がん保険の選び方|『がん保険はいつでも入れる?』お金を払えば入れると思ってはいけない、というはなし

今から十数年前のはなしです。私は当時、千葉県船橋市の来店型保険ショップのスタッフとして働いていたのですが、ある時60歳くらいのご夫婦と見られる、穏やかな感じのおふたりが、ふらりとご来店されました。おはなしを伺うと、お嬢様が乳がんになってしまい、そのために何かいいがん保険がないか探している、ということでした。

ご存じの方も多いかもしれませんが、がんの診断を受けてから、がん保険に加入することは、ほぼ不可能です。残念ですが、そのお客様には、がん保険の加入はかなり困難であることをお伝えいたしました。

そこで今回は、一般的ながん保険における、加入のための診査について、考えていきたいと思います。

まさに今、『がん保険はそのうち考えよう』と思っているあなたへ、お届けしたいはなしです。

がん保険を始め、生命保険には加入のための診査がある

普段私たちが何か物やサービスを欲しいと思ったら、基本的にはお金を払えば手に入れることができます。在庫がなくて買えないということはあっても、『あなたには売れません』と、お店から断られることはあまりありません。

ところが、生命保険の場合には、加入したいと思っても、診査に通らなければ加入することができません(一部無診査のものもあります)。つまり、保険会社から断られることがあるということです。

支払いリスクが低いか?

なぜ、保険会社がお客様の申込を断るのか?それは、保険金、給付金などを支払う可能性が高いからです。がん保険に関して言うと、申込時点で、その人ががんになる可能性が高いと判定されると、保険会社はお断りの回答をします。

加入する側からすると、がんになったらお金を払ってほしいから申込をするのに、保険会社は払う可能性の高い人は、加入を断る。何か嫌な感じもしますが、それが保険の仕組みです。加入した全員ががんになって、保険会社が支払いをするという展開になったら、保険のシステムは成り立ちません。

若い人の方が安い

その時点では、がんになるリスクが低い人の集まりだから、がん保険は成り立ちます。がんのリスクの低い人同士で、比較的安い掛け金を出し合い、万が一がんになってしまった人に、大きなお金の手助けをする。これについては、そういうものだと理解するしかありません。

そのリスクの判定にはいくつかの要素がありますが、そのうちのひとつに年齢があります。一般的に、年齢が上がれば上がるほど、がんになる確率も上がります。ですから、がん保険に関して、加入時の年齢が若いほど、加入後のあなたの毎月の支払い負担(保険料と言います)は、安くなります。

がん検診での『要精密検査』判定は、がんの疑い

年齢以外で保険会社ががんのリスクを判定するものとして、健康診断やがん検診の結果があります。過去何年前までさかのぼるかは保険会社にもよりますが、過去2年とか過去5年以内の…といったことが多いです。

検査項目は様々ですが、がん検診は、がんに対する直接の検査ですから、ここで『要精密検査』となると、がんの疑いありという判定です。がん保険に関して言うと、その再検査結果がわからないと、加入ができない可能性があります。

なお、実際に加入ができるかどうかの判定は、保険会社が行います。ここで述べていることは、あくまでイメージとしてとらえてください。

その他過去の病歴など

健康診断、がん検診以外に確認されることとして、過去の受診歴があります。過去に、がんの診断を受けたことがあるか?または、その他の病気で受診したことがあるか?そのあたりも診査項目となります。冒頭で触れましたが、過去にがんの診断歴があると、一般的に厳しい結果になる可能性があります。

がん以外でも、その後がんに発展する可能性がある病歴などについて、判定が行われます。一般的に言えば、受診歴の少ない人より、多い人の方が厳しい診査結果となる可能性があります。

健康かどうかではない

健康診断やがん検診の結果は、健康状態に異常があるかどうかを判定しているものです。それに対し、がん保険加入に際しての診査は、その方が健康かどうかを見ているわけではありません。あくまで、対象となる保険への、『その時点での』加入の可否を判定しています。

ですからがん保険に関して言うと、健康診断で大きな異常判定があったり、過去に大きな病気での受診歴があっても、がんと関係のないものであれば、加入ができることもあります。そして、過去に一度加入が不可となったとしても、時間が経過したら加入ができたということもあります。ですから、ご自身で判断せず、何か不安があれば、まずは相談することをおススメします。

診査は『告知書』での、自己申告

先ほどから『診査』という言葉が出てきていますが、それは具体的にどうやって行われるのか?がん保険に関して言うと、一般的には、『告知書』という書類に、ご自身で記入をする形になります。告知書は、病院での問診票みたいな形式になっていることが多いです。書面上に、健康診断や過去の受診歴に関する質問があります。

それに回答すればいいのですが、時々問題が発生します。それは『覚えていない』ということです。健康診断の結果表は捨ててしまったとか、数年前の受診については、細かい記録が残っていない、といったことがあります。面倒なのですが、これについては病院に確認するなどして、正確に回答することが求められます。

正しい告知は義務

厳しいようですが、いざという時に大きなお金が動くはなしですので、この『告知書』の診査は厳格に行われます。契約時の重要事項説明で伝えられますが、正しい告知はお客様側の『義務』になっています。万が一虚偽の申告をして、あとでそれが判明した場合、『告知義務違反』となり、契約が解除される可能性があります。

がんが怖くてがん保険に加入したのに、本当にがん診断を受けた時に、がん保険が契約解除になる。とても怖いことです。ですから加入時の手続き、特に『告知書』の記入は、面倒でも正確に行わなければなりません。

ネットの申込は注意!

私も過去に10,000回以上の保険相談会に携わり、保険の申し込み手続きもたくさんご案内してきましたが、この告知書のご案内には、本当に気を使って行っていました。過去の受診歴を忘れたと言う方へ、病院に確認してくださいと言うことは、忍びないのですが、やはりがん保険は出口(がんになってお金を受け取る時)が全てです。

そういった意味で、がん保険にネット経由で加入する方は、是非重要事項説明などもよく確認して行うことをおススメします。面倒かもしれませんが、わからないことは問合せして、確認した方が良いと思います。がんになってしまったのに、お金が受け取れない、それほどつらいことはないと思います。

がん保険は、がんの不安がない時に考えるもの

健康に不安がなく、何気ない日常を過ごしていると、がんに対して不安を感じることも少ないかと思います。ただし、がん保険に関して言うと、その不安のない状態の時に考えなければ、いざ欲しい(健康に不安)となった時に、加入自体ができない可能性があることだけは、知っておいていただきたいと思います。

今日本では、毎年、約100万人の方が、新たにがんの診断を受け、約40万人の方が、がんでお亡くなりになっています。しかも、この傾向は増加傾向です。

まずがんを知ること

がん保険の加入は焦ることはないと思います。ただ、できれば不安のない時期に、がんを知っておいていただきたいと、私は思っています。がんに対する正しい知識がないまま、がんの診断を受けてしまうと、冷静な対応ができない可能性があります。これは、過去に私ががん患者の家族という体験をしたことからの実感です(※1)。

がんはどちらかと言うと、年を取ってからなる確率は高まります。80歳まで生きるならば、2人に1人ががんになると言われています。ではまだ若いから関係ないか?というと、そうでもありません。まず、私のように、親ががんになり、がん患者の家族になる可能性があります。がんは家族単位の戦いになる可能性があります。家族が知識を持っていることも大切です。

そして、これからの時代は、人生100年時代と言われています。長生きすれば、がんのリスクはかなり高まります。いつかなってしまうかもしれない。それであれば、早く知っておいた方がよいのではないでしょうか。

(※1) 情報を持たないままがんになってしまった時については、過去の記事「がんの備え|『がん患者の家族』を経験して初めて分かった、がんに関しての情報の出どころを学んでおくことの大切さ」を、是非ご覧ください

加入を前提にしないで相談を

もし多少なりとも気になったのであれば、その時点で情報は得ておいた方が良いと思います。今来店型保険ショップは、どこにでもあります。そういったところで、がん保険の必要性などについて、相談してみても良いと思います。もちろん最初から加入を前提にする必要はありません(※2)。

是非その機会に、がん保険の商品情報だけではなく、がん治療の実態や、実は大事な日本の医療のルールなどについても、情報を得て正しいがんへの備えを作っていただきたいと思います(※3)(※4)。もし、あなたの担当者が、保険商品のはなししかできないならば、がんについて、しっかり学んでいない可能性があります。はなしの内容が薄いと感じたならば、他でセカンドオピニオンをとることをおススメいたします。

(※2) がん保険の必要性については、過去の記事「がんの備え|『がん保険、必要?不要?』論争があります。私はどちらかと言えば、不要かな・・・というはなし」を、是非ご覧ください

(※3) がん治療の実態については、過去の記事「がんの備え|私たちが日本でがんになってしまった時、選択肢となる『4つのがん療養』」を、是非ご覧ください

(※4) 実は大事な日本の医療のルールについては、過去の記事「がんの備え|がんと日本の医療のルールを知らないことにより、主治医とのミスコミュニケーションが生じる可能性があるというはなし」を、是非ご覧ください

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