回は私が最重要だと考える、がん保険からお金を受け取る(がんになってしまった)時のこと、その際の『お金の払われ(受け取り)方』からの分類をご紹介したいと思います。

一括前払い型

この点からの分類だと、がん保険は大きく2つに分けられます。ひとつめは、一括前払い型ですが、これはまとまったお金を一回で受け取るものです。実際のがん保険では、

がん診断給付金

といった名称となっていることが一般的です。

その名のとおり、がんの診断確定がされたらお金を受け取る(請求する)ことが可能です。受け取れる金額は、あらかじめ契約時に設定した金額です。50万円や100万円などの額で加入されている方が多い方と思います(※1)。さきにお金の支払いが決定し、それをその後の治療に充てていくというスタイルです。

※1 診断給付金の金額については、過去の記事「がんの備え|『がん保険の診断給付金』いくらぐらい必要なのか?というはなし」を、是非ご覧ください

都度都度事後払い型

もうひとつは、都度都度事後払い型で、これは受けた治療の内容や治療などの期間(回数)などに応じて金額が決定するものです。そして、お金は治療が終わってから受け取る(請求する)ことが可能になります。こちらに関しては、具体的ながん保険の名称は様々で、

・がん入院給付金:がん治療で入院したら、入院1日当たり○○千円お支払い
・がん手術給付金:がんの手術を受けたら、手術1回あたり○○万円お支払い
・がん通院給付金:がん治療で通院したら、通院1回当たり○○千円お支払い
・抗がん剤治療給付金:がんで抗がん剤治療を受けたら、治療1回当たり○○万円お支払い

などといったものが、代表的なものとなります。

例えば入院などは、ある程度の予定はありますが、実際入院してみないと、いつ退院できるかわかりません。すなわち何日入院するかわかりませんので、最終的にいくら受け取れるかは、退院してから確定します。

一括前払い型のメリットと注意点

がんの診断だけでお金の支払いが確定する、がん診断給付金などの一括前払い型のがん保険。まとまったお金を最初に受け取れるということで、何か良さそうな感じを受けますが、そのメリットの部分をもう少し正確に知っておいた方が良いと思います。

また、実は初めてがんになった際には気づかないのですが、万が一がんが再発・転移してしまった時には、加入したがん保険によって対応が分かれてくるので、実はあらかじめ注意して選択することが大切です。保険は本当につらい展開になった時こそ頼りたいものです。がん保険選択においては、この再発・転移のケースは必ず押さえておきたいポイントだと、私は考えています。

もめる恐れがない

がん診断給付金という保障は、初めてのがんの時には

がんの診断確定

だけが、支払要件となることが一般的です。これの一番良い点は、勘違いする恐れがほとんどないという点です。『がんになったらお金が出る』と思っていて良いわけです。私は保険で一番あってはならないことは、出ると思っていたお金が、請求してみたら

今回は支払要件に該当しないので、お支払いできません

という結果になることです。自分の勘違いでそうなってしまうと、おそらくショックがかなり大きくなると私は思います。がんという、おそらく多くの人が大きなダメージを受ける病気になった時、もらえると思っていたお金がもらえない、がん保険においてこれは必ず避けていただきたいと私は考えているので、この一括前払い型はひとつおススメの形です。

2回目以降は様々

ただし、先ほど触れたがんの再発・転移のケースにおいては、選ぶがん保険商品によって、支払要件が変わってくることが一般的です。再発・転移の際には、診断確定だけでなく

・がんで入院したら…
・がんの治療を受けたら…

という条件が付加されているものがほとんどです。また、前回お金を受け取った時から

・1年経過後
・2年経過後

など、一定の期間が経過していないと支払われないというものが大半です。また、中には最初の1回限りしか支払わないというものも存在します。

一括前払い型のがん診断給付金などの保険は、もめるリスクが低く、かつまとまったお金を受け取れる良さがありますが、この2回目以降の支払要件は細心の注意をもって比較していただきたいと思っています(※2)(※3)。いろいろ違いがある中で納得した選択をするために、がん治療の実態を知ることがとても大切です。

※2 診断給付金の2回目以降の支払要件については、過去の記事「がんの備え|『回数無制限、がん保険の診断給付金』パンフレットの後ろの方を読み比べる必要がある、というはなし」を、是非ご覧ください

※3 診断給付金の2回目以降の支払要件については、過去の記事「がんの備え|『がん保険の診断一時金』パンフに書いてある小さな文字に注意、というはなし」を、是非ご覧ください

都度都度事後払い型のメリットと注意点

先ほど例をあげた、『入院したら…』などの都度都度事後払い型については、様々な種類の保障があります。以前のがん保険では、あらかじめプランが決められていて、自分でいるものいらないものを選べないものが多い印象でした。ただ、最近のがん保険では、ひとつひとつ自分でオーダーメイドのような形で選択できるがん保険も見かけます。

あれもこれもと幅広い保障にすることも可能になってきていますが、やはりその選択時には注意点もありますので、以下で触れていきます。

色々な治療に対応

このタイプのがん保険の特徴は、治療の期間(回数)が長引けば、その分受け取れる金額も大きくなるという点があると思います。さきほどの一括前払い型は、一度受け取って一旦終了となるため、受け取ったお金が足りるのかどうかはわかりません。その点こちらは『治療1回当たり…』などといった形のため、治療の長期化に対応しやすい点はあるかもしれません。

最近のがん治療は、抗がん剤などの投薬治療が長期化する傾向もあります。もし、自分が持っている保障と受ける治療が合致すれば、安心感があるかと思います。そういった意味では、保障プランを選ぶ際に、その時のがん治療の実態を知っていることが大切です。

あくまで加入時の治療に対応

一括前払い型の保障より、こちらのタイプの方が注意点は多い印象があります。ひとつ目が、がん保険はその商品ができた時期の最新のがん治療に対応した保険であるという点です。わかりやすく言うと、がん保険加入から時間が経過し、過去に無かった新しいがん治療法が出てきても、過去に加入したがん保険では対応不可能です。ですから一定期間ごとに保険の見直しが必要となる可能性があります。

また、仮にがん保険加入後、すぐにがんになってしまい治療を受ける時、その受ける治療に対する保障を付加していなかったため、お金を受け取れないという可能性もあります。

他には、事後払いのため、一旦病院への治療費を立替払いする必要があることや、都度都度払いのため、都度都度保険会社への請求手続きが必要といった、人によっては面倒だと感じるデメリットもあるのかと思います。

第3の選択肢と最も大切なこと

ここまで、一括前払い型と都度都度事後払い型という2つのがん保険を見てきました。実際のがん保険商品では、その2つの選択肢というよりは、第3の選択肢という形で販売されていることが多いようです。ただ、第1、第2、第3と、どの選択肢を選ぶにしても、前提条件とすべき大切なことがあります。

最後にその第3の選択肢の内容、そして今回のコラムでもっとも大切だと思うことをお伝えして、結びとしたいと思います。

実は組み合わせが主流

現在販売されているがん保険は、実は『一括前払い型』と『都度都度事後払い型』が、半々で組み合わされているものが主流になっています。これが第3の選択肢です。もちろんどちらかだけのタイプのものも存在しますが、数で見ると組み合わせ型が多い印象です。

これはそれぞれのいいとこどりをしている印象ですが、ひとつ大切なこととして、あれもこれもと保障を手広く、かつ分厚くしていけば、月々のあなたの負担(保険料と言います)も大きくなります。これはあくまで個人的な見解ですが、私はどちらかというと、『もめる恐れが少なく、まとまったお金を、事前に受け取れる』がん診断給付金を重視することをおススメしています。

最も大切なこと

どういったがん保険を選ぶかということは、もちろん大切なことです。ましてがんが心配だからがん保険に入りたいという方であればなおさらです。ただ、がんが心配な方にこそお伝えしたいことは、お金の安心だけではがんとは戦えない可能性があるということです。がんへの備えで一番大切だと私が考えていることが

がんを知ること

です。実際のがん患者さんは、様々な負担を負ってがんと向き合っています。その中で、もちろんお金の負担も小さくない場合があります。ですからがん保険を考えることも大切です。ただ、がんになってしまった時に、お金も含めてどのような負担があるのかを知ることが、本当のがんの備えと言えるのだと私は考えています。

そういった意味で、がん保険の相談をする機会を大切にしていただきたいと思います。保険ショップなどに相談に行けば、がん保険を選択するにあたって、様々なアドバイスをもらえる可能性があります。是非その機会を大切にしていただきたいと思います。

がん保険や生命保険の相談の機会に、あなたの保険の担当者から、がんに関する保険の商品情報だけではなく、がん治療の実態や、実は大事な日本の医療のルールなど、実際がんになってしまった時の影像が浮かぶ情報を得ながら、正しいがんへの備えを作っていただきたいと思います(※4)(※5)。

がんと聞いて、がん保険商品の選択肢しか出せない人は、がんについて、しっかり学んでいない可能性があります。もし、はなしの内容が薄いと感じたならば、他でセカンドオピニオンをとってでも、正しい情報をとっておくことをおススメいたします(※6)。それくらい、事前にがんを学んでいるかどうかは、大きな違いだと思っています。それは、正しいがんの知識を持たずに、約9年間、がん患者の家族という立場を体験した、私の実感でもあります。

(※4) がん治療の実態については、過去の記事「がんの備え|私たちが日本でがんになってしまった時、選択肢となる『4つのがん療養』」を、是非ご覧ください

(※5) 実は大事な日本の医療のルールについては、過去の記事「がんの備え|がんと日本の医療のルールを知らないことにより、主治医とのミスコミュニケーションが生じる可能性があるというはなし」を、是非ご覧ください

(※6) 生命(がん)保険相談のセカンドオピニオンについては、過去の記事「がんの備え|『がん保険選びにもセカンドオピニオン』一番大切なことは、オトクながん保険選びではない、というはなし」を、是非ご覧ください

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