がん保険の選び方|『夫婦型(家族型)がん保険』少なくなっているが、入っている人は注意が必要、というはなし

クレジットカードや携帯電話の契約において、『家族契約でオトク』といったはなしはよく耳にします。実は生命保険の世界にもそういった契約形態をよく目にする時期がありました。過去形で言ったのは、最近はほとんど見なくなったからです。がん保険においても家族まとめて保障というものが存在しました。私は現在40代後半ですが、私の学生時代、親が家族型のがん保険に加入していて、私も保障の対象になっていたことがあります。

しかし、私自身が自分で保険を考えるようになった時には、すでに目にすることも少なくなっていました。ですから、50代60代以上の方で、昔の契約をまだそのまま続けている方の中には、夫婦型もしくは家族型といったがん保険に加入している方もいらっしゃるかもしれません。ひとつの契約で家族が保障対象ということは、一見便利な感じを受けますが、契約を続けるうえで注意しておくこともあります。

ちなみに、このコラムは20代~40代の、どちらかというと、これからがん保険を考えていく世代の方を読者と想定して執筆しております。そうなると今回のテーマは、その対象者にはあまり関係ないと感じるかもしれません。ですが、実はがん保険や医療保険に関しては、自分だけでなく親の保険の存在や内容を把握しておくことは、いざという時に重要になってきます。

そこで今回は、夫婦型(家族型)がん保険に加入している場合に、どのような注意点があるのか、またもし加入していた場合、今どのような検討をする必要があるのかについて、一緒に見ていきたいと思います。

まさに今、親が『夫婦型(家族型)がん保険』に加入しているあなたへ、お届けしたいはなしです。

夫婦型(家族型)がん保険のメリット

もともと個人単位で加入するがん保険。そこへ夫婦型(家族型)がん保険(以下「夫婦型がんほけん」)があるのはなぜか。当然何らかのメリットがあるから販売されていたのだと思います。まずは夫婦型にすることのメリットをいくつか確認していきたいと思います。

多少の割引

夫婦でそれぞれにがん保険に加入すると、2つの契約になります。当然保険契約の申込書類や保険証券などの書類も2つになります。また、契約を管理する保険会社は、2つの契約をそれぞれ管理することになり、2倍の事務処理が発生します。

夫婦型になることで、それらが1つの契約で済んでしまうため、その分なのか、一般的にはあなたの毎月の負担(保険料と言います)が多少安くなります。毎月のコストが下がる点が、ひとつ目のメリットかと思います。

管理が楽

つぎにあなたが夫婦型がん保険に加入した後、何かその内容が気になって確認したり、万が一がんになってしまい請求手続きをする際に、どの契約か確認する手間がはぶけます。『夫婦のがんの保障はこの契約』という具合に、管理が楽といったメリットもあるかもしれません。

夫婦型がん保険のデメリット

今見てきたようなメリットが、夫婦型がん保険にはあると思うのですが、私個人の考えとしては、デメリットの方が大きいと思っています。そしてそのデメリットに気づくのが遅ければ遅いほど、対策を取ることも難しくなってくるというデメリットもあります。

夫婦型がん保険ということで、1つの契約で2人(若しくは家族の人数分)の保障が得られるわけですが、その対象になる人々で共同契約をしているわけではないという点をおさえておく必要があります。その点から見たデメリットをいくつか見ていきたいと思います。

契約者の死後

保障対象者が複数いても、契約者は1人です。たいていは、世帯主(夫婦型であれば夫、家族型では父)が契約者となっていることが多いのかと思います。万が一契約者が亡くなった場合、契約はどうなると思いますか。

実は保険会社によって違います。代表的なものとして

① 契約者が存在しないので契約終了
② 残った妻が契約者となり、契約をそのまま引き継ぐ

といったものがあります。①に関しては、がん保険契約が無くなってしまうので、残った家族は必要であれば、あらためて別のがん保険を探し、契約をする必要があります。ただ、がん保険加入には診査があります。万が一診査に通らなければ加入することができません(※1)。

②であれば、ひとまず今までどおりの保障が継続されるわけですが、ある保険会社の規定では、契約は妻が引き続き継続できるものの、毎月の支払い(保険料と言います)は、今までどおり夫婦型での料金のまま、つまり亡くなった人の分まで負担しなければ継続できないというようになっています。私は過去の保険相談で、このタイプの夫婦型がん保険に加入している方にたくさん出会い、このはなしをお伝えしていました。

※1 がん保険加入時の診査については、過去の記事「がんの備え|『がん保険はいつでも入れる?』お金を払えば入れると思ってはいけない、というはなし」を是非ご覧ください

見直しをしづらい

契約者が存命であったとしても、注意点はあります。それは見直しを考えたい時です。がん治療は変化をしていくので、自分のがん保険の保障がその時代のがん治療に対応しているか、一定期間ごとに見つめ直しをする必要があります(※2)その際、夫婦ともに見直ししたければ問題はないのですが、契約者の夫だけ見直しして、妻の保障は残すということは、原則できないという問題があります。逆(夫はそのまま、妻が見直し)はできることもあるのですが、契約者が保険をやめる場合、付随する妻(もしくは家族)も一蓮托生ということになります。

夫婦とも見直ししようと、別のがん保険に申し込んだものの、妻だけ診査がとおらず、新しいがん保険に加入できないケースなどが一例です。あとはリアルなはなしとして、ご夫婦が離婚されるケースなども、いろいろと面倒が出てくる可能性があります。

※2 がん保険の見つめ直しについては、過去の記事「がんの備え|『がん保険の見直しは必要?』見直しはしなくても、見つめ直しは必須、というはなし」を、是非ご覧ください

もし親が今も加入しているとしたら…

私は自分が担当したお客様に、よくお伝えしていたことがあります。それは、がん保険、医療保険、介護保険などの、生きているけど病気などでお金を受け取る保険については、親の加入している保険についても、元気なうちに把握しておいた方が良いということです。

細かいはなしは別コラムを参照いただきたいのですが、親が高齢になり、がんなどで保険の請求が可能な時、誰が手続きをするか?というはなしがあります。もちろんご家族でそれぞれではありますが、親が高齢であればあるほど、子が対応せざるを得ないケースがあると思います。ですから保険の存在と内容を知る必要があるのですが、その際に万が一夫婦型の保険があった場合、今まで述べてきた内容から、一度立ち止まってその後のことを考えることをおススメいたします。

まずは見直しの検討

もし可能であれば見直しをして、一蓮托生の状態は解消した方が私は良いと思います。ただし、あまり高齢であると新しいがん保険に変えたくても、月々の負担(保険料と言います)が高額で、現実的でない場合もあります。また、先ほど触れた、加入時の診査の問題もあります。

万が一新しい保険に変えることが、あまり合理的ではない場合は、現状をよく確認し、夫婦型保険に加入していた場合に起こり得ることを、良く把握しておくだけでも意味はあると思います。いざ何かしようという時に、初めて不具合を知るのと精神的なストレスが違うと思います。

部分見直しの検討

夫婦同時の見直しがムリであったとしても、妻の側だけ変えるといった部分見直しも検討の余地はありだと思います。夫の側が健康状態などから見直しが難しい場合、妻だけでも新しいものに変えて、元々の契約は夫だけの保障に変更する。

それにより、夫婦それぞれが個別にがん保険を持つことになり、今まで触れてきたデメリットは解決することができます。夫婦両方とも見直しだと、月々の負担(保険料)が高額だけど、妻の分だけならば許容範囲というケースには良いかもしれません。

がんは家族単位の戦いになる

若い方だと健康状態に自身がある方ほど、がんに対する不安もなく、がん保険の必要性などを考えないこともあるかと思います。私個人の考えとしては、がんになるリスクの低い若い時ほど、がんになってしまった時の経済的損失は大きいと思っていますので、保険に入るかどうかは別にして、検討はしていただきたいと考えています。

そして若い時は、自分ががんになるリスクは低いですが、親ががんになるリスクはそれほど低くはありません。ですからがん患者の家族という立場になる可能性は、若い時でも低くはないということも合わせて知っていただきたいと思います。なぜ知ってもらいたいか?がんは、患者さんひとりではなく、家族を巻き込んだ戦いになることがあるからです。

自分ではなく親のためであれば

自分自身のためとなると、若いうちだと何か面倒な気持ちにもなりそうですが、親のためという理由であれば元気なうちに何かしておかなければ、というモチベーションになったりしないでしょうか。もちろん人それぞれです。

ただ、先ほども述べた通り、親世代はがんのリスクが高まっている年齢です。親ががんになってしまった時に、慌てなくて済むようにという理由で、まずは親の保険の存在とその内容の確認から始めて、少しがんのことを知るきっかけを作ってはいかがでしょうか。

がん保険相談時を大切に

私はがん保険の加入は必須ではないと考えています。保険は万能ではないですからデメリットもあります。ですが、がんへの備えは必須だと考えています。それはどういうことか?若いうちに、少なくともがんのことを知っておいてもらいたいということです。今学校ではがん教育がスタートしています。しかし、すでに社会人になった人は、学ぶ機会がありません。

そういった意味で、確実にがんのはなしができる、情報を得られる場面として、がん保険相談時があります。保険ショップなどに相談に行けば、がん保険を選択するにあたって、様々なアドバイスをもらえる可能性があります。私は10数年保険ショップで働いていましたが、加入を前提に相談に行く必要はありません。必要性を知りたいという相談で、情報を得ていただきたいと思います。

がん保険や生命保険の相談の機会に、あなたの保険の担当者から、がんに関する保険の商品情報だけではなく、がん治療の実態や、実は大事な日本の医療のルールなど、実際がんになってしまった時の影像が浮かぶ情報を得ながら、正しいがんへの備えを作っていただきたいと思います(※3)(※4)。

がんと聞いて、がん保険商品の選択肢しか出せない人は、がんについて、しっかり学んでいない可能性があります。もし、はなしの内容が薄いと感じたならば、他でセカンドオピニオンをとってでも、正しい情報をとっておくことをおススメいたします(※5)。それくらい、事前にがんを学んでいるかどうかは、大きな違いだと思っています。それは、正しいがんの知識を持たずに、約9年間、がん患者の家族という立場を体験した、私の実感でもあります。

(※3) がん治療の実態については、過去の記事「がんの備え|私たちが日本でがんになってしまった時、選択肢となる『4つのがん療養』」を、是非ご覧ください

(※4) 実は大事な日本の医療のルールについては、過去の記事「がんの備え|がんと日本の医療のルールを知らないことにより、主治医とのミスコミュニケーションが生じる可能性があるというはなし」を、是非ご覧ください

(※5) 生命(がん)保険相談のセカンドオピニオンについては、過去の記事「がんの備え|『がん保険選びにもセカンドオピニオン』一番大切なことは、オトクながん保険選びではない、というはなし」を、是非ご覧ください

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