がん保険の選び方|『リビングニーズ特約が、がん保険に!』入っている生命保険をよく理解しておく大切さ、というはなし

結婚をして子供が誕生した場合などに、両親のどちらか(もしくは両方)の死亡時の保障として、生命(死亡)保険に加入する方も少なくないと思います。突然の事故などで、自分の身に万が一のこと(死亡)があったら、まだ幼い子供の生活が困窮してしまう、そんな思いで加入するのだと思います。

そのようにして生命(死亡)保険に加入した方が、万が一がんになってしまった場合「自分は死亡保険しか加入していないから、保険からはお金は出ない…」というような思いをされる場合もあると思います。ただ、死亡時のための生命保険ですが、実は一定の要件を満たすと、生きている間にお金を受け取れる場合があります。一般的に多くの生命(死亡)保険には『リビングニーズ特約』というものが付加されているからです。

契約時には、説明を受けたであろうリビングニーズ特約、ただ時間の経過とともに記憶は薄れていってしまいます。ただしがんの場合、この存在を覚えておくと、がんが最末期まで進行した際に助けになる場合があります。

そこで今回は、その『リビングニーズ特約』とは何か、そしてどのような時にお金を受け取れるのか、について、一緒に見ていきたいと思います。

まさに今、『あなたのがん保険の内容をチェック』しようとしているあなたへ、お届けしたいはなしです。

死亡保険が、がん保険になる『リビングニーズ特約』

死亡した際に、家族に一定のお金を残してあげるための死亡保険。ところが、一定の要件を満たすと生前に自分がお金を受け取ることができる、それが『リビングニーズ特約』です。

もちろん自分で受け取ってしまったら、その後亡くなった時には家族にお金を残すことはできません。ですからあくまでバックアップ、最後の砦というようなイメージを持っておくといいかもしれません。

余命6ヶ月の診断

リビングニーズ特約が対象となる一定の要件ですが、それは医師からの『余命6ヶ月の診断』です。医師からその診断が出ると、その時点で保険会社に請求をすることができます。

余命6ヶ月の診断が要件のため、がんかどうかは問いません。ただ日本人の死因の1位は40年以上前からがんです。ですからがんにおいてその診断がでることが一般的には多いといえるかもしれません。そういった意味でがん保険ではないのですが、がんの備えにもなっているととらえることができます。

3000万円まで非課税で受け取れる

リビングニーズが適用となり受け取るお金ですが、金額は3000万円までという制限があるのが一般的です。例えば5000万円の生命保険に加入していたケースでは、3000万円をリビングニーズで受け取り、残りは死亡保険として残るという形になります。もちろん500万円だけ請求したいということも可能です。しかも受け取った金額は税金がかからない(非課税)のため、何か差し引かれることはありません

余命6ヶ月なので、一般的には在宅医療や介護などの費用に困るケースで助かるというイメージかと思います。先に受け取って、サポートしてくれる家族などに渡しておければ、その家族も経済的な不安が消えて安心できるかもしれません。また、体調が良ければ何か家族での思い出作りなどに使うといったこともあるかもしれません。

がんでは余命宣告が行われることがある

がんでは最末期の状態になり、かつできる治療をやり尽くしてしまうと、主治医から「もうこれ以上治療の手段がありません」と宣告され、在宅での緩和ケアなどへの移行を勧められることがあります。

これを医師から見捨てられたととらえる方もいるようですが、これ自体は日本の医療のルールなので仕方がありません。そしてこのタイミングで、3ヶ月、半年といった余命宣告が行われることがあります。

当たらないことも多い

この医師からの余命宣告ですが、過去の同じような状態の患者さんのその後のデータなどから医師の判断で出されるものですが、余命6ヶ月だからといってすべての患者さんが6ヶ月後にピッタリ亡くなるということはありません。

がんの最末期の場合、容態が急変することもあるので半年よりも早くお亡くなりになる方もいらっしゃいますし、2年3年とご存命の方もいらっしゃいます。半年以上生きたからといって、リビングニーズから受け取ったお金を返す必要はありません

こんな話しも…

私はがんに関する書籍を様々購入して読んでいるのですが、その中にこんな話しがありました。『バカの壁』で有名な養老孟司先生が、その著書のなかで、余命についてこのようにお話しされています。

僕の後輩の末期医療の放射線科医が、「先生の頃の余命はせいぜい一年と言っていたんじゃないですか」と聞くから、「そうだよ」と答えると、「今は六ヶ月です」と言う。なぜかと言えば、「一年と言って六ヶ月で死んだら医者が悪いみたいじゃないですか。だから短めに言うんです。最近は六ヶ月が三ヶ月になって、そのうち明日と言うようになりますよ」だって。

出典:「孟司と誠の健康生活委員会」 著者:養老孟司 近藤 誠 発行者:飯窪成幸 発行所:株式会社 文藝春秋

人間の身体はデジタルでできていませんから、余命はあくまで参考程度にとらえるといいのだと思います。ですから、医師の見立てよりも長く生存することも十分考えらえるので、リビングニーズで受け取ったお金の使い方も慎重に決めた方が良いのかもしれません。

最末期になった際のお金の使い道

がんが最末期になり、かつ主治医からこれ以上の治療手段がないと伝えられた際、どのような選択を取るかは、患者さんにより分かれます。もう治すことは考えず、穏やかにその後の日々を過ごすという考えもあれば、主治医以外のところで何か治療の選択肢を探し、あらゆる手段を使って最後まで治すことを考えると考える方もいらっしゃいます。

リビングニーズ特約のメリットのひとつに、使い道自由ということがあります。あくまで『余命6ヶ月の診断』だけがお金を受け取る条件なので、その後について保険会社から何か求められることはありません。

もし死亡時の家族への保障がそれほど重要でない場合には、自分自身で考えて判断ができる状態のうちにまとまったお金を受け取り、それを何か有意義に使っていくという選択が可能です。

ゲノム医療の誕生

そんな中、手術・放射線治療・抗がん剤治療の3大治療が主流のがん治療において、新しい選択肢も出始めています。もともと研究されていたものではありますが、数年前から一部が健康保険適用となった、ゲノム医療というものがあります(※1)。

これは、遺伝子検査を行い、どの遺伝子の異常によりがんが発生しているかを確認し、それがわかったら、その遺伝子の異常に効果のある治療薬を世界中から探し、見つかったらその薬で治療を行っていくというものです。もともと研究段階においても受けることはできたのですが、健康保険がきかないため、検査だけで100万円近くの費用が掛かり、その後の薬代も高額になるということがありました。

その遺伝子検査に関しては、一部が健康保険適用となったため、標準的な治療をやり尽くしたがん患者さんのその後の選択肢になりつつあります。ただし、検査後の薬の費用は、引き続き健康保険適用外の可能性があるため、治療を行う場合は高額の費用を想定しておく必要があります。こういったケースにおいて、リビングニーズで受け取ったお金を活用するといったこともあるかもしれません。

※1 遺伝子治療については、過去の記事「がんの備え|『がんゲノム医療に対応するがん保険』今抗がん剤治療保障に動きを起こしつつある、がん治療の変化、というはなし」を、是非ご覧ください。

残りの人生を楽しむ

がんの最末期と言っても、すべてのがん患者さんが痛みがひどくて寝たきりかというと、決してそうではありません。全身にがんが転移していても、普通に日常生活を送れている方もたくさんいらっしゃいます。

痛みがないのであれば、自分のやりたいことを思う存分楽しむという選択もあります。リビングニーズのお金を家族に残さなくても支障のない方は、やりたかったことをしたり、家族で思い出作りをするために、そのお金を使うという選択もあるのかもしれません。

今すぐ加入中の保険をチェック!

リビングニーズ特約は、該当するからといって必ずしも請求する必要はありません。当初の目的どおり、家族のために残す選択をすることも可能です。大切なことは、リビングニーズで生前に受け取れるという選択肢があることを知っておくということです。

いつがんになるかもわからないですし、がんになった時の経済的状況は元気なうちにはわかりません。できればがんになってしまった時に、リビングニーズを使うかどうか迷わなくていい状態であることが大切だと思います。もしあなたが、ご自身の保険にリビングニーズ特約があるかどうか、記憶が薄れているようであれば、すぐにチェックすることをおススメいたします。

知らないと使えない

万が一がんが最末期まで進行し、主治医から余命6ヶ月の宣告を受け、さらにその時経済的に厳しい状況に追い込まれてしまった時。あなたが加入してる保険の中に、リビングニーズ特約があるにもかかわらず、その存在を知らなければ使うことはできません

保険会社はお客様サイドが請求してこない限り、支払いをすることはありません。ですからあなたが加入している保険の使い方は、良く押さえておくことが大切だと思います。もし、お亡くなりになった後に、そのご家族がリビングニーズ特約の存在を知ったとしたら、どのように思われるでしょうか

やはりがんを知ることから

今回のリビングニーズ特約も、がんの備えのひとつの手段ではありますが、それを活用するような場面についてイメージすることができなければ、その大切さを認識することは難しいと思います。それをするためには、やはり保険の前に、まずがんを知ることが必要だと思います。

是非、生命(がん)保険の相談の機会に、あなたの保険の担当者からがんに関する保険の商品情報だけではなく、がん治療の実態や実は大事な日本の医療のルールなど、実際がんになってしまった時の映像が浮かぶ情報を得ながら、正しいがんへの備えを作っていただきたいと思います(※2)(※3)。

がんと聞いて、がん保険商品の選択肢しか出せない人は、がんについてしっかり学んでいない可能性があります。もし、はなしの内容が薄いと感じたならば、他でセカンドオピニオンをとってでも、正しい情報をとっておくことをおススメいたします(※4)。それくらい、事前にがんを学んでいるかどうかは、大きな違いだと思っています。それは、正しいがんの知識を持たずに、約9年間、がん患者の家族という立場を体験した、私の実感でもあります。

(※2) がん治療の実態については、過去の記事「がんの備え|私たちが日本でがんになってしまった時、選択肢となる『4つのがん療養』」を、是非ご覧ください

(※3) 実は大事な日本の医療のルールについては、過去の記事「がんの備え|がんと日本の医療のルールを知らないことにより、主治医とのミスコミュニケーションが生じる可能性があるというはなし」を、是非ご覧ください

(※4) 生命(がん)保険相談のセカンドオピニオンについては、過去の記事「がんの備え|『がん保険選びにもセカンドオピニオン』一番大切なことは、オトクながん保険選びではない、というはなし」を、是非ご覧ください

Follow me!