#36 実はいろいろある公的保障|がん保険のトリセツ|第3章 がんとお金のはなし

これまでに、高額療養費、傷病手当金という、がんになってしまった時に助けになる公的保障を確認してきました。がんの時、この2つは利用する可能性が高いものです。

実は、使える公的保障は他にもいろいろあります。上の2つよりは、利用するための条件などが厳しい感じはしますが、いざという時のための選択肢ということで、一緒に確認していきたいと思います。

雇用保険

雇用保険は、基本的には会社員の方が加入している公的保険です。対象者は限られますが、対象となる方は知っておいた方がいいと思います。

対象となるかどうかの確認は、雇用保険の被保険者証があるかどうか、もしくは給与明細の中で、雇用保険の保険料を天引きされているかどうかを見ることでわかります。

基本手当

雇用保険の基本手当は、離職し、働く意思と能力があるにもかかわらず、就職できない方に対して給付される手当です。いろいろ求人募集に応募しているが、採用してもらえないケースが該当します。

がん治療のため離職してしまったものの、体調が問題ないため再び職に就きたいが、新しい就職先が決まるまでの間、一定の条件のもと給付を受けることができます。

受給延長手続き

ただ、基本手当の受給要件のひとつに、働く能力がるというものがあります。ですから、薬の副作用などで働けない状態の場合、また傷病手当金を受け取っている場合は対象外となります。

しかし離職した時点では対象外でも、受給延長手続きをとることで、一定期間権利を先送りして、先々使えるように残しておくことが可能です。ただし、原則離職後1か月以内の手続きが必要です。

障害年金

一般的に年金という言葉を聞くと、65歳になったらもらうことができるお金というイメージがあるかと思います。何事もなく65歳を迎えた場合にはそのとおりです。

60歳または65歳まで毎月年金保険料を払っていく(会社員などは給与天引き)のですが、その間に病気や事故などで、障害を負ってしまった場合、話しは変わってきます。

65歳まで年金を受給

万が一障害年金で指定された障害状態となってしまった場合には、65歳まで障害年金を受給することができます。また、65歳まで払うはずであった毎月の年金保険料負担も無くなります。

がんの場合、人工肛門を造設、咽頭部(いんとうぶ)摘出を受けたケースなどが代表例です。その他にも、がんが原因で日常生活において介助が不可欠な場合などにも、対象となる場合があります。

専門家への相談も

障害年金の申請は、書類手続きがかなり難しいとも言われています。また、認定されるかどうかは、最終的に主治医が作成する診断書の内容によります。

また、加入している年金が国民年金のみか厚生年金かなどで、受給条件も変わるところがあります。該当するかどうかなど、自分で判断せずに社労士などへ相談をした方がいい場合があります。

生活困窮時のもの

いろいろな公的保障を使い切ってしまった、または条件が該当せずに使えなかった、だけどがんにより仕事ができず、経済的に困窮するケースも考えられます。

本当に困窮してしまった場合に、一定の借り入れを受けられたり、一定の収入を保障してくれる制度も存在します。

生活福祉資金貸付制度

低所得者世帯、障害者世帯、介護を要する方のいる高齢者世帯に、都道府県の社会福祉協議会が生活福祉資金を貸し付ける制度です。

もちろん貸し付けの条件や貸付資金枠・限度額等の条件はありますが、一定の条件を満たせば、無利子での借り入れを受けることも可能です。

生活保護

病気などを原因に仕事ができない、収入が著しく低いといった理由で、経済的に生活が苦しい場合、経済的援助を行う制度です。

あらゆる手段を尽くしても厳しいという前提条件のもとになりますが、一定の条件を満たせば、一定の生活費の扶助や、医療費の扶助を受けることができます。

いざという時のために

がんが進行して体調への影響が出てきてしまった場合には、どうしても収入が減少したり、ゼロになってしまうリスクがあります。

メンタル的、肉体的、経済的に厳しい状態になると、なかなか自分では冷静な判断ができなくなる可能性があります。ただ、いろいろな支援策の存在を知っておくことで、一定の安心感を得られることもあると思います。

がん相談支援センターを頼る

いろいろあった支援策などの全てを、事前に暗記する必要は無いと思います。ただ、ひとつだけ押さえておきたいことは、がん相談支援センターで相談できるということを知っておくことです。

ここでは、がん治療のことを始め、仕事のことやお金のこと、そして今回のいろいろな公的保障のことなど、様々なことが無料で相談可能です。何かあったらここへ、ということを覚えておくといいと思います。

これらをふまえ自分でも備えを

いろいろある公的保障は、一定の安心感があります。ただし、どれも一定の条件を満たさないと、保障などを受けることができません。

ですから、どんな状況でも助けとなる備えを、自分であらかじめ作っておくことがやはり大切です。それを保険で行うのか、別の手段にするのか、がんになってしまう前に検討することが必要だと、私は考えます。

最後に

先ほど紹介した雇用保険の受給延長手続きは、原則、離職後1か月以内の手続きが必要です。知らない間に1か月経過してしまったら権利が消滅します。多くの公的保障は、申請ベースです。

ですからがんのお金の備えとは、自分で行う備え以外に、使える公的保障にどのような存在があるのかといった情報も知っていて、初めてできるのだと思います。そしてそれは、ただおススメのがん保険に入るだけでは決してできない、私はそう考えています。

是非、あなたのがん保険の担当者が、がんのお金の備えを考えるうえでの、良きサポーターであることを願っています。

次回は『#37 がんのお金は大きく3つ 』というタイトルでお話ししたいと思います。今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

◇◆◇補足◇◆◇

このがん保険のトリセツは、1つのコラムでの文章量は少なめに抑え、要点だけをお伝えするようにしています。内容について、もう少し詳しく知りたいと思われた方は、是非関連する別のコラムもお読みください。

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