#35 がんのお金は治療費だけ?|がん保険のトリセツ|第3章 がんとお金のはなし

がんはお金が掛かる病気。がんが身近でない方でも、そういった認識を持っていらっしゃるかと思います。実際治療が長期化すると、治療費累計額は高額になりがちです。

しかしがんに備える場合、がんの治療費だけにフォーカスしてプランを考えてしまうと、実際がんになってしまった時に、お金の面で困ってしまうことがあります。

生活費への影響

前回触れたとおり、がんの治療が長期化すると、薬の副作用などの影響で仕事ができなくなる可能性があります。

その際、会社員の方などは、傷病手当金という保障を受けることができます。ただし、その保障も今までの収入全てをカバーできるわけではありません。

最もシビアなケース

厚生労働省の調査によると、がん患者さんの約20%は退職・廃業しており、そのうちの約60%は復職していないということです。

つまり傷病手当金終了後は、収入がゼロになります。あなたの月の生活費の額を想像してみてください。それの1年分。それだけで、がん治療費累計額を超えるかもしれません。がんで本当に備えるべきは、このケースだと私は考えています。

お金を理由に治療を断念

がん患者さん全体で、約5%の方がお金を理由に治療を変更、または断念しているという調査結果があります。治療を受ける前に、日常生活での費用が必要です。

日々の生活費がまかなえなければ、治療にお金を回すことができません。がん保険加入時に、手術、抗がん剤治療、先進医療といった治療の話題しか出ていなかったとしたら、今の備えのあり方を見直すことをおススメいたします。

がん保険はアテにできない

がんのお金の備えなので、がん保険があれば備えられるのではないか、と思われる方もいらっしゃるかと思います。

ただ、がん保険は、がんで収入を失ったことに対する保障には、あまり適さない保険であると、私は考えています。

治療費の保険

全てではないですが、がん保険はがんの治療を受けたことに対してお金が支払われます。治療を受ければ治療費が発生しますから、がん保険から受け取るお金は、基本的には治療費に充当されることになります。

そもそもがん保険は、原則がん治療費に対する備えの保険ですから、がんで発生するお金すべてを助けてくれるわけではないと認識しておくことが大切です。

他の収入源か他の保険

がんで収入を失った場合には、副業や今まで働いていないかった家族が働くなど、別の収入源を作ることがひとつの手段。ただし、こちらもすぐに作ることは簡単ではないため、あらかじめ準備・検討しておくことが必要だと思います。

万が一に備えて保険でカバーしたい場合には、一部のそれにふさわしいがん保険、若しくはがん保険以外で、がんになった時の生活費に対する備えとなる保険に加入しておく必要があります。

ライフプランへの影響

がんのお金に対する備えをしないままがんになってしまい、万が一収入を失うシナリオになってしまうと、将来に対しての計画を大幅に修正しなければならない可能性が出てきます。

ここでは、夫婦小さな子供ありというファミリー世帯での、代表的な影響について確認しておきます。実際は、それぞれの人ごとに考えがありますので、自分に合った備え方を考える必要があります。

マイホームや教育資金

ファミリー世帯において、現役時代の大きな資金を要するものに、マイホームや教育資金があります。どちらも事前にある程度まとまった資金を準備しておく必要があります。

収入を失うことで、住宅ローンが組めなくなる恐れもありますし、教育資金が準備できなければ、借り入れに頼るか、もしくは進学を断念するといった話しがでてきます。

家族のセカンドライフ

また自分だけでなく配偶者も含めたセカンドライフの準備も、先ほどのマイホームや教育資金の準備をクリアして、別にあらためて準備する必要があります。

収入を失うことで、目の前の生活はもちろんですが、その先の将来にも大きな影響を与える可能性があることを、がん保険検討時にあなたのがん保険の担当者から聞いたかどうか、是非振り返ってみてください。

ここの想定がなければ要注意

万が一がん保険検討時に、このシナリオについて想定がされていないということであれば、一度考える時間をとっていただきたいと思います。

保険で一番あってはならないことは、期待していたものと実際が全然違うということです。がんに関して言えば、がんになった時のお金は安心だと思っていたのが、実際全く足りなかった、となることだと思います。

収入減と出費増の数値化

がんを含め、保険を考えるということは、実際に起きてしまった時に、どのくらい収入が減るのか、そしてどのくらい出費が増加するのかということを、数値化することが第一歩です。

そして一番厳しい想定で収支を計算し、赤字になるのかどうか、貯蓄が減ってしまうのかどうかを整理して、事前準備すべき金額を算出します。

今の時点の準備額と比較

がんになってしまったことで失われる(消費される)金額がどの程度か算出できたら、それに対して今の時点でどの程度、自由に使える資金が準備されているか確認します。

また、退職で現在の仕事の収入を失った時に、別に確保されている収入減があるかどうかも確認します。それらを総合的に差し引きし、保険でカバーすべき金額が初めて算出されます。

最後に

このコラムは、がん保険に加入している30~40代の方を対象に書いています。まだ現役時代の前半と言える方たちですから、必ずしも潤沢な貯蓄ができていない可能性があります

ですから、そういった時期の方ほど、がん保険などのプランニングの仕方には、細心の注意深さと、生活費にまで影響が出る可能性など、正確な情報が必要です。

ですからがんのお金の備えとは、がん治療費だけではない、あらゆる費用に対応できるための準備を含めて、初めて成り立つのだと思います。そしてそれはコスパの良いがん保険に入るだけでは決してできない、私はそう考えています。

是非、あなたのがん保険の担当者が、あなたのライフプランにおいても、サポーターであることを願っています。

次回は『#36 実はいろいろある公的保障』というタイトルでお話ししたいと思います。今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

◇◆◇補足◇◆◇

このがん保険のトリセツは、1つのコラムでの文章量は少なめに抑え、要点だけをお伝えするようにしています。内容について、もう少し詳しく知りたいと思われた方は、是非関連する別のコラムもお読みください。

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