がんの備え|がんフォーラムでがんサバイバーの方から聞いた、がん患者さんの二極化の側面
以前参加させていただいたがんフォーラムでの講演の中で、あるがんサバイバーの方のセリフが非常に印象深かったので、ご紹介したいと思います。
目次
ここにきている人はまだいいんです!
そのがんサバイバーの方が言ったのが、
『今日ここに来ている人たちはまだいいんです。自分で行動を起こして、こうしてここで同じ病気を経験した仲間と励ましあって、前向きに生きようとしています。でもその一方で、前向きな気持ちになれずにふさぎ込んでしまい、何もできないがん患者さんもたくさんいるんです。本当はそういった人たちにここに参加してもらいたいんです。」
といったものでした。
私たちの目に映るもの
芸能人など著名人の中で、自らのがん闘病の内容を発信してくれる方がいらっしゃいます。ブログ、SNS、TVなど様々なところで、思いを語ってくれていて、今後がんになる可能性がある私たちとって、こういったことは非常にありがたいものです。他人の経験を自分事として考え、もし自分が同じことになったら…ということを考えるきっかけとなります。また、身近にがん患者さんがいない人ほど、『がん=死』といったイメージを持ちやすいですから、がんを知るきっかけにもなります。
また、今までは何も気にしていないかったけど、著名人のがんをきっかけに、自分も備えをと考える人も増えると思います。実際、以前小林麻央さんや北斗晶さんが自らのがんを公表した時には、私が働いていた来店型保険ショップでも、『がん保険に加入したい』というご相談が一時的にすごく増えました。
二極化のあらわれ
このようにがんになってしまっても前向きさを失わず、日々を過ごしている人も確実にいますが、一方で私たちの目には入らないところで、苦しい思いをしている人も確実にいらっしゃいます。大人へのがん教育の普及活動に携わる、東大付属病院の中川恵一先生の著書(知っておきたい「がん講座」日経サイエンス社発行)によると、日本は先進国の中での自殺者が多いことが問題となっていますが、その原因として際立って多いのが『健康問題』ということです。特にがん患者さんには、うつ病、適応障害が多いため、がんと診断されてから1年以内の自殺率は、一般の人の24倍にも達するそうです。
がんを知らないことも一因
このようなことになっている理由は、もちろん様々にあるのでしょうが、国はその原因のひとつとして、
『私たちが、がんを知らない』
ということをあげています。そして、がん対策基本法の中で、がん教育について触れています。がんに対して、正しい知識を身につけ、必要な予防策や、検査の受診などを啓発し、がんで亡くなる人を減らしていきたいと考えています。
学校でのがん教育がスタート
実際に今、中学校や高校でのがん教育がスタートしています。これ自体は非常に素晴らしいことだと思います。将来の日本を支える若い世代が、若いうちにがんを学ぶことで、予防や早期発見につながり、がんで亡くなる人が減っていくかもしれません。非常に素晴らしいことではあるのですが、この子供たちへのがん教育、成果がわかるのは、早くても20年以上先のことになると思います。
社会人へのがん教育は・・・
将来へ向けた子供たちへのがん教育は、意義のあることですが、ただ早急にがん教育を届けなければならないのが、すでに社会人になっている大人の方です。学校でがんや医療についての教育を受けることなく社会に出て、すでにり患リスクが高まっている年代の人へ、必要な情報を届け、備えをしてもらいたいと国は思っているのですが、実際その教育を行う場や担い手がいないのが現実です。
そういった中、私は生命(がん)保険に関わる仕事をしていますが、この職業はがんになる前にがんのはなしをする数少ない存在です。ただがん保険がどうだというはなしではなく、お客様にがんを正しく知っていただき、保険だけではない適切な備えを重視して取り組んでいます。みなさんも生命保険の相談をする時には、がんのことを知る機会にしてみてはいかがでしょうか。
簡単ではない周囲の寄り添い方
がん患者さんのメンタル面へ影響を与えるもののひとつとして、周囲の接し方ということがあると思います。がん患者さんには、家族、友人、職場関係など、いくつかの人間関係が存在します。周囲は、がん患者さんを支えるために、何かしなければという思いになると思います。ただ、実際に自分に何ができるのか、こういうことをしてもいいのだろうかといった葛藤を抱くこともあります。
良かれと思ってのことが…
いろいろながん患者さんの声をきいたり、アンケートなどを見たりすると、
『がんばって!』
という言葉に傷つくというものがあります。今必死にやっているのに、これ以上何をがんばればいいの?といったものです。声をかけた方は、もちろん悪気があるわけではないのですが、受け取る側のがん患者さんには、素直に届かないケースがあります。また、他のものでは、過度に気を使われてつらいというものもあります。
人はそれぞれでもあるので、がん患者さんにはこう接すればよいという、マニュアルのようなものはありません。ただ、気持ちに寄り添える人がひとりでもふたりでもいれば、がん患者さんの心ののあり方も変わってくるのかもしれません。
がんは家族単位でのたたかい
様々な人間関係がありますが、やはりまずは家族単位での団結は大切になると思います。がん患者さんは、治療の副作用などで、メンタルだけでなく、肉体的にもつらい状態になることがあります。周りが思う以上に、日常での動作に負担があったりします。そういったところを気兼ねなく意思疎通ができ、サポートできるとがん患者さんも助かりますし、サポートする側もやるべきことが見えるとサポートしやすくなります。
また、家族間での負担の分担ということも実は大切です。家族の人数はもちろん人によって違いますが、もし複数の人がいるのであれば、特定の人だけに負担が偏らないようにすることも大切です。私は過去、母のがん闘病中に、それが全然できておらず非常につらい思いをしました。でもあとで思ったことは、それができるためには、全員ががんに対する一定の知識を有していることが必要であるということです。
やはりメンタル面が第一
がん保険のはなしの場では、どうしてもお金、いわゆる治療費などの話題ばかりになりがちですが、がんになって最初にダメージを受けるのはメンタル面です。目の前の主治医の先生から『がんが見つかりました』と告知を受けた時に、その事実を受け入れることができるかどうか。もちろん人それぞれでしょうが、この時点ではお金は一切関係ありません。この時役に立つのは、正しい知識ではないでしょうか。がんだからといって、全てが終わりではない。がんを克服して、元気に復帰している人もたくさんいることを知っているかどうか、ということは大切ではないでしょうか。
使えるものは使う
前向きに進むために、お金の前に必要になるのが、情報です。主治医の先生から提示された治療方法で進むことが自分にとってベストかどうか。やはり納得して治療を選択できるかどうかが分かれ目になるのではないかと思います。がん治療を行う主だった病院には、
『がん相談支援センター』
というものがあり、治療のこと、療養のこと、生活のこと、仕事の復帰のことなど、何でも相談できます。ちなみにこのセンターは、厚生労働省(国)が、全ての人に質の良い治療をうけていただくために、ということで病院内に設置された場所です。患者さんでなく家族でも無料で利用できます。がんの事実を知りつらいですけど、はなしを聞いてもらうということも、メンタルを保つ上では、大切ではないでしょうか。
がん保険だけメンタルは守れない
がん保険もがんへの備えのひとつですが、
がんへの備え=がん保険
は、マズイと思っています。私は過去にあるお客様とのやり取りで、その思いを強くしました。世の中には、
『がん保険に加入しているから、がんは安心だ!』
と思っている方も多くいらっしゃると思っています(関連記事は、こちら)。もちろんそれを否定するつもりはありませんが、まずはメンタル、そのダメージを少しでも小さくするための知識、家族や周囲の理解、そして適切な情報収集、それがあって初めてがんと向き合うことができます。
国が行いたいけど行えていない『社会人に対するがん教育』。是非この機会に考えてみてはいかがでしょうか。
ちなみに、文中でご紹介した、『東大付属病院の中川恵一先生の著書(知っておきたい「がん講座」リスクを減らす行動学 日経サイエンス社発行)』は、けっこう読みやすく、幅広い知識が得られますので、おススメです。
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