がん保険の選び方|『入院や診断ではなく、治療給付が主のがん保険』長期の通院治療への備えに変化してきた、というはなし

1974年に、アフラックが初めて発売したがん保険。当時は、がんでの入院費へ備えることが、保障のメインでした。その後、入院給付に加え、診断給付金と言って、がん診断時にまとまった一時金(100万円など)を受け取れるものが増えてきました。

ただ、ここ数年で、がん保険のトレンドはガラッと変わったと言っていいと思います。現在、がん保険ランキングなどで、上位に来ているがん保険は、『がん治療給付』がメインになっているものが多い印象です。それだけ、がん治療の現場が変化してきているのだと思います。

そこで今回は、今トレンドのがん治療給付、その一般的な内容と、覚えておきたい注意点について、考えていきたいと思います。

まさに今、『トレンドのがん保険』を選択しようとしているあなたへ、お届けしたいはなしです。

入院、通院ではなく、今のがん治療に対する保障

一般的に、がん保険は、主契約と特約の2つの構成で成り立っています。主契約は、字のとおり契約の主の部分、特約は、任意で付加するオプションのような存在です。従来のがん保険は、『入院して1日当たり1万円』といった入院給付金や、『がんの診断を受けたら100万円』といったがん診断給付金が、主契約となっているものが主流でした。

ただ、最近ランキング上位になっているがん保険は、それらがオプションの方に回り、治療給付金といったものが、主契約となっています。このあたりは、最近のがん治療の実態を反映してきているのかもしれません。

また、主契約は従来のままだけど、オプションで治療給付金を選べるようにして、対応している商品もあるようです。

5万円から30万円の一時金

治療給付金とは、がんの3大治療とも言われる、手術、放射線、抗がん剤のどれかを受けたら、1か月に1回を限度に、10万円お支払いしますといった内容となっています。治療の範囲が、3大治療+アルファになっていたり、主契約は抗がん剤だけの支払いであったり、多少がん保険商品により違いはあります(※1)。

ただ総じて、治療の長期化、しかも通院での長期治療に対応しようとしている感じは、各社共通のような気がします。これはやはり、がん治療が変化してきたことの表れだと思います。金額の設定は、5万円から30万円くらいまでの間が多いようです。

(※1) 細かい保障内容や金額設定などは、各保険会社のHP等でご確認ください。ここでは、イメージとしてお読みください

回数制限は商品ごとに違い

1か月1回、10万円や20万円といった、少しまとまった金額を、治療が続く限り受け取れるという点が、好まれているようですが、回数制限は、各社で違うようです。すべてではないですが、いくつか見てみたところ、60回(5年)まで、120回(10年)まで、無制限というものが多い印象です。

本当にがんで治療が長期化した場合に関わってきますので、この回数制限もよく確認することをおススメいたします。

がん治療費への備えとして安心

保障の名称が、治療給付金といったような、いかにも治療費へのお金という名称なので、誤解することは少ないと思いますが、ここは正確に理解しておく必要があります。あくまで、こういった保障は、治療費への備えです。

昨今の、通院での長期の抗がん剤治療などへの備えとしては、良く作用すると思います。受け取れば、加入していて良かったと感じるのではないでしょうか。

標準治療であれば十分

一般的に、私たちが日本でがんになった場合、健康保険証を出して、『標準治療』を受けることになります。標準治療にはどのような治療があるかというと、先ほど出てきた3大治療が中心となります。その治療を受けている限りは、月10万円程度の給付金があれば、おおむね治療費をカバーできるものと思います。

その他、通院のための交通費や諸雑費関係、それから貯蓄の状況などを考えて、設定金額を調整していけば良いでしょう。

ただし収入保障としては…

ただがん保険のパンフレットを見ていると、この治療給付金を収入減少への備えとしても使えるというように、案内しているものもあります。例えば、月々20万円の設定にして、治療費とその月の生活費へ、というような見積もりなのですが、これについては過度にあてにし過ぎると、実際がんになってしまった時に、足元をすくわれかねません。

治療給付金は、あくまで治療を受けたことに対する保障です。治療のなかった月は受け取れません。収入が厳しくなるのは、治療の月だけなのか?必ずしもそうは言えません。この保障は、あくまで治療費に備えることが目的ということを、明確にしておいた方が良いと思います。

最大の注意点は、今後も変化していくということ

最近、治療給付金の保障が多くなってきました。それは、がん治療の実態が変化してきたからです。従来のがん保険では、対応ができないケースが出てきたということなのですが、この変化、もう終了と思ってよいでしょうか?実は、これからも変化はしていくと思います。

つまり、こういった変化は今回が初めてではありません。がん保険のリニューアルは、大小含めれば、過去に何度も起こっています。ですから、今後も変わっていくと思っておく必要があります。

ここ最近で再び動きが…

今回触れてきた治療給付金。最近は当たり前になっていますが、実はこの保障について、新たな変化が出てきています。最新のいくつかのがん保険で、抗がん剤治療などを中心に、健康保険適用のものだけでなく、自由診療で受ける抗がん剤治療まで対象とするものをよく目にするようになってきています。

ここ数年で『がんゲノム医療』という言葉をよく聞くようになりました。ここでは詳細には触れませんが、国が推進する新しいがん治療です。これを受ける場合には、健康保険がきかない、高額の抗がん剤を使用して治療を行う可能性があり、それに対応するがん保険が、すでに出てきています(※2)。

(※2) 『がんゲノム医療』については、過去の記事「がんの備え|『がんゲノム医療に対応するがん保険』今抗がん剤治療保障に動きを起こしつつある、がん治療の変化、というはなし」を、是非ご覧ください

定期的に見直しを

がんはまだまだ分からないことが多い病気だと言われています。ですから常に世界中で研究が行われており、新しい治療方法や検査方法などが開発されてきます。新しい治療が生まれ、がん治療の実態が変われば、それに応じてあなたが加入しているがん保険の質が、陳腐化する可能性があります。

つまり、がん保険は、加入して安心してしまうと、将来がんになってしまった時に、ほとんどお金が出ないということも起こり得ます。がん保険は、基本的に定期的なチェックが必要であるということを、押さえておいていただきたいと思います(※3)。

(※3) がん保険をチェックすることの重要性については、過去の記事「がんの備え|『がんは若い時に、会社で終身保障のがん保険に入っているから安心なんだ!』とおっしゃったお客様との出会い」を、是非ご覧ください

経済的に大きなダメージは、生活費に影響が出た時

がんは、再発・転移などがあり、治療が長期化すれば、治療費や諸雑費の通算が、100万円、200万円を超えるケースも出てきます。なので、多くの方ががん保険に加入するのだと思います。それ自体は悪いことではないのですが、がんの時のあらゆるお金、そのすべてを助けてくれると思うことは危険です。

がんで最も経済的なダメージが出てくるのは、収入に影響が出てくるケースです。万が一、収入を全く失ってしまうと、その年だけで数百万円のダメージになります。実際がんで仕事の継続が困難になるケースはたくさん起こっています。がんを考える時は、このシナリオまで考慮して、備えを考えていただきたいと思います(※4)。

(※4) がんの生活費への影響については、過去の記事「がんの備え|意外と忘れられがちな、がんになってしまった時にも発生する普通のお金」を是非ご覧ください

がん保険は、治療費への保険

一般的ながん保険は、がんの治療費や交通費などの諸雑費への備えと、割り切る必要があります。もし、貯蓄や副収入の有無などを考慮し、治療費だけはがん保険に助けてもらおうということであれば、最新の保険から良いものを選び、定期的に見直しをしていけば良いと思います。

ただそうではなく、生活への影響も考慮して備えを考えるのであれば、がん保険という選択肢からだけではなく、広く探していく必要があります(※5)。

(※5) がん保険ではないがんの備えについては、過去の記事「がんの備え|『がん保険、必要?不要?』論争があります。私はどちらかと言えば、不要かな・・・というはなし」を、是非ご覧ください

広い視野でのアドバイスを

どちらにしても、まずはどういったことが起こり得て、どのような経済的ダメージが発生する可能性があるか、またその時に利用できる社会保障制度にどのようなものがあるか?といった広い視野で全体像を把握し、あなたの家族構成や家計状況をもとに、保険の必要性を見ていくことが大切です。そのために、がん保険の相談をする時を、大切にしていただきたいと思います。

是非その機会に、あなたの保険の担当者から、がん保険の商品情報だけではなく、がん治療の実態や、実は大事な日本の医療のルールなどについても情報を得て、正しいがんへの備えを作っていただきたいと思います(※5)(※6)。

がんと聞いて、がん保険商品の選択肢しか出せない人は、がんについて、しっかり学んでいない可能性があります。もし、はなしの内容が薄いと感じたならば、他でセカンドオピニオンをとってでも、正しい情報をとっておくことをおススメいたします(※7)。それくらい、事前にがんを学んでいるかどうかは、大きな違いだと思っています。それは、正しいがんの知識を持たずに、約9年間、がん患者の家族という立場を体験した、私の実感でもあります。

(※5) がん治療の実態については、過去の記事「がんの備え|私たちが日本でがんになってしまった時、選択肢となる『4つのがん療養』」を、是非ご覧ください

(※6) 実は大事な日本の医療のルールについては、過去の記事「がんの備え|がんと日本の医療のルールを知らないことにより、主治医とのミスコミュニケーションが生じる可能性があるというはなし」を、是非ご覧ください

(※7) 生命(がん)保険相談のセカンドオピニオンについては、過去の記事「がんの備え|『がん保険選びにもセカンドオピニオン』一番大切なことは、オトクながん保険選びではない、というはなし」を、是非ご覧ください

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