#23 診療ガイドラインと先進医療|がん保険のトリセツ|第2章 がんと治療のはなし

前回は、先進医療はほとんど受けられていない点について、想像される理由などを考えてみました。そのうちのひとつが、がん患者さんがその存在自体を知らないというものでした。

がんの先進医療などは、時々新聞やテレビなどでも取り上げられています。最近では、SNSでも最新情報などが発信されているので、私も確認をしています。なぜ、多くの人に情報が届かいないのでしょうか。

先生は紹介してくれるのか?

私自身、がんのことを学ぶ前は、いざがんの告知を受けた時に、病院の先生が様々な治療法を紹介してくれて、そこからベストのものを選ぶというイメージを持っていました。

先進医療を知った時も、最初は先生が従来の手術と最先端の先進医療、どちらにしますか?と提示をしてもらって選ぶのかと思っていました。

一般人のイメージ

まだがんになったことが無い人は、いざという時に、先生は様々な治療方法を知っていて、その中から良さそうなものをいくつかピックアップして提案してくれる、そんなイメージをお持ちかもしれません。

そして、その中に、治療費は高いけど、最先端の治療が含まれていて、高いお金を払えば治る確率も高くなる、そのように考えている方もいらっしゃるような気がします。

先生は紹介してくれない

しかし一般的に、治療提案の段階で主治医の先生から、先進医療のキーワードが出てくることは無いと思います。私も過去に、母のがんで約9年間主治医の先生とやり取りしましたが、一度も聞いたことはありませんでした。

基本的に、がん患者さんの側が受け身の姿勢だと、先進医療という話題になる可能性は低いと思います。その理由はいったいどういったものなのでしょうか。

なぜ紹介してくれないのか?

先生は治療の手段として存在する先進医療、なぜ存在すら紹介してくれないのか。先生がそれを知らないから?それとも意地悪しているのか?もちろんどちらも違うと思います。

それは日本の医療の現場には『診療ガイドライン』というものが存在するからです。先生から先進医療が提案されない、この診療ガイドラインの存在が大きな影響を与えていると思います。

何を根拠に治療を提案するか?

診療ガイドラインとは、いわゆる治療のマニュアルのようなものです。過去の臨床試験などの結果から、がんの種類やステージごと、推奨される治療が細かく書いてあります。そして時代とともに更新されています。

この診療ガイドラインに記載される治療は、最も科学的根拠に優れた治療と言われています。国立がん研究センターによると、このガイドラインに基づいて、個々の患者の状況に応じた診療が行われるということです。

どんな治療が記載されているか?

その診療ガイドラインに記載されている治療方法ですが、前に確認した、手術・放射線治療・抗がん剤治療といった、健康保険が適用で、いわゆる3大治療と言われる治療を中心として構成されていて、それらの治療が標準治療と呼ばれています。

そして、そこには先進医療という言葉は記載されていません。ですから先生から先進医療が推奨されることは、基本的に無いということが言えます。もし、先進医療を検討したい場合、自分で情報を取ってくる必要があります。

診療ガイドラインの目的

そもそもこの診療ガイドライン、ずっと昔からあったわけではありません。約20年前までは、治療の選択は、個々の医師の判断で行われていました。すなわち同じ病気で同じような症状でも、医師によって治療が違うということがありました。

個々の判断を排除はしないまでも、治療選択は経験ではなく、もう少し科学的根拠に基づくべきという考えから、この診療ガイドラインが作成されるようになりました。

誰が作っているのか?

これは肺がんなら肺がん学会、乳がんなら乳がん学会などの組織が中心となって作成されています。もちろん一度作って終わりではなく、定期的な更新が行われています。

この診療ガイドライン、それぞれのがんの学会などのHPで一部見ることも可能です。また一部のがんについては、患者さん用にやさしい表現で作成れたガイドラインも存在します。

現在の日本の医療のルール

診療ガイドラインは、科学的根拠に基づいて治療が推奨されるために作成されました。その真の目的は、医療の向上と医療の均てん化です。均てん化とは、日本のどの地域でも、誰でも同じ水準の治療が受けられるようにするということです。

日本のがん治療の現場には診療ガイドラインが存在し、それをもとに治療が行われている。これに関しては、善し悪しではなく、日本の医療のルールだということを知っておく必要があります。

先生と話しをするために

万が一あなたががんになってしまった場合、まずは主治医の先生と話しをして、そして3大治療を中心とした標準治療の提案を受けます。ただし、それを受け入れるかどうかは自由です。

おそらく多くの方が、がんになってしまった時、ネットなどで他の治療方法を探したりするかもしれません。そしてそこで、先進医療の存在を知るかもしれません。

診療ガイドラインの内容を知る

先生は診療ガイドラインを根拠に治療提案します。それは、最も科学的根拠に優れ、患者さんに推奨されるべきものと理解しているからです。あなたが探してきた先進医療に対しては、科学的根拠に乏しいという見解がおそらく出てくると思います。

さきほど申し上げたとおり、それが日本の医療のルールと理解する必要があります。先生の見解を、自分の意見が否定されたなどと捉えてしまうと、主治医の先生との信頼関係にヒビが入る可能性があります。

そのうえで別の相談を

それでもどうしても先進医療をはじめ、別の治療も比較してみたい、その場合主治医の先生に紹介状や画像データなどの診療情報を準備してもらう必要があります。

そして他の治療の話しを聞きに行ったが、やはり主治医の先生のもとで、標準治療を選択したいとなる可能性も十分あります。主治医の先生との関係は、良好に保つことが大切です。

今回触れた診療ガイドラインのような、がん治療の現場に影響があるものは、あらかじめ知っておいた方が、いざという時に話しがスムーズになり、主治医との関係構築にも役立ちます。

ですからがんの備えとは、がんの告知の瞬間から治療の選択まで、適切に対応できるための準備も含むのだと思います。そしてそれはがん保険に入るだけでは決してできない、私はそう考えています。

ただ、がんになる前に、こういった話しを聞く機会はほとんどありません。そもそもがんの話しにすらならないことが多いと思います。なので、がん保険相談の機会はとても貴重だと思います。

是非、あなたのがん保険の担当者が、こういった情報の備えへのサポーターでもあることを願っています。

次回は『#24 自由診療のがん治療』というタイトルでお話ししたいと思います。今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

◇◆◇補足◇◆◇

このがん保険のトリセツは、1つのコラムでの文章量は少なめに抑え、要点だけをお伝えするようにしています。内容について、もう少し詳しく知りたいと思われた方は、是非関連する別のコラムもお読みください。

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