がん保険の選び方|『タバコを吸わないと割引があるがん保険』うれしい特典だが、保障内容の方が大切、というはなし

日本で暮らす人の約4割が加入するがん保険。1974年に初めてがん保険という保険商品が世に出ました。最初のうちは、がん保険ごとの商品の特徴にそれほど違いは無かったものの、現在ではたくさんの保険会社でがん保険が販売され、その内容もバラエティに富んできている印象があります。

そんながん保険商品の中で、最近『タバコを吸わないと割引がきく』というタイプの商品を目にするようになりました。同じがん保険なのに、タバコを吸っているかどうかで月々の負担(保険料と言います)が安くなるのであれば、それはオトクというはなしです。もしあなたが選んだがん保険に、そういった特典があれば良いことではありますが、その特典に振り回されることには注意が必要です。

そこで今回は、タバコを吸わないと割引がきくがん保険に対して、どのような捉え方をして、どのようにがん保険を選んでいくことが大切なのかということいついて、一緒に見ていきたいと思います。

まさに今、『タバコを吸わないと割引があるがん保険の広告が気になっている』あなたへ、お届けしたいはなしです。

割引ありきになると、選択を誤ることに

がん保険を契約する時に、タバコを吸わないがゆえに、月々の負担(保険料と言います)を安くしてくれる。そう聞くと、タバコを吸わない人にとっては当然オトクなはなしです。ただし、このタバコ割引は、すべてのがん保険において適用となる制度ではありません。どちらかというと、まだ少数派であると思います。

もしあなたが非喫煙者で、せっかくそういった特典があるがん保険があるならば、その特典は必ず得たいと思ってしまうと、場合によって落とし穴にはまってしまうことになります。タバコ割引は、あくまでコスト面での特典です。それを前提にしてしまうと、あなたの選択肢を狭くして、本来の目的が果たせなくなる可能性があるので、注意が必要です。

がん保険の目的は?

がん保険に加入する目的は、万が一がんになってしまった時に、お金を受け取ることができて、経済的に助けてもらうことです。一般的にがんは治療費が多くかかるとも言われていますが、貯蓄を取り崩さずに、治療を賄うことができれば、がん保険に入っていて良かったということになります。

すなわち、今の時代のがん治療にフィットしたがん保険に加入していることが大切です。もしあなたが初めてがん保険を考えるということであれば、まだイメージが薄いかもしれませんが、がん保険の保障の内容は保険会社によって違います。つまり、どのがん保険を選択するかということは、いざという時にために非常に重要です。

最終段階で見るところ

当然月々支払う額(保険料)は、安いに越したことはありません。ただし、そこにばかり意識がいって、今回の場合タバコ割引があるということにこだわったがゆえに、がん保険の商品選択肢が狭くなり、あなたにとってふさわしいいがん保険が選ばれないとしたら、それは目的を果たせないということになります。

タバコ割引の有無に関しては、たくさんあるがん保険から順序だてて絞っていき、最終的ないくつかの候補の中で、選ぶ理由にしても良いかもしれない、というスタンスでいていただきたいと思っています。

がん保険選択のための3つのステップ

私は過去に10,000回以上の保険相談会に携わってまいりましたが、がん保険の相談において『たくさんありすぎてどれを選んだら良いのかわからない』という声をたくさん聞きました。本当にその通りだと思います。15年、20年前と比べて、現在はがん保険の数、そして商品改定の回数が多くなっており、一般の方がネットの情報だけで適切に選択していくことは難しいかもしれません。

私は過去の相談業務において、がん保険を選択するうえで、特に大切な3つのステップを使って、お客様とおはなししてきました。詳細は別コラムを参照いただきたいと思いますが、ここで簡単に触れておきます(※1)。

※1 がん保険選択のための3つのステップについては、過去の記事「がんの備え|『がん保険の選び方』賢く選ぶための3つのステップ、というはなし」を、是非ご覧ください

いつ?

がん保険は、がんになってしまった時にお金を受け取れる、そんな印象があると思います。もちろん間違いではありません。ただ、『どのタイミングでお金を受け取れることが確定するか』具体的なイメージはありますでしょうか。実は、たくさんあるがん保険ですが、このいつお金を受け取る権利が確定するか?という点で、

① がんの診断確定時(治療前)
② がん治療終了後

の2つに大別できます。がんになれば必ず治療を受けるのだから、どちらも変わらないのでは?という印象もあるかと思います。ただし、私はこの2つには大きな違いがあると考えています(※2)。

※2 いつお金を受け取るかということについては、過去の記事「がんの備え|取扱い注意!がん保険には、2種類ある。その選択次第で、がんになった時の備えが変わってくるというはなし」を、是非ご覧ください

何を?どのくらいまで?

次に、何を守るか?という点です。言い換えると、何にお金が掛かるかということです。当然『治療費』という声が聞こえてきそうです。それももちろん正解です。実際は、

① がんの治療費
② 仕事を退職して収入を失った場合の生活費

に分けられると思っています。盲点なのですが、がんが進行して仕事をやめざるを得ないケースもあります(※3)。

最後にがん保険の契約をいつまで継続するか?という選択があります。これは、

① 終身保障(生きている限りの一生涯守ってもらう)
② 定期保障(10年や20年、もしくは60歳までなど、選択した一定期間守ってもらう)

に分けられます(※4)。

実は、この3つのステップを通過することで、あなたにとってふさわしいがん保険がどれなのか、ある程度絞り込みがされてきます。その絞り込んだ中に、タバコ割引のがん保険があれば、選択肢のひとつとしても良いのだと思います。

※3 仕事を退職して収入を失った場合の生活費については、過去の記事「がんの備え|意外と忘れられがちな、がんになってしまった時にも発生する普通のお金」を、是非ご覧ください

※4 がん保険の契約をいつまで継続するかについては、過去の記事「がんの備え|『終身保障か?定期保障か?』がん保険を選ぶ際の、ひとつのポイント、保険期間についてのはなし」を、是非ご覧ください

がん保険の真価は長期戦で問われる

がん保険必要論、不要論といった意見があります。この議論についての私のスタンスは、別のコラムを参照いただきたいと思いますが、あまり振り回され過ぎない方が良いのでは、と思っています(※5)。あなたにとって価値があるかどうかが大切で、一般論がどうかということは関係ないと、私は考えます。

加入しているがん保険の価値は、がんの再発・転移などがあり、その戦いが長期なった時にこそ発揮されるべきだと私は思います。ですからそういったケースで、がん保険に助けてもらう必要があるかどうかが、がん保険が必要かどうかの判断材料なのではないでしょうか。

※5 がん保険必要論、不要論といった意見については、過去の記事「がんの備え|『がん保険、必要?不要?』論争があります。私はどちらかと言えば、不要かな・・・というはなし」を、是非ご覧ください

最初はおつりがくることも

幸いがんの発見が早期で、手術でがんがきれいに取り切れた場合、一定の経過観察ののち治療が終了。以降、再発・転移もなし、そのようなケースもあります。実際私のお客様の中にも、30年前に胃がんで胃を部分切除し、それ以来何もないという方がいらっしゃいました。

そのようなケースにおいて、がん保険からお金を受け取った場合、おそらく必要な治療費などを払ったとしても、お金が余ることがあります。単発の手術だけというケースにおいては、日本の健康保険には『高額療養費』がありますので、がん保険の必要性はそこまで感じないかもしれません(※6)

※6 『高額療養費』については、過去の記事「がんの備え|『高額療養費』がんに限らず、覚えておいて損はないというはなし」を、是非ご覧ください

本当につらい時こそ…

一方がんの場合、最初の治療はうまくいったものの、一定期間経過後、がんが再発したり、別の部位に転移しいることが発見され、治療を繰り返すことになるケースもあります。一般的にがんが怖いというイメージは、こういったシナリオがあるからだと思います。

治療が長くなればなるほど、精神的、肉体的なダメージが増すと同時に、経済的な負担も大きくなってきます。貯蓄が無くなる、もしくは退職して収入を失う、そういったダメージが大きい時ほど『保険をかけといて良かった』と、心から思えるのではないでしょうか。ただし、そう思うために、加入時に適切な判断をする必要があるのだと思います。

がんを考えるきっかけになるならば良いこと

今回はもともと『タバコを吸わないと割引があるがん保険』がテーマでした。ただ、その選択には注意が必要であるということに触れてきたわけですが、もしあなたがネット広告で、タバコ割引のがん保険に関心を持ったのであれば、それ自体は良いことだと思います。なぜなら、日本で生活していて

・年齢が若くて健康に不安がない
・身近にがん患者さんがいない

という条件の方の場合、がんに関心を持つ機会、がんを知る機会を得ることが少ないと思うからです。どんなことであれ、がんやがん保険を知ろうと思うきっかけになるのであれば、私は価値があると感じます。

もちろん家計は大切

がん保険を考える場合、その保障内容が充実しているかどうかがとても大切です。ただし、保障を手厚くし過ぎたために、毎月の負担(保険料)が高額になり、結果、家計を圧迫するということになれば、それは本末転倒です。保険とは、そもそも家計を守るものです。

そういった意味で、タバコ割引のあるがん保険が、あなたの家計を守るにあたってふさわしい内容のがん保険であれば、それはベストの結果と言えるのかもしれません。

がん保険相談時を大切に

もしあなたとあなたの家計にふさわしいがん保険の選択が難しい場合、やはり外から情報を得て適切な判断をしていただきたいと思います。保険ショップなどに相談に行けば、がん保険を選択するにあたって、様々なアドバイスをもらえる可能性があります。是非そういった機会を作って、早めにがんのことを知って、必要な備えをしていただきたいと思っています。

そして、そのがん保険や生命保険の相談の機会に、あなたの保険の担当者から、がんに関する保険の商品情報だけではなく、がん治療の実態や、実は大事な日本の医療のルールなど、実際がんになってしまった時の影像が浮かぶ情報を得ながら、正しいがんへの備えを作っていただきたいと思います(※7)(※8)。

がんと聞いて、がん保険商品の選択肢しか出せない人は、がんについて、しっかり学んでいない可能性があります。もし、はなしの内容が薄いと感じたならば、他でセカンドオピニオンをとってでも、正しい情報をとっておくことをおススメいたします(※9)。それくらい、事前にがんを学んでいるかどうかは、大きな違いだと思っています。それは、正しいがんの知識を持たずに、約9年間、がん患者の家族という立場を体験した、私の実感でもあります。

(※7) がん治療の実態については、過去の記事「がんの備え|私たちが日本でがんになってしまった時、選択肢となる『4つのがん療養』」を、是非ご覧ください

(※8) 実は大事な日本の医療のルールについては、過去の記事「がんの備え|がんと日本の医療のルールを知らないことにより、主治医とのミスコミュニケーションが生じる可能性があるというはなし」を、是非ご覧ください

(※9) 生命(がん)保険相談のセカンドオピニオンについては、過去の記事「がんの備え|『がん保険選びにもセカンドオピニオン』一番大切なことは、オトクながん保険選びではない、というはなし」を、是非ご覧ください

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