#16 がん治療までの流れから考える|がん保険のトリセツ|第1章 がんを知る
がんの備えを考える時、手術や先進医療など治療のこと、または入院費や薬の費用などのお金のこと、こういったことはある程度容易に想像できると思います。
がん保険を扱う人で、キャリアの浅い人でもこの程度のはなしはできます。ただ、がん治療までの流れを知ると、もう少しピントを合わせるべきところが別にあることがわかります。
目次
いきなり『がんです』はない
がん患者さんが、ご自身ががんになったことをどのような形で知るのか。そこまでの流れを知ることががんへの備えを考えるうえで、実は大切です。
がんは頭痛や腹痛のように、症状が出ることでわかることは少ないと言われています。また、何かで受診をした時に、その場で『がんです』と言われることもほとんどありません。
最初は健康診断など
がんが見つかるきっかけとして多いのが、健康診断やがん検診です。1年に1度の定期健康診断や、市町村から案内が来て受けるがん検診、これらがきっかけとなることが多いのではないでしょうか。
ただし、この検査の結果で『がんです』と言われることもほとんどありません。検査結果に要精密検査などといった判定があった時、そこでまずはがんが疑われます。
便検査での要精密検査の判定
35歳以上の健康診断になると、検査項目に便検査も加わってきます。例えばこの検査の結果で『便潜血』という結果となった時、判定が『要精密検査』となることが一般的です。
この便潜血は『大腸がんの疑いあり』という意味合いになります。『自分は痔もちだから…』と、精密検査を受けないと方もいらっしゃいます。しかし、この大腸がんの疑いということを知らないで過ごしている方も少なくないと、私は思っています。
精密検査の受診
精密検査はそれを行う医療機関に、事前に予約を取って行くことになります。最初に健康診断などの予約をした時点から、すでに約1か月が経過していることが一般的です。
実はがんがわかるまでには、けっこう時間がかかります。特に前半の段階では、そこまでがんに対する意識もないですし、場合によって間延びしてしまうこともあるかもしれません。
まずは予約
事前に予約をとるわけですが、基本的に当日すぐにというのは難しい可能性があります。がん治療を行う大きな病院のHPを見ると、最短でどれくらい早く受けられるかという目安が載っていることがあります。
最短で翌日からという表記も目にしますが、こればかりはその時の混み具合に左右されます。また仕事がある人は、病院が空いていても、自分のスケジュールとの兼ね合いがありますので、少し間が空く可能性もあります。
検査結果はまだ後日
予約を取って、実際精密検査を受けますが、やはりその場で『がんです』と告知を受けることは少ないようです。がんの可能性がある場合、疑われる部位の細胞を採取して、別途調べることになります。
おおむね1~2週間後に別途予約を入れて、あらためて結果を聞きに来ることになります。このあたりから、少しずつ不安感が高まるのではないでしょうか。この待っている期間、人によっては落ち着きが失われる可能性があります。
そしてがんの告知を受ける
最初の健康診断の予約を入れた時点から、場合によっては2か月程度時間が経過し、主治医からがんの告知を受けることとなります。
今まではどちらかというと穏やかに流れていた時間が、ここから急に激しく流れ出す、私は母のがんの告知を受けた際、そんな印象であった気がします。
すぐに病状の説明と治療の提案
がんの告知を受けて、動揺が収まらない中、主治医からはがんの状態に関する詳しい説明があり、それに応じた治療の提案が行われます。
がんになってしまったという事実の受け入れができていないところに、全然知識のないがんに関する説明、そしてそれに対する治療のはなし、その場で正確に理解することは困難である可能性があります。
ここから一気にスピードアップ
そして主治医から提案されたその治療を受けるかどうか、その場で求められることもあります。今まで検査を受けて結果を待ってと、対応がゆっくりであったのがいきなり急になります。
私も2010年7月、母のがんの告知に立ち会い、その場で治療(手術)の提案を受けました。そして主治医の先生から『25日の水曜日であれば、私が直接執刀しますけど、どうしますか』と回答を求められました。
時間を確保するゆとりを
結局全くがんの知識のない母と私は、少しアイコンタクトをとった後、主治医の先生に『お願いします』と、その場で伝えました。考えようにも何を考えていいかわからなかったからです。
しかし、がんの告知を受けた動揺が残り、がんや治療のことを理解できないまま、慌てて回答することは、場合によって後で後悔する可能性があります。
家族と相談する時間をください
精密検査の結果を聞きに行く前から、この言葉を用意しておくとよいのでは、と今は思っています。そう伝えれば、先生も『次回の診察までに決めてきてください』という対応をしてくれると思います。
そうすることで、まずは気持ちを落ち着かせることもできますし、場合によってセカンドオピニオンをとったり、他の治療法と比較したりして、納得して治療を受けることができると思います。
情報がなければ検討できない
ただし、あらかじめこのがん治療までの流れを知っておかないと、落ち着いた対応は難しいかと思います。がんは最初の治療選択が非常に重要だと言われています。
そして治療に対する一定の知識を持つ、もしくは相談できる場所の確保をしておかないと、時間を確保してもその時間を有効活用することができません。
がん保険が出てくるのは、治療が終わって会計をする時です。でもがんとの戦いは、告知を受けた瞬間から始まっています。告知の直後に少しでも冷静な判断ができるかどうか、それによりその後の選択肢が大きく変わってしまう可能性があります。
ですからがんの備えとは、この告知の瞬間から適切に対応できるための準備を指すのだと思います。そして、それはがん保険に入るだけでは決してできない、私はそう考えています。
是非、あなたのがん保険の担当者が、がんの告知を受けた瞬間からのサポーターであることを願っています。
次回から、第2章 がんと治療のはなしに入ります。次回は『#17 備えの時点で知るがん治療のこと』というタイトルでお話ししたいと思います。今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
◇◆◇補足◇◆◇
このがん保険のトリセツは、1つのコラムでの文章量は少なめに抑え、要点だけをお伝えするようにしています。内容について、もう少し詳しく知りたいと思われた方は、是非関連する別のコラムもお読みください。
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