#20 先進医療は夢の治療?|がん保険のトリセツ|第2章 がんと治療のはなし

みなさまは『先進医療』という言葉を耳にしたことはあるでしょうか。このコラムは、がん保険に加入している方へ向けて書いています。がん保険に加入する際に聞いたことのある方も多いかと思います。

またがん保険などの中に、先進医療に関する保障がついている方も多くいらっしゃるかもしれません。ただ、この先進医療、どのような位置づけのものか、正しく説明を受けましたでしょうか。

先進医療のイメージ

先進医療という名称、何かとても良い響きの言葉です。最先端で今までの治療法よりも高度な技術が用いられ、治療効果も高い。そんなイメージではないでしょうか。

また、がんの先進医療については、たまにテレビの特集でも取り上げられたりして、それをご覧になって、すごい治療という印象を持たれている方もいらっしゃるかもしれません。

不可能を可能にしてくれる?

先進医療は、最先端の治療で、今までの治療法では治すことができなかった病気を治してくれる、夢の新しい治療。

私もがんを学ぶ前はそのようなイメージを持っていました。ところが先進医療、そういう治療ではないようです。

末期がんを治してくれる?

がんに関して言えば、例えばがんが進行して最末期の状態。標準治療もやり尽くしてしまい、これ以上治療の手段がないと主治医から宣告された時、先進医療が救ってくれる。

そんなイメージも湧きそうですが、先進医療はそのような治療ではないようです。もちろん今後そういった治療が開発される可能性はゼロではありませんが…。少なくとも先進医療、魔法のような治療ではないということが言えると思います。

先進医療の定義

保険診療として認められていない医療技術の中で、保険診療とすべきかどうかの評価が必要であると厚生労働大臣が定めた治療法(評価療養)です。効果や安全性を科学的に確かめる段階の高度な医療技術で、実施できる医療機関が限定されています。

これは、国立がん研究センター情報サービスに掲載されている、先進医療に関する説明書きです(2022年7月17日現在)。専門家の表現なので、少し理解するのが難しいかもしれません。分解して見ていきたいと思います。

標準治療に入れるか検討中

まず前段ですが、先進医療は、国がその治療を今後健康保険適用にするかどうか検討しているという意味です。がんに関して言えば、健康保険適用にして、標準治療に組み込むか検討していると言えます。

健康保険適用になると、すべての国民が小さな自己負担で受けられるようになります。それに見合う治療効果があるかを国は判定するために、現時点では先進医療という指定をしています。

データ取りの実験治療

そして後段ですが、国が判定するためには何が必要でしょうか。これはシンプルに、実際その治療を患者さんに行った後の結果、つまり判断材料となるデータということです。

その治療を行って、今の標準治療より治療効果が高かったのか、それとも治らなかったのか。もしくは、副作用が出たのか出ないのか。そういったデータを集めて、国が判定するために先進医療は行われています。

月に一度検証される

それらの治療について、毎月厚生労働省の主催で、医療関係の専門家が集まり、『先進医療会議』が開催されています。

2022年6月1日時点、83種類の治療法が先進医療に指定されていますが、これらの結果の評価をしたり、また新しい治療法を先進医療に加えるかどうか検討されています。ちなみに議事録は厚労省HPで公開されています。

先進医療から外されることも

がんの先進医療は、今後健康保険適用にして、標準治療に組み込むかどうか判定をしています。良い結果が得られて、標準治療になっていく治療ももちろんあります。

一方、がん患者さんに対し、数多くの治療を行ったが、標準治療よりも高い治療甲が得られなかったため、先進医療の指定から外されていく治療もあります。

保険適用になるのは6%程度

昨今、様々な分野で技術はどんどん進歩していると感じます。もちろん医療の世界でも同じことが言えるのだと思います。ただし、新しいものすべてが採用されているかというと、そうではありません。

私たちが目にするのは採用されたものだけです。その陰には多くの不採用のものがあります。実際先進医療においても、最終的に健康保険適用となる確率は6%程度とも言われています。

自由に受けられない

今まで見てきたとおり、先進医療の中にも、結果として良い治療と判定されるものもあります。ですから、万が一あなたががんになってしまった時、受けてみたいと思う治療があるかもしれません。

ですが、先進医療は国が指定して、厳密な管理のもと行っています。実は受けるためには、決して低くないハードルがあります。

細かい条件がある

先ほどお伝えしたとおり、先進医療はデータを取るための治療です。受ける患者さんの条件がバラバラだと、治療効果に関する正確なデータが取れないという問題があります。

ですから、同じがん患者さんでも、がんの種類、がんのステージなど様々な条件が指定されており、それに合っていないと基本的に受けることができません。

費用は全額自己負担

先進医療は、まだ健康保険が適用となっていない治療です。ですから、費用はすべて患者さん負担です。治療の種類によっては、数百万円の負担が発生するものも存在します。

また、先進医療は国が指定した医療機関でしか受けることができません。場合によって受けるために、高額な交通費や宿泊滞在費用が発生する場合があります。

今回触れた先進医療。言葉から受けるイメージとは少し違いますし、標準治療との位置づけも違います。ただし、先進医療は一定の期待があるから先進医療として検証がされています。

場合によって、あなたががんになってしまった時に、ひとつの選択肢となる可能性も無いとは言えません。でもその存在を知らなければ、選択肢とはなりません。もしあなたがこの存在を、治療を受けた後に知ったらどう感じるでしょうか。

ですからがんの備えとは、この治療選択の瞬間に、適切に対応できるための情報の準備も含めて成り立つものだと思っています。そしてそれはがん保険に入るだけでは決してできない、私はそう考えています。

是非、あなたのがん保険の担当者が、がんの情報に関するサポーターでもあることを願っています。

次回は『#21 粒子線治療のメリット』というタイトルでお話ししたいと思います。今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

◇◆◇補足◇◆◇

このがん保険のトリセツは、1つのコラムでの文章量は少なめに抑え、要点だけをお伝えするようにしています。内容について、もう少し詳しく知りたいと思われた方は、是非関連する別のコラムもお読みください。

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