#25 緩和ケアを早く知る|がん保険のトリセツ|第2章 がんと治療のはなし

前回までは、がんを治すための治療法について見てきました。その治療法の進歩のおかげか、今がんは克服できる病気とも言われています。

国は今、がん対策の中で、がんとの共生をテーマに様々な取り組みをしています。その取り組みの代表的なもののひとつ、『緩和ケア』について、一緒に確認していきたいと思います。

緩和ケアとは?

『がんになると、体や治療のことだけではなく、仕事のことや、将来への不安などのつらさも経験するといわれています。緩和ケアは、がんに伴う心と体のつらさを和らげます。』

これは、国立がん研究センター情報サービスでの、緩和ケアについての説明です。緩和ケアは、心身両面での、苦しみや不安を取り除き、QOL(クオリティオブライフ:生活の質)を維持し、がんとの共生を図るものです。

心のケア

がんになってしまった時、最初にダメージを受けるのはメンタル面です。 ・治らないのでは…
・仕事を続けられるのか…
・子供の世話が…

と、様々な不安が沸いてきます。

こういった心のケアに目が向けられ始めていて、なかなか回復がみられなければ、適切な治療をしていく、ということが現在の緩和ケアにおける考え方です。

体のケア

がんの治療を行った場合、何らかの副作用が起こることが一般的です。例えば

・しびれが出る
・痛い
・息苦しい

といった症状が起こることがあります。

こういった症状がある場合、その時点で適切にケアを行い、日常生活への影響を軽減していくことが可能になってきています。

従来の緩和ケア

緩和ケア自体は、最近になって初めて出てきたわけではなく、以前から行われていました。しかし以前と比べて、方針が変わってきています。

ただ、方針が変わったものの、それが現場で完全に浸透しているかというと、そこにはまだ課題もあるようです。そのあたり、患者さんやその家族の側でも知っておいた方が良い、私はそう考えています。

亡くなる直前のもの

緩和ケアとは、もともと終末期医療という位置づけをされていました。入院状態であれ、在宅であれ、常にベッドにいる状態の患者さんへの処置という印象です。

そこから回復を期待するというよりは、いかに苦しみを少なくしてあげるか、ということが目的と言っていいかと思います。

緩和ケアは治療の終了の意

そして、主治医の先生から緩和ケアへの移行を勧められるということは、治療の終了を意味し、まだ治療を頑張りたいと思っている患者さんを傷つけたりすることもあったと言われています。

私自身も以前、がん患者の家族として、主治医の先生に別室に呼び出され、標準治療の終了と緩和ケアへの移行の宣告を受けました。当時は、そこで初めて緩和ケアのことを知りました。

診断時からスタート

今の緩和ケアは、終末期医療ではなく、がんの診断を受けた時から始めるという考え方に変わってきています。がんでも6割以上の方が、10年以上生存する時代になっています。

長く生きることができるので、その生活の質も維持していく。そのために始めから心と体のケアを行っていくのが、現在の緩和ケアです。

国の計画に明記

国のがん対策基本法を根拠に策定した『第3期がん対策推進基本計画』というものがあります。この中に3つ、大きなテーマがありますが、そのうちのひとつが『がんとの共生』です。

がんとの共生の中の5項目において、最初に記載されているのが

がんと診断された時からの緩和ケア

です。一番目に書くということ、このテーマの中での最重要課題と言えるのかもしれません。

治療効果も高まる

治療を行っている時に、併せて緩和ケアも必要に応じて受けられることで、QOL(生活の質)や精神症状を改善することが可能になっています。

そうして患者さんの心身の状態をよくすることで、実際生存期間を延長したという研究もあるようです。できれば、緩和ケアの存在は早く知っておきたいところです。

大切なこと

このコラムは、がん保険に加入している方へ向けて書いています。あなたががん保険に加入する時、がんの手術や抗がん剤治療など、治療に関することは聞いたことがあるかもしれません。緩和ケアについてはいかがでしょうか。

緩和ケアの存在、これもやはり事前に知っておきたい情報です。なぜなら緩和ケアとは、がんの診断時点からの、あらゆるダメージが対象となるからです。

声をあげる

緩和ケアにおいて、私が最も大切だと考えていること、それは主治医の先生を始め、第3者に声をあげることです。主治医に言いづらければ、がん相談支援センターを利用する手もあります。

家族でもいいですし、とにかく小さな不安でも心の内に閉じ込めず、表に出すことで、緩和ケアへたどり着ける可能性も広がるのだと思います。

まだまだ知られていない

がん診断時からの緩和ケアは、2017年度から取り組みが始まっています。現在その計画に対する進捗の評価が行われていて、その内容は厚生労働省HPで閲覧することができます。

その中に課題としてあげられていることが、『さらなる周知への取り組みが必要』といったものです。せっかくいい体制を築きつつあるのに、そもそもそれを知らない人が多い、それが現状です。

最後に…

もしあなたががんの告知を受けてしまった時、少なからずメンタル的なダメージを受けると思います。緩和ケアの存在を知っていて、すぐにケアを受けて回復を図れるのか、それとも自分の中で抱えてしまうのか…。

その後の展開に違いが出てくるかもしれません。

ですからがんの備えとは、今回の緩和ケアのように、がんとの共生を図るための情報の準備も含めて、初めて成り立つのだと思います。そしてそれはがん保険に入るだけでは決してできない、私はそう考えています。

是非、あなたのがん保険の担当者が、こういった必要な情報収集の場においても、サポーターであることを願っています。

次回は『#26 補完代替療法への期待』というタイトルでお話ししたいと思います。今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

◇◆◇補足◇◆◇

このがん保険のトリセツは、1つのコラムでの文章量は少なめに抑え、要点だけをお伝えするようにしています。内容について、もう少し詳しく知りたいと思われた方は、是非関連する別のコラムもお読みください。

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