がん保険の選び方|『20代でがん保険必要?』20代だからこそ必要であるとの考え方もある、というはなし

がん保険は何歳から必要?という疑問はあるかと思います。特に20代だと、なる確率だけで言えば、80代の人と比べると、かなり低くなります。だから、がん保険などは、もう少し年をとってから…という考え方もわかります。

ただ、がん保険を含めた、保障の考え方ですが、いつなったら困る?という観点から考えていくプロセスもあります。80歳まで生きるならば、2人に1人の日本人ががんになります。50%の確率でなるとわかっているのならば、年を取るまでに貯蓄を作っておけばいい。そういった準備をすることができます。

そこで今回は、がん保険の必要性を検討するために、実際がんになってしまった時に、起こり得るシナリオについて、考えていきたいと思います。

まさに今、『がんはまだいいかな…?』と考えているあなたへ、お届けしたいはなしです。

がんになる確率

がんは老化現象の現れとも言われていますので、なる確率は、当然年を取るごとに上がっていきます。国の統計によると、2018年の1年間、20代、50代、80代の、人口10万人当たりのがん罹患率は、以下のとおりです(数字は、小数第3位を四捨五入)。ちなみに、国民全体だと、今は毎年100万人の人が、新たにがんの診断を受けると言われています。

20~24歳25~29歳50~54歳55~59歳80~84歳85~89歳
男性20.59人32.49人357.00人693.01人3720.69人3979.10人
女性28.42人57.58人577.61人685.23人1680.50人1839.97人
出典:厚生労働省「2018年全国がん登録」より抜粋し、著者が作成

80代とはだいぶ違いが

見て明らかなように、80代の人と比べると、20代でがんになる確率は、かなり低いことがわかります。一般的に、がんは50代くらいから、リスクが高くなってくるなどと言われています。

ただし、高い、低いは別として、若い世代でも、がんに罹患する人は確実に存在します。そして、その中には、芸能人やスポーツ選手など、みなさまがよくご存じの著名人も含まれています。

女性特有のがんは特殊

ちなみに、今回のテーマとは違いますが、少しだけ。あえて男性と女性をわけて表示したのですが、一定の特徴があります。50代半ばより、下の世代では、女性、上の世代では、男性の方が、罹患率は高くなっています。これは、女性の場合、若い世代の時でも、乳がんなど婦人科系のがんがあるためです。

子宮頸がんは30代、乳がんは40代に、罹患のピークを迎えると言われています。

がんになった場合の違いにも目を

20代でも、80代でも、がんになること自体は怖いことかもしれません。ただし、がんが人生に与える影響は、少し違うかもしれません。今回は、がん保険などの必要性がテーマですから、経済的な影響について比較をしてみたいと思います。

まず80代でがんになってしまったケースですが、積極的に治療したいという方もいるでしょうが、そうではないという方もいらっしゃると思います。このあたりは、その方の人生哲学的なところによると思いますが、人生においてやるべきことはやってきたという年代でもあります。がんをなんとか治さなければいけない理由が、20代の方よりも低いかもしれません。その場合、それほど医療費がかさむこともないかもしれません。

また、80代の方の場合、すでにそれまでに貯蓄を築いてきていれば、医療費に関してはそこからねん出できるかもしれません。日々の生活もご自分だけ、もしくはご夫婦だけという場合が多く、年金で生活が成り立っていれば、がんで収入を失うこともありません。

独身だった場合

一方の20代の方の場合、まず独身のケースですが、就職してからの期間が短ければ短いほど、まだ貯蓄はそれほど大きくない可能性があります。その状態でがんになってしまい、仕事を休職しなければならなくなったりしたら、その少ない貯蓄が底をつく可能性を考えなければなりません。休職した場合、一定の条件を満たせば、健康保険制度の中の『傷病手当金』というものから、一定の保障を受けられる可能性はあります(※1)。ただし、それも無尽蔵ではありませんので、制度のこともあらかじめ知っておいた方が良いかもしれません。

それから、会社で休職期間が切れたりして、退職してしまった場合、その再就職が難しいケースがあります。国も今、がんサバイバーの方の、就労支援を課題としているくらいなので、実は思い通りに再就職がかなわないケースもあるのが現実です(※2)。

また、万が一自力で医療費や生活費などを賄えないとなった時、誰を頼るでしょうか?ご両親と考える方もいらっしゃると思います。親は、お子さんを独立させ、これからセカンドライフへの準備をしていく期間になっていることが考えられます。今まで、教育費や住宅ローンの返済で、あまり貯蓄ができていなかった。これから80歳でも安心して過ごすための、貯蓄を作れるかどうかで、老後の生活が変わります。もしそういった時に、あなたの医療費や生活費の負担が生じてきたとしたら…。予定していた貯蓄ができず、老後への生活が経済的に不安定になるかもしれません。

(※1) 『傷病手当金』については、過去の記事「がんの備え|『傷病手当金』がんだけではないですが、公的保険制度に、働けなくなってしまった時の保障があるというはなし」を、是非ご覧ください

(※2) がん患者さんの再就職については、過去の記事「がんの備え|がんが治まった後に、がん患者さんを悩ます、再就職に際しての、ご自身のがんの申告のはなし」を、是非ご覧ください

家族がいる場合

すでに結婚して家族がいる場合、独身の場合のケースに加え、すでに守るべき家族がいます。まず、暮らしていくためのコストが、独身の時よりも大きくなっています。最近は夫婦共働きで家計を支えている方も多いかと思います。夫婦の収入があるからこそ、ある程度貯蓄もできる家計のゆとりがあったところに、ご夫婦の片方が万が一がんになってしまった場合、やはり休職などにより、家計収入が減って、今まであった余裕がなくなる可能性があります。

例えば、その時にすでに住宅ローンを組んでいて、支払いが困難になり家を手放さなければならない、そんな事例も実際に起こっているのが現実でもあります。

なぜ生命保険には入るのか?

結婚しているかどうかにより違いはあれど、どちらにしても20代の場合、働いて収入を稼ぎ、将来に向けて貯蓄を作っていく段階であるということは同じです。その貯蓄を作る時期にがんになってしまったら…。がん保険に限らず、保険はそもそもそういう人のためのものではないでしょうか。

多くの方が、結婚をして子供が生まれると、生命保険の加入を検討します。『がん保険はまだいいかな…?』という方でも、生命保険は考える。なぜでしょうか?私も過去、10,000回以上の保険相談会に携わってまいりました。多くの方が、『自分に万が一があっても、家族の生活が困らないようにしたい』とおっしゃいました。

確率はどちらも低いが…

20代で亡くなる確率。これもやはり、80代と比べればかなり低いものになります。下の表は、2019年1年間、各世代の10万人当たりの死亡率です。先ほどのがんになる率の表と比べると、男性は死亡率の方が、女性はがんになる率の方が、高くなっています。

20~24歳25~29歳50~54歳55~59歳80~84歳85~89歳
男性50人50人3,000人4,800人58,700人106,600人
女性20人20人1,700人2,400人30,100人61,600人
出典:国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集2021 表5-6 性,年齢(5歳階級)別死亡率:1930~2019年」より抜粋し、著者が作成

20代の死因は?

高齢の方と比べると低い20代の方の死亡率ですが、一定の傾向がありますので確認しておきます。下の表は、2019年1年間、人口10万人当たりの、死亡原因上位5コと、その率です。病気を直接の原因とするケースでは、がん(悪性新生物)が最も多くなっています。

年齢帯第1位第2位第3位第4位第5位
男性20~24歳自殺:24.4人不慮の事故:7.7人悪性新生物:3.2人心疾患:2.4人先天奇形等:0.5人
男性25~29歳 自殺:22.8人不慮の事故:5.8人悪性新生物:4.4人心疾患:2.7人脳血管疾患:0.7人
女性20~24歳 自殺:10.1人 不慮の事故:2.6人 悪性新生物:2.1人 心疾患:0.7人 先天奇形等:0.7人
女性25~29歳 自殺:10.7人 悪性新生物:4.0人 不慮の事故:1.7人 心疾患:0.9人 脳血管疾患:0.5人
出典:国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集2021 表5-23 ,年齢(5歳階級)別死因順位:2019年」より抜粋し、著者が作成

がんを知ったうえで判断を

ご自身が万が一亡くなった時に、家族の生活が困らないようにしたい。そういう思いで生命(死亡)保険に加入するのですが、さきほどの死亡原因の表を見渡した時に、がんとそれ以外の原因で、ひとつ違うのでは?と感じることがあります。

それは亡くなるまでの時間と費用です。がんは、それが見つかった時に、すぐに命を奪われるという病気ではありません。同じ病気でも、心疾患や脳血管疾患で亡くなる場合は、わりと急性での発症で、病院についた時には手遅れであったというケースも多いです。一方、がんの場合、すでに自覚症状があるケースもありますが、その逆のケースもたくさんあります。そして、若い時であれば見つかった後、治療をしていくことになると思います。

仕事を休んで、治療をする。収入を失って医療費がかかる、それが長期化すると大きな負担となる。そんなケースがあるのが、がんの特殊性だと思います(※3)。

(※3) がんで経済的に大きな負担が出る場合については、過去の記事「がんの備え|意外と忘れられがちな、がんになってしまった時にも発生する普通のお金」を、是非ご覧ください

情報の備えは必須

すぐにがん保険に加入することを前提に、物を考える必要はないと思います。ただ、保険ではなく、まずはがんという病気を知ることは大切だと思います。80歳まで生きれば、かなり高い確率でがんになります。将来なるかもしれないのであれば、今知っておいて損はありません。

がんになってしまった時に、どのような治療があり、どのような状態になる可能性があり、また経済的にどのような影響があるのか、まずはそういった情報を得ておくことが大切だと思います。また、そういった情報に基づかなければ、適切ながん保険を選ぶこともできません。

生命保険検討時を大切に

まだ20代のみなさまも、社会人になった、結婚をした、子供が生まれたなど、様々なきっかけで、生命保険を考えると思います。できればその時に、保険に入るかどうかだけではなく、がんの情報も得ていただきたいと思います。日本では、そういった機会くらいしか、一般の人が、がんのはなしをする機会がありません。

是非その機会に、あなたの保険の担当者から、がん保険の商品情報だけではなく、がん治療の実態や、実は大事な日本の医療のルールなどについても情報を得て、正しいがんへの備えを作っていただきたいと思います(※4)(※5)。

がんと聞いて、がん保険商品の選択肢しか出せない人は、がんについて、しっかり学んでいない可能性があります。もし、はなしの内容が薄いと感じたならば、他でセカンドオピニオンをとってでも、正しい情報をとっておくことをおススメいたします(※6)。それくらい、事前にがんを学んでいるかどうかは、大きな違いだと思っています。それは、正しいがんの知識を持たずに、約9年間、がん患者の家族という立場を体験した、私の実感でもあります。

(※4) がん治療の実態については、過去の記事「がんの備え|私たちが日本でがんになってしまった時、選択肢となる『4つのがん療養』」を、是非ご覧ください

(※5) 実は大事な日本の医療のルールについては、過去の記事「がんの備え|がんと日本の医療のルールを知らないことにより、主治医とのミスコミュニケーションが生じる可能性があるというはなし」を、是非ご覧ください

(※6) 生命(がん)保険相談のセカンドオピニオンについては、過去の記事「がんの備え|『がん保険選びにもセカンドオピニオン』一番大切なことは、オトクながん保険選びではない、というはなし」を、是非ご覧ください

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