#24 自由診療のがん治療|がん保険のトリセツ|第2章 がんと治療のはなし

ここまで国が推奨する標準治療、標準治療に組み込むか検討中の先進医療について見てきました。しかし、医師が行うがん治療はこれだけではありません。『自由診療』と分類される治療が存在します。

万が一あなたががんの告知を受けてしまった時、おそらくどこかの段階で、この自由診療の情報にたどり着くかもしれません。あらかじめこの存在は知っておいた方が良いかもしれません。

標準治療以外にも治療はある

診療ガイドラインに記載される標準治療、これは患者さんに推奨されるべき治療という位置づけになっていますが、これを推奨することは義務ではありません。医師の独自の判断で行われている治療があります。

大病院ではなく、家の近所のビルの一室に入っているクリニックで、実はそういったがん治療が行われていていることがあります。

よく目に着く免疫療法

自由診療の代表的なものとして、この治療法があげられると思います。ネットでがん治療について検索すると、おそらくどこかで目にするかと思います。

細かい記述は避けますが、これは体の免疫の力を高めたり、免疫の力が低下することを抑えることで、がんをやっつける、そんなイメージの治療と言われています。また、免疫療法以外にも、自由診療の治療はたくさんあります。

先進医療に指定されたものも

免疫療法自体は、昔から研究されていて、その治療法も様々あるのですが、中には以前先進医療に指定され、標準治療に組み込むことを検討されていたものもあります。

ただ効果が認められず、先進医療の指定から外されたものもあります。それでも治療自体は無くなったわけではなく、引き続き自由診療で治療を提供している医療機関も存在します。

健康保険証は使えない

自由診療は、まだ健康保険の適用となっていない治療です。健康保険適用の治療と比べて、大きく2つのデメリットがあると言われています。検討するのであれば、その2つのデメリットを前提で考える必要がある、そのように思います。

また、新しい治療を検討する場合には、時間とお金と労力がかかります。まず動く前に情報を冷静に精査する必要があると言えます。

国は効果を認めていない

その治療が、高い治療効果を確実に得られるのであれば、健康保険の適用となり、標準治療になっているはずです。

そうなっていないということは、国はまだ治療効果を認めていないと言えます。それでもその治療を検討したいと思う、合理的な理由を探す必要があります。

費用は高額に

健康保険が適用の治療を受ける場合、一般的に現役世代の人は、発生した医療費の3割(所得により変わる場合あり)を負担すれば済みます。10万円の医療費であれば、3万円の自己負担ということです。

それが自由診療となった場合、全額自己負担となります。また、免疫療法となると、一般的に100万円を超える費用が請求されます。その金額を負担しても、検討に値する合理的な理由があるか、慎重に判断する必要があると思います。

がん難民のリスク

最終的には、選ぶのは自分自身です。様々な理由で、自由診療に向かうがん患者さんも実際いらっしゃいます。ただ、別の治療を検討するにしても、大切なことがあります。

前にお伝えしたとおり、日本のがんの治療現場では、がん難民という言葉があります。これは治療を受けたいが、医療機関にたどり着けない患者さんを指します。自由診療を考えるケースで、それが起こる可能性があるので、注意が必要だと思います。

主治医と対立

主治医の先生は、科学的根拠が乏しく、かつ高額の医療費がかかる自由診療へ向かうことを反対するかもしれません。それは、標準治療や診療ガイドラインの存在があるからです。

それをきっかけに患者さんと主治医の間で、意見の対立が起こり、最終的に今までの信頼関係が破綻してしまうこともあると言われています。

再び標準治療を受けたいが‥

自由診療を選んだものの、治療効果が得られず、がんがむしろ悪化するケースもあると思います。そうした時、再びもとの病院で、標準治療に戻りたいと思った時…。

一度その病院と対立して、すでに関係が切れてしまっている。どうしてよいかわからず、治療にたどり着けない。そんながん患者さんがいると言われています。主治医の先生との関係は大切にした方が良いと思われます。

判断するために大切なこと

最終的には、自分が判断をしなければなりません。ただ、ネットで

・副作用が少ない
・ステージ4のがんが消えた

といった聞こえの良いところだけで判断してしまうことは、後々に大きな影響を与えます。

適切な判断をするためには、適切な情報を得なければなりません。ただ、医療者でもない人が、治療に関する適切な情報を集めることは簡単ではありません。

セカンドオピニオンの活用

国立がん研究センターによると、自由診療で行う免疫療法を考えたい場合、『研究段階の医療として行われる免疫療法』を熟知した医師にセカンドオピニオンを取ることを推奨しています。

そういった選択肢も含め、まずは主治医の先生としっかり話しをすることが大切だと思いますし、冷静に考えることが必要だと思います。

納得して判断を

適切な情報に触れて慎重に検討し、最終的に納得して選択することが大切ではあるのですが、それは自分だけでなく、主治医の先生にも理解いただくことが大切だと、私は考えています。

仮に違う医療機関にかかる場合、主治医からこれまでの診療情報や紹介状等を準備いただく必要がありますし、引き続きその病院で定期的な検査を行うことになるかもしれません。後々どういった流れになるかという点にも留意する必要があります。

最後に…

いくらお金があっても、それ以外のメンタル的なことや医療情報などで、苦しい思いをすることがあります。私も過去に約9年、がん患者の家族として過ごしましたが、まさにお金以外のことで悩むことになりました。

ですからがんの備えとは、治療選択という重要な場面で、冷静に対応できるための準備を含めて、初めて成り立つのだと思います。そしてそれはがん保険に入るだけでは決してできない、私はそう考えています。

是非、あなたのがん保険の担当者が、治療選択の場においても、サポーターであることを願っています。

次回は『#25 緩和ケアを早く知る』というタイトルでお話ししたいと思います。今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

◇◆◇補足◇◆◇

このがん保険のトリセツは、1つのコラムでの文章量は少なめに抑え、要点だけをお伝えするようにしています。内容について、もう少し詳しく知りたいと思われた方は、是非関連する別のコラムもお読みください。

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