がん保険の選び方|『保険料払込免除』がんになってもお金をもらわない、そんな保険のはなし

生命保険には、基本の保障に加えて、さまざまなオプション(特約といいます)を追加して、保障を手広く、手厚くすることが可能です。今回は、がんへの備えになるが、お金を受け取ることのないオプション、『保険料払込免除特約』について、触れてみたいと思います。

がんの診断を受けたら、来月からお金を払わなくて良い

この保険料払込免除特約は、がんの診断を受けてしまったら(※1)、今後、保険会社に毎月お金(保険料といいます)を払わなくていいですよ、という一風変わった保障です。一般的な保険とは、死亡した、入院した、がんの治療を受けたなど、指定された条件に該当したら、保険会社にお金を払ってもらうものです。ですが、この特約は、毎月の家計負担に目を向けた保障になります。

※1 保険料免除の条件は、保険会社によって違います。がんだけでなく、特定(3大)疾病が対象など、違いがありますので、個々の条件については、保険会社HPなどをご確認ください。

家計負担を減らしてくれる

保険に加入する時、例えば

・死亡してしまったら、家族の生活費が…
・入院してしまったら、高額な入費の負担が…
・がんになって、治療費が大変だ…

といった、具体的な状況をイメージして、保険の種類を選ぶと思います。ただ、がんになって、今まで、毎月保険会社に払っていたお金(保険料)が、払えなくなるかもしれない、という点について、イメージすることはあるでしょうか。なかなかイメージしづらいかもしれません。

この特約は、そこを助けてくれる保険なのです。基本の保険契約の保険料に対する保険なので、オプション(特約)という形態でしか存在しません。

仕事への影響もある

もともと仕事をしていた人で、がんになってしまった方のうち、約20%の方が、退職をしています(※2)。しかもそのうちの、50%以上の方が、治療開始前に退職をしています。退職をすれば、収入を失います。退職理由はそれぞれだと思いますが、なかには、がん診断からの動揺や不安で、早まって退職をしてしまった方もいらっしゃるようです。

がんの診断を受けると、メンタル的なダメージを受けます。場合によって、治療前に、うつ症状や、適応障害などの症状が出る方もいらっしゃいます。そういった時、預貯金の状況や、仕事のことなど、冷静な判断ができず、突然無収入状態に入ってしまうことがあるのも現実です。

がんになった時のために加入していたがん保険。ところが、がんになって収入を失い、毎月の保険料支払いが厳しくて、がん保険を解約。そんなシナリオもあり得るのです。

※2 出典:厚生労働省委託事業「平成30年度患者体験調査報告書」(国立がん研究センター)

死亡保険、医療保険、がん保険、がんになっても、毎月の支払いは続いていく

保険料払込免除特約がなければ、がんになっても、毎月の保険料支払いは変わらず続いていきます。ただ、がん治療しながら、仕事も今までどおりこなせれば、収入が減ることはありません。がんが早期発見できた段階であれば、冷静に対応することで、それも可能であると思います。その時は、がん治療費の分だけ毎月の出費が増える程度ですが、高額療養費の申請(※3)、がん保険からの支払いを受けることで、経済的なダメージは、カバーできるかと思います。

この初期段階では、収入の維持ができれば、保険契約の維持にそこまで影響はないかもしれません。ところが、がんの場合、再発・転移などにより、治療が長期してしまうリスクもあり、そうなってくると、少しはなしが変わってくるかもしれません。

※3 『高額療養費』については、過去の記事
「『高額療養費』がんに限らず、覚えておいて損はないというはなし」を、是非ご覧ください

治療の長期化のリスク

がんの場合、いったん治まっても、再発・転移で、治療が繰り返される可能性があります。治療が長期化すると、肉体的、精神的な苦痛が、仕事に影響を与える可能性も大きくなってきます。有給休暇が残っている間は、基本的な収入は維持しながら、休むことができます。ただし、恒常的に残業代が大きい人は、収入ダウンになる可能性があります。

そして、有給休暇がなくなり、それでも職場復帰できない場合、休職状態となります。休職状態でも、最長1年6ヶ月までは、傷病手当金(※4)という、公的保障を受け、ザックリ給料の3分の2程度の金額が、支給されます(金額はイメージです。また、この制度、自営業の方など、国民健康保険の方は、対象外です)。ここまでくると、ハッキリと毎月の収入が減少してきます。この傷病手当金が終了となると、あとは自分で備えをしていたかどうかというはなしになってきます。

※4 『傷病手当金』については、過去の記事「『傷病手当金』がんだけではないですが、公的保険制度に、働けなくなってしまった時の保障があるというはなし」を、是非ご覧ください

家計負担から解約のリスク

がんに限らず、会社の業績不振などで、収入が減り、家計状況が厳しくなってきたときに、多くの方が考えるのが

生命保険の見直し

です。がんが原因であったとしても、月々の支払いが厳しければ、おそらく一度は考えることになると思います。でも、本来生命保険とは、こういった大きな病気になってしまった時のために、加入したはずです。

がんという、亡くなるリスクが高いと思われる病気になった時に、家族のためにお金を残してあげるための生命保険を解約すること。それは、ものすごく勇気のいる選択になると思います。

住宅ローンを組む際にも、このはなしが出てくる

この保険料払込免除という考え方、住宅ローンを組む際に加入する、『団信(団体信用生命保険)』を検討する際にも出てきます。団信とは、住宅ローンを契約した方が、もし返済期間中に死亡してしまったら、残りの借入金額が、すべてチャラになるというものです。正確にいうと、死亡時に、住宅ローンと一緒に契約した、団体信用生命保険から、保険金が払われて、それで残りの借入額が一括で返済されるという仕組みです。

ですから残された家族にとっては、その後返済を気にせず、その家に暮らすことができるという安心があります。そして、最近は、その団信の検討時に、『保険料払込免除』のような保障も検討することになります。

死亡時の団信に加え

以前は、団信にはあくまで死亡した時の保障しかなかったのですが、最近は、『がん団信』などといって、死亡に加え、がんの診断を受けてしまったら、その時点で返済が終了になるといったものも、選択できるようになっています。がんだけでなく、対象が3大疾病だったり、8大生活習慣病であったり、選択肢が広がっています。

このあたりは医療技術の進歩などで、がんを始め大きな病気になっても、すぐに死亡する時代ではなくなったことを象徴しているのではないでしょうか。

費用負担をよく確認して

私も自分のお客様から、マイホーム購入時、団信の選び方についてよく相談をされ、アドバイスを提供してきました。当然ですが、このがんなどでの団信、無料ではありません。基本の死亡時の保障も含め、保険料が発生します。ただし、個別に払うわけでなく、住宅ローン金利に上乗せする形で支払うので、自分でいくら負担するか、見落としがちです。

保障の幅を広げれば広げるほど、負担額も大きくなりますので、検討する際には、家計負担と照らして決めることをおススメいたします。

治療して元気に復帰、それとも治療の長期化、どちらを想定するか

この『保険料払込免除』という考え方。がんを早期発見・早期治療で、早く職場復帰して、今までどおりの日常に戻るという前提であれば、費用負担してまで備える必要はないかもしれません。

ただがんの場合、まだまだその再発・転移のメカニズムがわかっていないということや、どんなに日頃健康に気をつけても、見つかった時にはかなり進行していた、などといったことがあります。

治療長期化のスタンスで

わたしは、がんの備えを考えるならば、長期戦を前提に考えるというスタンスでいます。備えを考えるのであれば、最悪の状況を想定しておかなければ、本当の安心は得られないと考えるからです。がんは、他の病気と比べて、コントロールが難しい病気だと思っています。だからこそ、いまだに完全な治療が確立されていません。

そのため、他の病気やケガの医療費に対しては、私は公的保障(高額療養費)と預貯金で対応し、がんに対しては、もう一段手厚い備え(保障)が必要だと考えています。ただ、その考えについては、もちろん人それぞれ考えがあって良いとも思っています。

お金をもらうだけではない

今回触れた、保険料免除という選択肢。がんで、収入に影響が出た時に、家計状況がどうなるかをイメージしないと、なかなか必要性も考えづらいと思います。それをイメージするには、がんになってしまった時に、どのような経過をたどるかを知っていなければできません。

是非あなたも、あなたの保険の担当者から、適切ながんの情報を得て、納得のいく備えをしていただきたいと思います。もし、あなたの担当者が、がんに対する知識をあまり持っていないようであれば、セカンドオピニオンをとることをおススメいたします。

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