がん保険の選び方|『がん保険はがんだけの保障でもったいない…』もう少し広い備えができる保険がある、というはなし

がん保険のデメリットを考えた時に、『がんだけしか対象ではない』という意見があります。確かに、様々な病気がある中、がんだけをピンポイントで保障、そのために毎月お金を払う(保険料と言います)ことに、もったいなさ感を感じる人もいるかと思います。

ただ、がん自体が怖くないかというと、それは怖い。なってしまったらお金に困るとは思う。だけど、がんだけだと…それならば、あらゆるケガ・病気に備えられる『医療保険』の方が良いのでは…?生命保険を考える場合、そういったお悩みもあるかと思います。

そこで今回は、がんだけのために保険料を負担するのがもったいないという方に、医療保険ではなく、がんを含めた大きな病気が対象で、治療費だけでなく、働けなくなった時の備えにもなる保険について、一緒に見ていきたいと思います。

まさに今、『がん保険はもったいない…?』と、迷っているあなたへ、お届けしたいはなしです。

『特定(3大)疾病保障保険』の存在

がん保険は、基本的にがんの治療費への備えの保険です。先ほども出てきたとおり、がんだけが対象です。がんは怖いけど、がんだけが病気ではないと考えた時に、がんを含めた3大疾病への備えということであれば、いかがでしょうか。

医療保険やがん保険はCMでも目にする機会が多く、その存在をご存じの方も多いかと思いますが、特定(3大)疾病保障保険という保険は、耳にされたことがあるでしょうか。もし無いのであれば、入るかどうかは別として、選択肢として知っておいて損はないと思います。

がんを含めた3大疾病

3大疾病とは、がん、急性心筋梗塞、脳卒中を指します。急性心筋梗塞を心疾患、脳卒中を脳血管疾患として、表現する場合もあります。ちなみに、2019年の日本人の死因の5位までは、以下のとおりです。

第1位第2位第3位第4位第5位
原因悪性新生物心疾患老衰脳血管疾患肺炎
人数376,425人207,714人121,863人106,552人95,518人
出典:国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集2021年版」より、著者が作成。数値は2019年のもの

プラス死亡保障

上の、 がん、急性心筋梗塞、 脳卒中か、もしくはお亡くなり(死亡)になったら、保険金が払われる保険です。がんだけでは、限定的で保障が狭いと感じる方へ、日本人で命にかかわる確率が高い病気を広くカバーする、という考え方の保障になります。

該当したら、使い道自由の大きな一時金保障

特定(3大)疾病保障保険は、非常にシンプルでわかりやすいという点がメリットだと思います。保険会社により多少、支払い要件の内容に違いがありますが、

・がんは、診断されたら
・急性心筋梗塞、脳卒中は、発症して、マヒなどの所定の状態となったら
・死亡は、原因関わらず

どれかに該当したら、500万円や1,000万円など、まとまった一時金を受け取れるというものが一般的です(金額は一定の範囲で選択できます)。

あらゆる治療費への備え

死亡時のお金は、家族に残すものになりますが、3大疾病で受け取る時は、まだご存命中です。がんに関しては、診断だけで受け取れます。ですから、がん保険の代わりになりますし、がんでない2つの病気の時も、それぞれの治療費として使うことが可能です。

しかも金額が大きければ、長期の治療へも対応が可能になります。

生活費への備えもできる

また、大きな一時金は治療費だけでなく、仕事ができずに収入を失ってしまった時の、生活費への備えと考えることもできます。がんは、再発・転移で治療が長期になり、後遺症や副作用などで、肉体的、精神的に追い詰められた時に、仕事の継続が困難になることがあります。心臓や脳に関しては、マヒなどの後遺症が生じる場合があり、それにより仕事の継続が難しくなる場合があります。

医療費に目が向きがちですが、この生活費への備えが必要になるケースは、実はかなりシビアな状況です。ちょっとした単発の治療費よりも、本当に厳しいこちらのケースの方が、本来保険で守るべきケースであると、私は思っています(※1)。

(※1) 生活費への備えについては、過去の記事「がんの備え|意外と忘れられがちな、がんになってしまった時にも発生する普通のお金」を、是非ご覧ください

定期保障と終身保障の選択

もし仮に、この特定(3大)疾病保障保険に加入したいとなった場合、保障される期間(保険期間と言います)を選択する必要があります(※2)。10年など、一定期間だけ備える『定期保障』、生きている限りの保障の『終身保障』の2択となります。ちなみに、保険会社によっては、片方しかなく、選べない場合があります。

(※2) 保険期間については、過去の記事「がんの備え|『終身保障か?定期保障か?』がん保険を選ぶ際の、ひとつのポイント、保険期間についてのはなし」を、是非ご覧ください

期間限定コスト重視の定期

定期保障を選ぶ場合、とにかく今を守るという考え方になります。今起こったら困るので、手厚い保障が必要、ただしコストは抑えて、という方針の場合は、定期保障の方がメリットがあります。例えば、同じ1,000万円の保障であれば、終身保障と比べると、月々の負担(保険料と言います)は、安く抑えることができます。

そのかわり、期間満了したあとも継続したい場合には、一定の条件のもと更新が可能ですが、年齢に応じて保険料が上昇します。ですから現役時代の比較的若い間(貯蓄を作っている間)を守るという使いこなしが合理的です。

いつか必ず受取れる終身

終身保障の場合は、生きている限りの保障なので、最後亡くなった時には、必ず家族にお金が支払われます。定期保障と比べると、払い損が無いという点がメリットです。また、万が一途中で解約した場合も、一定の払戻金があります。いわゆる掛け捨てと言われる定期保障とその点が違います。

ただし、生きていれば何歳までも保障してくれる保険です。月々の負担(保険料)は、高額になる場合があるので、注意が必要です。また、保険料が高いからと、保障される額(がんの診断を受けた時に受け取れる額)が小さければ、本来の保険の役割を果たせません。

定期保障と終身保障、メリット・デメリットがそれぞれですが、保険に加入する目的を明確にして、選ぶことをおススメいたします。

これが本来の保険という見方も

がんだけのがん保険にするか、少し病気の範囲が広い特定(3大)疾病保障保険にするか、是非それぞれのメリット・デメリットを明らかにして、どちらの方があなたの考えに沿うものか、納得して選んでいただきたいと思います。

ただひとつ私が思うことなのですが、最近の保険商品は、支払い理由が細か過ぎる気がしています。例えば、がんになって、『抗がん剤治療を受けたら、1か月に1回、通算で60回までを限度に、10万円支払います。ただし、健康保険適用の抗がん剤に限ります』というような保障がありますが、ずっと覚えていられるでしょうか。

私がひとつおススメするのは、保険はシンプルイズベストということです。がんならば、がんの診断を受けたら支払確定、そして大きなお金が銀行口座に振り込まれる。そんなわかりやすい保険が、私は良い保険だと思っています。

がん保障は一時金が望ましい

がんは、いくら備えていても、なってしまったらメンタル面は、ほぼ確実にダメージを受ける病気だと私は思っています。ですから、せめてお金の面は、神経を使わなくていいような備えをしていただきたいと考えています。

お金の面で神経を使わないためには、なってしまった瞬間に、銀行口座にがん用のお金が出来上がる、そんな保険が望ましいのではないでしょうか。治療を受け終わって、初めて受け取れる金額がわかる、そして、都度都度請求手続きをしなければならない、これは思いのほかストレスになる可能性があります。実際受け取る時の状況なども、イメージしたうえで、備えを考えることも大切だと思っています。

あらゆる選択肢から

是非みなさまも、がん保険を検討する機会には、あなたの保険の担当者から、がん保険の商品情報だけではなく、がん治療の実態や、実は大事な日本の医療のルールなどについても情報を得て、正しいがんへの備えを作っていただきたいと思います(※3)(※4)。

がんと聞いて、がん保険商品の選択肢しか出せない人は、がんについて、しっかり学んでいない可能性があります。もし、はなしの内容が薄いと感じたならば、他でセカンドオピニオンをとってでも、正しい情報をとっておくことをおススメいたします。それくらい、事前にがんを学んでいるかどうかは、大きな違いだと思っています。それは、正しいがんの知識を持たずに、約9年間、がん患者の家族という立場を体験した、私の実感でもあります。

(※3) がん治療の実態については、過去の記事「がんの備え|私たちが日本でがんになってしまった時、選択肢となる『4つのがん療養』」を、是非ご覧ください

(※4) 実は大事な日本の医療のルールについては、過去の記事「がんの備え|がんと日本の医療のルールを知らないことにより、主治医とのミスコミュニケーションが生じる可能性があるというはなし」を、是非ご覧ください

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