#13 がん難民の存在|がん保険のトリセツ|第1章 がんを知る
がん患者さんの中で『がん難民』と位置づけられる人がいます。良い印象の言葉ではありません。私たちは病気になったら、当たり前のように医療を受けることができると思っています。
ところが現実に、先進国と言われる日本において、がん難民が存在すると言われています。こういった現実があること、できればがんになる前に知っておく必要があると、私は考えています。
目次
がん難民とは
一般的にがん難民とは、適切な治療を受ける病院が見つからないがん患者さんを指して使われています。
もともと治療を受けていた病院と、何らかの理由で関係が途切れてしまい、がんを治したいのにどうしていいかわからない、そういうがん患者さんがいらっしゃいます。
治療を受けられない
がん患者さん自身は、積極的に治療を受けたいにも関わらず、治療を受けることができない。とてもつらいはなしです。
それどころか、病院にたどり着けない。一時期大きな話題となり、国も問題視し様々な体制の整備が行われました。ただ、今でも起こり得るということを知っておく必要があります。
理由は様々
私たち日本人は医療の教育を受けていません。ですから医療者側と患者さん側で大きな情報格差が存在します。ですが自分自身でも一定の情報を得ておかないと、こういったことに巻き込まれる可能性があります。
なぜこういうことが起こるのか?こういったことが起きてしまうことには、いくつかの理由があります。ここでは、代表的なものを3つ取り上げます。
日本の医療のルール
後の章で詳しく触れますが、国や主治医の先生ががん患者さんに推奨する治療は、『標準治療』と呼ばれるものです。この標準治療は、国が誰でも小さな経済的負担で、良い治療を受けられるよう、健康保険が適用となっている治療です。
この標準治療は、がんの種類ごとに様々な治療が用意されていますし、今後新しい治療が追加される可能性もあります。
がん治療はいつか終了する
ただこの標準治療、無限に治療法があるわけではありません。がんの再発・転移等で、治療が長期化していった場合、すべての標準治療をやり尽くして、もうこれ以上治療法がない、そういったケースが訪れる可能性があります。
私自身もがん患者の家族としてこの瞬間が訪れ、主治医に別室に呼び出され、患者本人がいないところで主治医からその宣告を受けました。
緩和ケアへ
積極的に治す治療が無くなると、かかっていた病院から離れ、緩和ケアへの移行を勧められます。その後の行き先は、基本的に自分たちで探さなければなりません。
がん患者さんによっては、この対応を『主治医に見捨てられた』と捉えてしまう可能性があります。しかしこれも日本の医療のルールということを知っておく必要があります。
ネットにあふれる治療情報
がん患者さんは自分のがんに対する不安などから、何かいい治療がないかといった情報収集をすることも少なくありません。
最近は、情報を得ようと思った時、多くの方がネットを覗きに行くかと思います。うまく使えば便利なネットですが、必ずしも適切な情報ばかりとは限りません。
末期がんが消えた!!
ネットで検索すると、『○○で末期がんが消えた!!』といった、不安ながん患者さんにとって、とても響きの良い魅力的な情報も含まれています。
ただ本当に多くの方に効果があるのであれば、先ほど触れた標準治療に組み込まれます。それをされていないということは、まだ科学的根拠に乏しく、かつ医療費も全額自己負担の治療ということです。中には裁判沙汰になっているものもあります。
それを信じ主治医との関係悪化
当然ですが、そういった治療は主治医からは推奨されません。その治療を主治医に認めてもらいたいと思っていたがん患者さん、そしてそれを認めない主治医の関係に亀裂が入ってしまう可能性もあります。
主治医を信頼できず、独自の判断で治療選択し、逆に症状の悪化を招いてしまったものの、すでに主治医との関係がこじれてしまい、どうして良いかわからない、そんなケースも存在します。
医療者のとらえ方とは別に
国や医療者側でとらえられている『がん難民』は、今触れてきたようなもので、主に治療に関わるものです。医療者側と患者さん側の情報格差が原因と思われます。
ただ、私は個人的にもうひとつのケースを指摘しておきたいと思います。こちらも考えてみれば現実に起こっているものです。
お金がない
いくら健康保険が適用であろうと、無料で治療を受けることはできません。お金がないという理由で治療を受けられないことも考えられます。
単発の入院程度であれば、一時的な借り入れ等でしのげることもありますが、がんは再発・転移等で、治療が長期化するという特性があります。そういったケースでは、経済的な負担が大きくなってきます。
お金を理由に治療を変更・断念
お金を理由に治療を変えたり、あきらめていらっしゃるがん患者さんが存在します。調査対象のがん患者さん全体で4.9%、若年層に絞るとそれが10%を超えてきます。
がんはお金が掛かる病気と言われています。こういったケースが起こり得るということをあらかじめ知っておく必要があると思います。
がんは想像以上に、患者さん本人、そしてその家族に負担が掛かります。そしてその負担をがんになってから次々知っていくと、それがまた大きな精神的負担となる可能性があります。
すべてに完璧に備えることは難しいにしても、せめて一定の知識は備えておく必要があると、私は考えています。
是非、がんを語れる保険の担当者から、今回のがん難民の存在を含め、がんを知るという備えをしていただきたいと思います。
次回は『#14 がんとメンタル』というタイトルでお話ししたいと思います。今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
◇◆◇補足◇◆◇
このがん保険のトリセツは、1つのコラムでの文章量は少なめに抑え、要点だけをお伝えするようにしています。内容について、もう少し詳しく知りたいと思われた方は、是非関連する別のコラムもお読みください。
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