がん保険の選び方|『がん保険の入院給付金』入院は短期化傾向も全てが短いわけではない、というはなし

がんに限ったことではないのですが、医療技術の発達や国の政策により平均入院期間は短期化の傾向があります。がん保険のパンフレットを見ても、過去からのがんの平均入院日数の推移が表になったものを目にします。

がん保険は、様々な保障が組み合わさってできていることが一般的です。その保障の中には『入院給付金』というものがあります。これは、一般的に『がんで入院したら、1日当たり10,000円お支払いします』といった内容です(金額は例です。イメージとしてお読みください)。

入院日数が長ければ、それだけ多く受け取れるという仕組みの保障になっていて、従来のがん保険においてはこの入院給付金が保障のメインという位置づけにありました。

そこで今回は、がんでの入院日数が短くなってきている現在、がん保険の入院給付金の扱いをどうするべきか、そして、すべてのがん治療の入院日数が短いわけではないという点にについて、一緒に見ていきたいと思います。

まさに今、『入院給付金のついたがん保険を検討』しようとしているあなたへ、お届けしたいはなしです。

過去からのがんの平均入院日数の推移

厚生労働省の調査によると、がんの平均入院日数は下の図のとおり、ずっと減少し続けています。20年前と比較するとほぼ半分の水準です。

1996年1999年2002年2005年2008年2011年2014年2017年2020年
悪性新生物46.0日40.1日35.7日29.6日23.9日20.6日19.9日17.1日19.6日
出典:厚生労働省「平成29年患者調査」より、筆者が作成

もちろん、これはがんだけに限らず、入院全般に当てはまることです。

通院治療の比率が向上

上の図は、がん患者さんが治療を入院で受けているか通院で受けているかの比率の推移です。入院が減ったからといって、治療が減ったというわけではなく、『通院で行える治療は通院で』という流れになっており、がんにおいても、放射線治療や抗がん剤治療などにおいて、通院の比率が高くなっていっています。

また、手術は入院することが多いものの、手術も技術が向上して、身体への負担が小さい手術がたくさん出てきています。それにより、術後のリハビリの日数が短期化し早く退院できるようにもなっています。

入院給付金の出番が…

がん保険の中に『入院給付金』という保障があります。以前は、がん保険の主契約として存在したこの保障ですが、入院の短期化とともに存在意義が低下しているかもしれません。

入院日数に応じた保障であるため、思ったような金額が受け取れない可能性があるため、最近のがん保険においては、この入院給付金をはずす(付加しない)選択ができるものも存在します。

悪性リンパ腫を経験した笠井信輔さんのはなし

フリーアナウンサーの笠井信輔さんは、2019年に血液のがんといわれる『悪性リンパ腫』を患いましたが、闘病の末、復帰を果たしています。様々な場でご自身の病気や治療などについて発信をしていただいており、私もそこから学ばせていただいています。

24H×5日間の抗がん剤治療

胃がんや肺がんなどの固形がんと言われるものは、手術を行うことも多いですが、血液のがんの場合には、抗がん剤治療を行うことが多いようです。笠井さんの治療は、抗がん剤の24時間投与を連続5日間、それを6クール行ったとのことでした。

24時間の抗がん剤投与だけで、5日間×6クールで30日間です。24時間を5日間連続で行うので、これは入院して行うことになります。また、投与が終わっても、一定の療養も必要になるでしょうから、少し入院日数が長めになる可能性があります。

トータル4か月半の入院

笠井さん関しては、最終的に4か月半の入院期間であったようです。しかも個室に入ったとので、入院費用はそれなりに高額になったものと考えられます。個室費用は、病院によってまちまちですが、私が以前入院した病院では、1泊16,000円でした。

4か月半個室で入院となると、個室費用だけでおそらく100万円以上かかることになります。貯蓄に余裕があるか保険の裏付けがないとなかなか長期の個室入院は選択できないと思います。ちなみに笠井さんは、がんをカバーする保険に入っていたそうです。

長期入院が無くなったわけではない

血液のがんは入院が比較的長めになるとはいえ入院の短期化自体は国が政策的に行っているので、今後もその傾向は変わらないと思います。とはいえ短いと思いっていたがん入院でも、手術後に合併症を起こし引き続き入院で治療が必要になるといった、イレギュラーなことは起こり得ます。

入院給付金の存在意義自体は低下していますが、長期入院が無くなったと思い込んでしまうことは怖いことであるといえるかもしれません。可能性はかなり低くなっているがゼロではない。それに対する備えをどう考えるか?という視点は必要です。

医療保険の有無をチェック

もしすでに生命保険に加入している場合、その契約の中に『医療保険』や『入院特約』などといった名称の保障があるかどうか、チェックすることをおススメします。これは、がんを含めたケガ・病気で入院した時に、1日10,000円お支払い、といったがん保険の入院給付金と似たような内容の保障です(名称や金額は例です。イメージとしてお読みください)。

もしそういった保険があれば、がん保険の入院給付金とダブっていますので、そのままダブらせてがん入院だけ手厚くするか、それとも片方をカットして、月々の負担(保険料と言います)を落とす、といったことを検討すると良いかと思います。

悩まなくて良い保障もある

がん保険の中には『がん診断給付金』などといった名称で、がんの診断を受けた時点でがん保険からの支払いが確定する保障もあります。がんの診断を受けたら50万円や100万円といったまとまった一時金を受け取れるものが一般的です(※1)。

その後に、入院するか通院するか、どんな治療を受けるか、それとも治療を受けないのか、全く影響を受けません。がん診断で支払いが確定しその後の使い道が自由という良さがあります。こうして事前にもらえる金額がわかれば、それに応じて個室にするかどうか、検討できるかもしれません。

(※1) がん診断給付金については、過去の記事「がんの備え|取扱い注意!がん保険には、2種類ある。その選択次第で、がんになった時の備えが変わってくるというはなし」を、是非ご覧ください

がんとお金について映像化できる人へ相談を

がんは多くの人が怖いと思っています(※2)。そしてその中には、がんに備えようと思ってがん保険に加入する人もいらっしゃると思います。さきほどご紹介した、フリーアナウンサーの笠井さんは、お見舞いに来たみなさんにがん保険に入っておくことをおススメしたそうです。

もちろんがん保険に入ることは手段のひとつなのですが、世の中で『がんの備え=がん保険』というイメージになることについては私は怖さを感じますし、自分のお客様には『がん保険をはじめとしてがんの備えをしっかりしておきましょう』というその心の部分について必ずお伝えします。やはり、まずはがんになってしまった時に、どのような状況になり得るのか知らないと、本当の備えはできないと思います。

(※2) がんは多くの人が怖いと思っていることについては、過去の記事「がんの備え|『がんであると分かるのが怖いから』がん検診を受けない。これもひとつの本音、というはなし」を、是非ご覧ください

まずはがんを知ること

がんになってしまった時に、どのような治療を受ける可能性がありどのような経済的負担が発生するのか、それが明確にならなければどのようながん保険に入るのが良いのかわかりません。経済的な状況は個人個人違います。ですから持つべき保険の形も様々です(※3)。

そして、一般的にがん保険はがんの治療費への備えの保険です。守ってくれるのはがん治療費です。がんは治療費だけ備えておけば良いかというとそうではないケースもあります(※4)。また、がんで最初にダメージを受けるのは財布ではなくメンタル面です。そしてがんを知らないと、治療費が発生する前に様々ながん情報に振り回される可能性もあります。

(※3) がんになってしまった時の経済的負担については、過去の記事「がんの備え|意外と忘れられがちな、がんになってしまった時にも発生する普通のお金」を、是非ご覧ください

(※4) がん保険の必要性については、過去の記事「がんの備え|『がん保険、必要?不要?』論争があります。私はどちらかと言えば、不要かな・・・というはなし」を、是非ご覧ください

がん保険相談時を大切に

がんに備えるということは、がんになってしまった時に必要な適切な情報を持つことでもある、と私は考えています。適切な情報をもとに、あなたのおかれた状況に応じて、保険を始めとした、具体的な備えの手段を選択していくことが大切です。そういった意味で、生命保険の検討時の時間を大切にしていただきたいと思います。

是非、生命(がん)保険の相談の機会に、あなたの保険の担当者からがん保険の商品情報だけではなく、がん治療の実態や実は大事な日本の医療のルールなど、実際がんになってしまった時の影像が浮かぶ情報を得ながら、正しいがんへの備えを作っていただきたいと思います(※5)(※6)。

がんと聞いてがん保険商品の選択肢しか出せない人は、がんについてしっかり学んでいない可能性があります。もし、はなしの内容が薄いと感じたならば、他でセカンドオピニオンをとってでも正しい情報をとっておくことをおススメいたします(※7)。

それくらい事前にがんを学んでいるかどうかは大きな違いだと思っています。それは正しいがんの知識を持たずに、約9年間、がん患者の家族という立場を体験した私の実感でもあります。

(※5) がん治療の実態については、過去の記事「がんの備え|私たちが日本でがんになってしまった時、選択肢となる『4つのがん療養』」を、是非ご覧ください

(※6) 実は大事な日本の医療のルールについては、過去の記事「がんの備え|がんと日本の医療のルールを知らないことにより、主治医とのミスコミュニケーションが生じる可能性があるというはなし」を、是非ご覧ください

(※7) 生命(がん)保険相談のセカンドオピニオンについては、過去の記事「がんの備え|『がん保険選びにもセカンドオピニオン』一番大切なことは、オトクながん保険選びではない、というはなし」を、是非ご覧ください

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