がん保険の選び方|『実費補償のがん保険』少数派だが、これが本来の保険である、というはなし

私は、過去10年以上、来店型保険ショップの店頭で、お客様と接してきました。がん保険の相談もたくさんあり、お客様といろいろながん保険を見てきました。過去に発売されたものを含めれば、おそらく100種類以上あるがん保険。ただ、たくさんあるとはいえ、たいてい評判の良い商品にどれも似てくるので、大きなところは似たような内容になっている印象です。

ただ、がん保険の中には、そういった一般的ながん保険と、全然違う保障の仕方をするものも存在します。善し悪しは、人それぞれでいいと思いますが、がん保険比較時にそういった選択肢があることは、知っておいた方が良いと思います。

そこで今回は、がん保険の中に、少数派だが、かかった治療費をそのまま払ってくれる、実費保障のがん保険があることについて、見ていきたいと思います。

まさに今、『がん保険の比較』をしているあなたへ、お届けしたいはなしです。

掛かった額での支払いなので、手出しが出ない安心感

実費補償のがん保険。耳にしたことがある人、ない人それぞれだと思います。ただ、がん保険の中では、少数派です。これは、実際に病院で医療費の精算をしたあと、領収書に載っている金額を払ってくれるがん保険です。ですから、足りる、足りないの心配がない保険なのです。

損害保険の発想

この実費補償という保険、そんなに珍しいものかというと、実はそうではありません。皆様が加入している、火災保険や自動車保険は、この実費補償というスタイルの保険の代表になります。火事が起きて、家が半分燃えてしまった。そんな時、火災保険から、実際かかる修理費用が支払われます。その金額は、修理業者からの請求書の金額が基本となります。

このような、実際に発生した損害額に応じて、お金を払う補償が、実費補償の保険です。これこそが本来の保険という見方もあります。がん保険においては数は多くないのですが、一部の保険会社から、この実費補償のがん保険が発売されています。

数千万円単位の治療も

とても良い治療方法でも、健康保険の適用にならなければ、治療費の自己負担は高額になります。最先端の治療が誕生しても、国が健康保険の適用とするまでには、時間がかかります。また、良い治療法だからといって、必ず承認されるわけではありません。

最近ではわりと良く知られるようになり、一部のがん治療において、健康保険の適用となっているものに、『ロボット支援手術』があります。これは、医師が直接体にメスを入れるのではなく、医師がロボットを操作することで行う手術で、非常に精密な動きができると言われています。これも健康保険が適用になる前は、数千万円の自己負担でしたが、実費補償のがん保険だと、その掛かった額を払ってくれます。

がん保険の弱点、保障の陳腐化が少ない可能性

一般的ながん保険は、一部を除いて、基本的に定額保障という考え方になっています。例えば、

・がんの診断を受けたら、100万円
・がんで入院したら、1日当たり1万円
・抗がん剤治療を受けたら、1回あたり10万円

といった具合で、金額が固定されています。ただし、医療費の相場が変わっても、この金額設定は変わりません。また、最近はがんの治療は通院で行うものも増えてきていますが、すべてのがん治療が、通院でできるようになったら、『がんで入院したら、1日当たり1万円』という保障は、全く使い物にならなくなります。 そういったがん治療の実態の変化に対応できないところが、一般的ながん保険の弱点とも言われます。

具体的な治療名がない

その点、この実費補償のがん保険の場合、一定のルールはありますが、一般的ながん治療を行う病院で治療を受ける限りは、どのがん治療でも、支払い対象となる可能性がありますし、金額もかかった金額を払ってもらえる可能性があります。

先ほど述べた、がん治療の実態の変化には、たいてい対応できる可能性があり、そのあたりは、大きなメリットと言えると思います。

まだまだ開発は終わらない

さきほどのロボット支援手術のように、これからさらに新しい治療方法が出てくる可能性は、十分あると思います。なぜなら、がんは、まだまだ分からないことが多い病気だと言われているからです。世界中で常に研究行われ、新しい技術や薬の開発が行われています。

数年前に、『オプジーボ』という名のがん治療薬の開発を行った、本庶佑(ほんじょたすく)先生が、ノーベル賞を受賞したことは、記憶に新しいところです。ところが、その薬さえあれば、すべてのがん患者さんが助かるというものではありません。まだまだ課題もたくさんあるのが、がん治療の実態です。ですから、今後もがん治療は変化していく可能性の方が高いと思っています。

定期保障タイプで、数年ごとに更新する

この実費補償のがん保険は、複数の保険会社から発売されていますが、基本的に保障される期間(保険期間と言います)は、定期タイプになっています(※1)。5年などの定められた期間で、契約が満了し、自動更新で継続していくようなスタイルになっていることが多いようです。

(※1) 保険期間については、過去の記事「がんの備え|『終身保障か?定期保障か?』がん保険を選ぶ際の、ひとつのポイント、保険期間についてのはなし」を、是非ご覧ください

保険料upが嫌われることも

一定期間ごとに更新していくタイプのがん保険。基本的に、更新時に月々のあなたの負担額(保険料と言います)が、上がっていくことが一般的です。理由は、年齢が上がるとともに、がんになるリスクが上がるためです。

ですから、20代30代のうちは、非常に安いと感じながらも、がんのリスクが上がる50代60代になると、逆に高いと感じるかもしれません。その金額も最初からパンフレットなどで見れるため、お客様の中には、将来を考えるとどうかな?という方もいらっっしゃった印象があります。

いつを守るのか?

確かに将来の金額を見ると、非常に高額な印象もあるのですが、がん保険はいつのがんを守るものなのか?という視点で考えることも大切だと思います。今加入するがん保険は、今や近い将来のがんを守るものだと、私は思っています。

何十年後のがんへの備えは、必ずしもがん保険であるとは限りません。というよりも、何十年後については、がん保険が要らない状態を目指すべきだと考えています。どういうことか?それは、がんを始めとした医療費、そして介護などの備えとしての、貯蓄を作っておくということです。保険は、まだ貯蓄ができていない間(貯蓄を作っていく間)に利用するもの、そういった発想であれば、一定期間の更新も目をつぶれるかもしれません。

がん保険にいつまで守ってもらう予定か考える

更新で保険料が上がることを嫌って、定期保障ではない、終身保障タイプのがん保険を選択する方もいらっしゃると思います。私の印象では、がん保険や医療保険は、圧倒的に終身タイプを選ぶ方が多いです。そういうニーズがあるから、終身タイプの商品が多いということもあるかと思います。

貯蓄を作ることが最優先

定期保障、終身保障、どちらのがん保険を選んでも、良いと思います。ただし、その場合でも、老後のがんの備えに関しては、貯蓄を作っていくということを前提にする必要はあると思います。

なぜなら、先ほど述べたように、がん治療の現場は変化していく可能性が高いです。そうすると、いくら終身保障のがん保険に入っていても、がん保険自体の見直しをしていかなければならない可能性があります。将来見直しをしたら、古いがん保険を解約し、新しいがん保険に入るわけですが、加入時の年齢が上昇するため、月々の負担(保険料)は上がる可能性があります。

ですから、やはりある程度の年齢で、がん保険を卒業できることが望ましいわけです。

広い視野でのアドバイスを

定期保障は、定期的に保険料が上がるから良くない、という見方があります。もちろんお客様サイドでは、そう感じることは致し方ないことだと思います。ただ、物事を比較した時には、必ずメリット・デメリットが出てきます。目立つ部分だけでなく、広い視野から納得して選んでいただきたいと思います。

そのために、がん保険を検討する機会には、あなたの保険の担当者から、がん保険の商品情報だけではなく、がん治療の実態や、実は大事な日本の医療のルールなどについても情報を得て、正しいがんへの備えを作っていただきたいと思います(※2)(※3)。

保険商品のはなししかできない人は、がんについて、しっかり学んでいない可能性があります。もし、はなしの内容が薄いと感じたならば、他でセカンドオピニオンをとってでも、正しい情報をとっておくことをおススメいたします。それくらい、事前にがんを学んでいるかどうかは、大きな違いだと思っています。それは、正しいがんの知識を持たずに、約9年間、がん患者の家族という立場を体験した、私の実感でもあります。

(※2) がん治療の実態については、過去の記事「がんの備え|私たちが日本でがんになってしまった時、選択肢となる『4つのがん療養』」を、是非ご覧ください

(※3) 実は大事な日本の医療のルールについては、過去の記事「がんの備え|がんと日本の医療のルールを知らないことにより、主治医とのミスコミュニケーションが生じる可能性があるというはなし」を、是非ご覧ください

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