がん保険の選び方|『がん保険は4つの保障の組み合わせ』その基本を押さえて適切な選択を、というはなし
日本に暮らす人の約40%ががん保険に加入していると言われています(※1)。多いか少ないかの判断はそれぞれだと思いますが、5,000万人くらいの人が、がん保険に加入していることになります。
がん保険のパンフレットを見ると、がんの治療などに関する様々な保障があることがわかります。がん治療の実態に関する説明書きなどもあり、どれもこれも必要な保障のように思えます。ただ、手当たり次第に保障を広げていくと、当然ですが毎月の負担(保険料と言います)も大きくなり、保険加入で家計を圧迫という、本末転倒な事態になってしまいます。
様々な保険会社で販売されているがん保険の保障内容ですが、大きく分けると4つのタイプに分類でき、その4つのタイプの組み合わせで、様々な商品が作られていると、私は思っています。
そこで今回は、一般的ながん保険で、4つに大別される保障のタイプとその特徴、がん保険を選ぶにあたってどの保障を重視したらよいかについて、一緒に見ていきたいと思います。
まさに今、『がん保険のプランに迷っている』あなたへ、お届けしたいはなしです。
(※1) がん保険の加入率については、過去の記事「がんの備え|『がん保険の加入率』他人は関係ないけれど、参考程度に見ておこう、というはなし」を、是非ご覧ください。
目次
がんの治療を受けたか?がんの診断を受けたか?
がん保険で4つに大別される保障のタイプですが、特徴別にもういちど分けると、さらに2つに分類できます(※2)。ひとつは、治療を受けたことに対してお金を受け取ることができるもので、もうひとつが、がんになってしまったことに対してお金を受け取れるものです。
一般的に、『がんになった⇒治療を受ける』というイメージもあるかもしれません。ですから、治療を受けたか、がんになったかで受け取ることに、違いを感じないかもしれませんが、ここは大きな違いであると、私は考えています。
※2 特徴別の2つの分類については、過去の記事「がんの備え|『がん保険、一括前払い? or 都度都度事後払い?』どちらのタイプ?それとも…?というはなし」または「がんの備え|取扱い注意!がん保険には、2種類ある。その選択次第で、がんになった時の備えが変わってくるというはなし」を、是非ご覧ください。
治療に対する、3タイプ
治療を受けたことに対してお金を受け取れるタイプのものですが、代表的なものとして以下の3つがあります(※3)。
① がん入院給付金
② がん標準治療費用給付金
③ がん治療費用給付金
①は、がん治療のために、入院をした場合に、入院1日あたり、10,000円などという形で、お金を受け取れるものです。
②は、がんの3大治療と言われる、手術、放射線、抗がん剤の治療を、健康保険適用で受けた場合に、1回10万円などといった形で、お金を受け取れます。
③は、②の保障と似た形ですが、健康保険が適用かどうかは問わないタイプで、高額になりやすい治療にも対応してくれるタイプです。③のタイプは、最近のがん治療の変化に応じて、ここ数年で多くなってきている印象があります(※4)。
※3 それぞれの保障の名称については、タイプを分類するために著者がつけたものです。実際のがん保険商品により、その名称は違う場合があります。
※4 最近のがん治療の変化については、過去の記事「がんの備え|『がんゲノム医療に対応するがん保険』今抗がん剤治療保障に動きを起こしつつある、がん治療の変化、というはなし」を、是非ご覧ください。
診断ベースは、1つ
もうひとつの、がんになってしまったことに対してお金を受け取れるタイプのものですが、これは
診断給付金(※5)
といった名称で、がんの診断が確定した時点で、お金を受け取れるという、非常にシンプルなものです。その後どんな治療を受けるのか、もしくは治療は受けないのか、にかかわらず、診断があればお金を受け取れる、使い道自由のがんのお金になります。
医師からがんの告知を受けたら、100万円などといった一時金を受け取れるものが一般的で、この点については、がん保険商品による違いはあまりないと、私は思っています。
また、治療を受けたことに対する保障と比べて、受け取れる早さが違う(場合によって治療前に受け取ることも可能)点が特徴で、シンプルで、かつ早いという良さがあると、私は思います。
※5 診断給付金という名称は、がん保険商品によっては、違う名称の場合があります。
現場をイメージして判断を
どのがん保険がおススメか?ということは、多くの方が気になるところだと思います。ネットでの口コミやランキングなどを参考にされている方もいらっしゃると思います。ただし、何を重視するかによって、選ぶがん保険は変わってくるのかもしれません。
ですから、実際がんになってしまった時に、どのようなシナリオになるかをイメージしながら、検討することが必要だと思います。そういったことから私が重視するのは『シンプルイズベスト』ということです。
保険で一番合ってはならないことは、お金を受け取れると思って請求したら
『支払対象外です』
と言われることです。がんというメンタル的にも大きなダメージを受ける病気、またがんのために入っていたがん保険で、お金を受け取れないということが起きないがん保険が、私はおススメです。
がん治療の実態の変化
治療を受けたことに対してお金を受け取れるタイプのうち、『① がん入院給付金』ですが、今がん治療のための入院日数は、以前と比べ短くなってきています。このタイプは、入院日数が長引いた時に、そのありがたみが得られるタイプです(※6)。
『② がん標準治療費用給付金』に関しては、今でもがん治療の主力の治療に対応しているので、基本的にお金を受け取れる機会は多いのかと思います。ただし、健康保険が適用となる治療をやり尽くしたのちには、この保障は出番がなくなるかもしれません。
『③ がん治療費用給付金』は、今のがん治療においては、あらゆる治療に対してお金を受け取れる可能性があります。ただし、がんは今もわからないことが多く、世界中で研究が行われています。今後、新しい治療が出てきた時に、そこに対応できるかどうかはわかりません。
がん保険は、加入した後にその保障内容が変わることは、一般的にはありません。裏を返すと、時代の変化に対応はできないということが言えるかもしれません(※7)。
※6 がん保険の入院給付金については、過去の記事「がんの備え|『がん保険の入院給付金』時代とともに、出番が少なくなってきている、というはなし」及び「がんの備え|『がん保険の入院給付金』入院は短期化傾向も、全てが短いわけではない、というはなし」を、是非ご覧ください。
※7 がん保険が時代の変化に対応できない点については、過去の記事「がんの備え|『がん保険の見直しは必要?』見直しはしなくても、見つめ直しは必須、というはなし」を、是非ご覧ください。
治療に影響されない
がんの診断を受けたことに対して、お金を払ってくれる、『がん診断給付金』と言われる保障。これは、その後どのような治療を受けるかどうかは問われません。つまり、悩まなくて良いがん保障です。
しかも治療を受ける前に、お金を受け取れることが確定するので、治療に前向きに向かうことができるのではないでしょうか。こういったシンプルさが、がん治療の備えにおいては、大切なのではないでしょうか。
診断給付金にも注意は必要!
シンプルながん診断給付金にも、やはり注意点はあると思います。特に再発や転移などで、がん治療が長期戦になった時には、選んだがん診断給付金によって、その明暗が分かれる場合があります。
がんで経済的に非常に厳しくなるのは、治療が長期になったケースです。そして保険の役割とは、そういった本当につらい時に助けになることだと、私は考えています。そのようなシナリオで力が発揮される保障を持っていただきたいと思います。
支払い回数とその要件
がん診断給付金は、初めての診断でお金を受け取った時、それで保障が終了するものと、再発・転移の際に、再びお金を受け取れるものに分かれます。最近は、回数無制限というものが増えてきています。
また、複数回受け取れるタイプにおいても、1年に1回、2年に1回など、その条件はがん保険商品によって違いますので、よく比較をして実際にがんになってしまった時に、少しでも助けになるものを選んでいただきたいと思います。
がん保険は、がん治療費の備え
また、私は過去にがん保険の相談を受けた際に、お客様へ意識してお伝えしていたことがあります。それは、がん保険はあくまで、がんの治療費に対する保障だということです。
がんとの戦いが長期戦になった場合、薬の副作用などから、仕事の継続が困難となり、収入を失ってしまうケースがあります。その時の収入保障の役割は、がん保険では難しいというのが、私の考えです。そこはそこで、別に備えを考える必要があると、私は思っています(※8)。
※8 がんにより、収入を失ってしまうケースについては、過去の記事「がんの備え|意外と忘れられがちな、がんになってしまった時にも発生する普通のお金」を、是非ご覧ください。
『がんの備え』は『がんを知ること』
先ほど、『実際がんになってしまった時に、どのようなシナリオになるかをイメージしながら、検討することが必要』ということを述べました。ただ、がんのこと、がん治療の実態、がんになった時の生活への影響などを知らなければ、それはできません。
がん保険は、毎月費用(保険料と言います)を負担して加入するものです。それを考えると、その選択は慎重でなければなりません。そのためには、多少時間がかかりますが、まずはがんを知ることから始めなければならないのかもしれません。
がんの備え=がん保険は、危険
がん保険に入っているから、がんは安心と思っている方がいらっしゃいます(※9)。ただ私は、がん保険は、あくまでがんの治療費のための保険だと捉えています。
先ほど少し触れた、収入を失ってしまうケースを保険でカバーするとしたら、それはがん保険では難しいと私は思いますので、そこに対しては違う保険の選択肢をお示ししてきました。
※9 『がん保険に入っているから、がんは安心』については、過去の記事「がんの備え|『がんは若い時に、会社で終身保障のがん保険に入っているから安心なんだ!』とおっしゃったお客様との出会い」を、是非ご覧ください。
がん保険相談を大切に
がんはお金が掛かる病気だと言われますが、ただお金だけたくさんあれば、それですべて解決するかというと、そうではないと、私は思います。
是非、生命(がん)保険の相談の機会に、あなたの保険の担当者から、がんに関する保険の商品情報だけではなく、がん治療の実態や、実は大事な日本の医療のルールなど、実際がんになってしまった時の影像が浮かぶ情報を得ながら、正しいがんへの備えを作っていただきたいと思います(※10)(※11)。
がんと聞いて、がん保険商品の選択肢しか出せない人は、がんについて、しっかり学んでいない可能性があります。もし、はなしの内容が薄いと感じたならば、他でセカンドオピニオンをとってでも、正しい情報をとっておくことをおススメいたします(※12)。
それくらい、事前にがんを学んでいるかどうかは、大きな違いだと思っています。それは、正しいがんの知識を持たずに、約9年間、がん患者の家族という立場を体験した、私の実感でもあります。
(※10) がん治療の実態については、過去の記事「がんの備え|私たちが日本でがんになってしまった時、選択肢となる『4つのがん療養』」を、是非ご覧ください
(※11) 実は大事な日本の医療のルールについては、過去の記事「がんの備え|がんと日本の医療のルールを知らないことにより、主治医とのミスコミュニケーションが生じる可能性があるというはなし」を、是非ご覧ください
(※12) 生命(がん)保険相談のセカンドオピニオンについては、過去の記事「がんの備え|『がん保険選びにもセカンドオピニオン』一番大切なことは、オトクながん保険選びではない、というはなし」を、是非ご覧ください
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