#27 がんになった時の4つの選択肢|がん保険のトリセツ|第2章 がんと治療のはなし
この第2章では、がんの治療などについて触れてきました。様々な選択肢の存在について見てきましたが、ここでそれらの情報を整理してみたいと思います。
その整理する作業を知ることは、実は非常に大切だと、私は考えています。実際あなたががんの診断を受けてしまった後、ネットにあふれる様々な情報を適切に仕訳するのに役立つと思っています。
目次
がんを治すための選択肢
万が一あなたががんの診断を受けた時、複数の治療を比較して、納得して選びたいと考えるかもしれません。仮に比較しないとしても、納得して決めるということは大切です。診断直後は、この選択から始まると言ってもいいと思います。
がんの治療法自体、研究段階のものも含めれば、無数にあると言えます。ただ、大枠では2つに分けられました。それは、標準治療かそれ以外か?ということです。あらためてそこを整理したいと思います。
標準治療
がん検診などからの流れでたどり着いた、がん治療を行う比較的大きな病院であれば、主治医の先生からは、3大治療を中心とした標準治療を提案されることが一般的です。これは、国が推奨する治療でもあります。
標準治療は、診療ガイドラインに記載されている治療です。診療ガイドラインには、がんの種類やステージごとに、患者さんに推奨されるべき治療が書いてあります。それは科学的根拠に基づいたもので、主治医の先生はそれをもとに治療を提案します。
標準治療以外の治療
標準治療は最も推奨される治療ではありますが、それを受けることは義務ではありません。選択肢は他にもあります。例えば、先進医療や自由診療です。
先進医療は、国が今後標準治療に組み込むかどうか、検討中の治療です。自由診療は、国は推奨していませんが、特定の医療機関で、その医師が独自の判断で提供している治療です。標準治療に比べると、科学的根拠に乏しいと言われています。
がんと共生するための選択肢
体の中にあるがんを叩く、消滅させることを目的に行う治療に対し、がんがあってもQOL(クオリティオブライフ:生活の質)を下げないための治療などもありました。
こちらも国が推奨する緩和ケアと、それに対し補完代替療法という、大枠で2つに分けることが可能です。これらは場合によって、がんを治すための治療と並行して行われることもあります。
緩和ケア
国は、がんの診断を受けた時点から、緩和ケアが提供されることを目指しています。ですから国のがん対策の具体的取り組みとして推進されています。
緩和ケアを早期に受けることで、治療による痛みや苦しさ、メンタル的な不安を早く取り除き、QOLを落とさない、国はそうして、がんとの共生を図りたいと考えています。
補完代替療法
こちらは、例として、健康食品やサプリメント、鍼灸(はり・きゅう)、マッサージ療法、運動療法、心理療法と心身療法なども含まれます。特に明確な定義は無いそうなので、がんに効くと謳っていれば、ここに含まれるとも言えます。
ただ、こちらは特に規制がされておらず、それを行う人が医師でないものも多数あります。体に良いのかもしれませんが、今行っているがん治療に悪影響を及ぼす可能性について、考慮する必要があります。
国が推奨することの意味
ここまで、標準治療、標準治療以外の治療、緩和ケア、補完代替療法と、4つの選択肢を再確認しました。先ほどは、治す治療とがんとの共生のための治療などという区分けで詳細を確認しました。
次は国が推奨しているかどうかという観点ですが、これで見ると
・標準治療と緩和ケア
・標準治療以外の治療と補完代替療法
に区分できます。
小さな自己負担割合と科学的根拠
国が推奨する標準治療と緩和ケアは、すべて健康保険証を使って受ける治療になります。すなわち、医療費は一部の負担で済むということです(一般的な現役世代であれば、3割負担で、一部所得により変わる)。
がんはお金が掛かると言われますが、標準治療や緩和ケアを受けている限り、比較的小さい経済的負担で、治療などを受け続けることができると言えます。また、健康保険が使えるということは、その治療効果も国が認めているということでもあります。
100%自己負担で自己責任
標準治療以外の治療や補完代替療法に関する費用については、すべてそれを提供する業者の言い値になります。当然ですが、健康保険証は使えません。例えば先進医療で代表的な、粒子線治療を受けると、300万円くらいの費用負担が生じると言われています。
また、治療効果について、それを提供する側は『がんに効く』などと謳っていますが、科学的根拠に基づいているのかどうか、実はあなた自身が調べる必要があると言えるかもしれません。
情報との接し方
がんを治すためか、がんとの共生を図るかという、治療を行う目的と、国が推奨しているかどうか(健康保険が適用かどうか)、この軸で区切ると、4つの選択肢ということになります。
そしてその4つを、どれかひとつ、場合によって複数組み合わせた選択をすることになります。ただ、ネットなど、がんの治療などに関する情報は無数にあります。軸を持っていないとあちこち振り回されて、とても大きなストレスになる可能性があります。
情報の出どころを知る
まず、がんの情報に触れた時、誰が発信している情報か確認し、4つの選択肢のどこに該当するものなのか、整理することが大切だと思います。その結果、国が推奨するものであれば、疑問があった時は主治医やがん相談支援センターに相談することができます。
一方、国が推奨していない分野は自分の判断になります。『末期がんが消えた』などといったキャッチコピーに目が行きますが、科学的根拠
何人がそれを行い、何人に効いたのか?
などの疑問を持つことが大切だと思います。
納得して判断を
がんの分野は、まだまだ現在進行形で研究が行われています。すなわち、まだまだ分からないことがたくさんある、標準治療は国が推奨するものですが、まだ完全に確立された治療ではないと言えるのかもしれません。
ですから、万が一あなたががんになってしまった時、その時点の最新の情報に触れて、納得して選択することが大切だと思います。そのために情報を整理する力をあらかじめ持っておくことが重要だと、私は考えています。
最後に…
がんの告知を受け、メンタル的なダメージを負う中、様々な情報に触れて、納得して最適な選択をする。あなたの命や健康がかかる中、それを冷静に行うことは、簡単ではないかもしれません。
ですからがんの備えとは、治療選択という重要な場面で、冷静に対応できるための準備を含めて、初めて成り立つのだと思います。そしてそれはがん保険に入るだけでは決してできない、私はそう考えています。
是非、あなたのがん保険の担当者が、治療選択の場においても、サポーターであることを願っています。
次回は『#28 セカンドオピニオンの活用』というタイトルでお話ししたいと思います。今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
◇◆◇補足◇◆◇
このがん保険のトリセツは、1つのコラムでの文章量は少なめに抑え、要点だけをお伝えするようにしています。内容について、もう少し詳しく知りたいと思われた方は、是非関連する別のコラムもお読みください。
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