#14 がんとメンタル|がん保険のトリセツ|第1章 がんを知る

私はこれまで10,000回以上の保険相談会に携わってきて、がん保険に関する相談にも数多く対応してまいりました。その中で、お客様へ丁寧にお伝えしようと心掛けていたことが

がんの備え=がん保険加入

ではないということです。

これまでにも触れてきましたが、がん保険はがん治療費への備えでしかないからです。これはとても大事なことなので、何度でも繰り返し申し上げたいと思っています。

最初のダメージはメンタル

がんであることを知るのは、精密検査の結果を聞きに行って、主治医の先生から告知を受けた時です。がんの備えとは、まさにこの瞬間のためなのです。ですから、がんの備え=がん保険では不十分と言えます。

がんであることを告げられ、まずにダメージを受けるのはメンタル面です。ですからここに対する備えが、順番で言えば、一番目でなければなりません。

まずはがんの告知を受けて…

がん患者さんのすべてが一緒ではないと思いますが、様々ながん患者さんの声の中には、主治医からがんの告知を受けた時、『頭の中が真っ白になった…』というものがあります。私も母のがんの告知に立ち会い、同じ感覚を味わいました。

頭の中が真っ白ということは、現実が受け入れられておらず、当然ですが何かを考える余裕も失われています。がん患者さんの中には、告知の時の記憶が飛んでいると言う方もいらっしゃいます。

ダメージは必ずあります

この告知を受けた時のショック、少しでも少なくするために、あらかじめがんという病気のことを知る、特に、がんだからといって、すべてが終わりではない、ということを知っておく必要があると、私は考えています。

そしてがんの告知を受けた後、次に治療のことを考えて、選択、決断をしていかなければなりません。メンタル的なダメージを抑えることが、その後の適切な判断につながっていくと思います。

一定の患者さんにうつ症状

ほとんどのがん患者さんが、最初の告知の時点でメンタル的なダメージを受けますが、一般的には時間の経過、一般的には数日から2週間程度で、現実に適応しようとする状態になるようです。

それでも一定の割合のがん患者さんには、うつ症状が現れてしまいます。ただ、それはその人がおかしいのではなく自然な反応であるということ。がんになる前にそういったことを知っておくことも大切なのだと思います。

必要に応じて治療を

メンタル的なダメージが大きいと、中にはうつ病や適応障害などを発症してしまうケースもあります。その際には、適切な治療を受けることが大切になるかと思います。

ただ患者さん本人が冷静な判断ができない場合、その家族が兆候を見逃さず、導いてあげることも大切かもしれません。自分がなる場合だけでなく、がん患者の家族になる可能性からも、がんを知ることは、とても重要だと思います。

相談場所の確保を

身近に家族がいない、いたとしてもがんのことをほとんど知らず、どうして良いかわからないケースもあります。やはりそういった時には、相談できる場所が必要です。

このコラムはがん保険に加入している方向けに書いています。その場合、あなたのがん保険の担当者が、ひとまず相談できる人であると望ましい、できればそういった担当者を確保していただきたいと思います。

確実に相談できる場所がある

がんになってしまった時、すべてのがん患者さんにとって、確実に相談ができる場所があります。そして速やかにそことコンタクトを取ることが大切だと思っています。これは私ががん患者の家族という立場で味わった実感でもあります。

私は過去、がん患者の家族でありましたが、その相談場所を知ったのは、治療をすべてやり終え、在宅医療へ移行する時でした。がんを学んでいなかったことを後悔いたしました。

まずがん相談支援センター

がん相談支援センターという場所があります。がん治療を行う大きめの病院であれば、病院内に設置されています。なかったとしても近隣の病院に存在します。これは国の方針で設置しているものなので、全ての都道府県共通です。

ここは、これからの治療のことだけでなく、仕事との両立やお金のこと、もちろんメンタル面も含め、様々な相談ができる場所です。

無料ですし、自分がかかっていない病院でも利用可能です。がんの告知後、早期にここと関係を持つことで、その後の安心感も変わると思います。

精神腫瘍科という存在

最近では病院によって、精神腫瘍科(腫瘍精神科とも)といった診療科が存在します。がん患者さん向けのメンタルケアを行う精神科で、たくさんのがん患者さんを診てきた先生が対応してくれます。

がん相談支援センターで相談することで、メンタル的にかなりつらい場合には、こういった場所も紹介してもらえる可能性があります。

やはり『がん=死』ではない

がん診療に対する体制は、以前と比べかなり充実してきています。もちろんまだまだ課題もありますが、それは今後少しずつでも改善していくと思います。

がん治療の質が向上するとともに、がん治療を続けていくためのケアも増えてきています。やはり『がん=死』という時代ではないと、言えるのではないでしょうか。

60%以上の方が10年以上生存

以前も触れましたが、がんと診断されても10年以上生存される方が増え続けています。そういった数字を知っておくことも、万が一がんの告知を受けた時の、メンタル的ダメージの低減につながるかもしれません。

ダメージを少しでも抑え、がん相談支援センターなど相談できる場所を確保することで、メンタル面の回復が早まる可能性があります。

余命宣告はあくまで目安

また、がんにおいては、その状態により余命1年、余命3ヶ月など、余命宣告を受ける場合があります。ただ、この余命宣告はほとんど当たらないと思っていいかもしれません。

実際余命3ヶ月と宣告されてから何年も生きていらっしゃる方もいます。もちろんこういうはなしはとても重いものかもしれませんが、捉え方次第でその後が変わってくるのかもしれません。

がんの告知を受けてしまったとしても、すべてが終わりではない、また確実に相談に乗ってくれる場所がある、そのことを是非覚えておいていただきたいと思います。

とはいえ、実際には気が動転してしまい、そういったことを忘れてしまうこともあるかもしれません。そういった時に、あなたのがん保険の担当者が、サポーターとなることを私は願っています。

次回は『#15 がん患者の家族は第2の家族』というタイトルでお話ししたいと思います。今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

◇◆◇補足◇◆◇

このがん保険のトリセツは、1つのコラムでの文章量は少なめに抑え、要点だけをお伝えするようにしています。内容について、もう少し詳しく知りたいと思われた方は、是非関連する別のコラムもお読みください。

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