がん保険の選び方|『がん保険選びにもセカンドオピニオン』一番大切なことは、オトクながん保険選びではない、というはなし

がん治療の現場では、主治医の先生からの診断や治療提案に対し、別の医師から客観的な意見をもらい、自分の判断の参考にする『セカンドオピニオン』という制度が確立しています。がん治療を行う病院のHPを見れば、たいていセカンドオピニオン外来の案内があります。

生命保険やがん保険相談の世界でも、お客様サイドで、個別に来店型保険ショップをはしごして、複数の意見をとる方がいらっしゃいます。実は、がんへの備えにおいては、それは特に大切だと思っています。

そこで今回は、がん治療の現場では定着しつつあるセカンドオピニオン、がん保険を選ぶうえでも活用してもらいたいこと、なぜそれが大切かについて、一緒に見ていきたいと思います。

まさに今、『がん保険の相談に行こう』と思っているあなたへ、お届けしたいはなしです。

残念だけど、巡り合わせは運次第

私自身、2008年から10数年にわたり、来店型保険ショップの店頭でお客様の保険相談に携わってまいりました。その間、ショップの数はどんどん増えましたし、銀行でも保険相談を行うようになり、以前よりも相談できる場所は増えたと思います。

お客様サイドにとって、相談できる場所の選択肢が増えることは良いことだと思います。ただ本当に大事なことはがんの備えを考えるうえで、正しい知識を持った担当者に出会うことだと思います。正しい知識を持った担当者に出会えるかどうか、残念ながらそれは運次第です。

保険業界に入れば保険のプロ

生命保険協会によると、生命保険の営業に関わる人の数は、約24万人だそうです。なかなか評価が難しいですが、けっこう多いという印象です。この24万人の人は、一応、がん保険を含めた、生命保険のプロということになります。では、そのプロの人すべてが、同じ能力を有しているかというとそれはたぶん違うのだと思います。

ただ、それについては、生命保険の世界に限ったことではありません。どこの業界も努力をし続ける優秀な方もいれば、そうではない方も交じっています。みなさまもご自身が関わっている世界(業界)から、それはわかるかと思います。

面倒でも担当者を変えて

そういった理由でお伝えしたいことなのですが、がん保険の相談に行ったとしても、がんに詳しい担当者に当たるかどうかわからないということです。あくまで私の過去の印象ですが、特にがんに関して言うと詳しくない(勉強していない)人の方が多いのではないかという気もしています。

ですから、もしがん保険の相談に行って、あなたの担当してくれた人のはなしが、あまり深い知識に基づいたものでない印象を持ったら、別の担当者を探した方が良いと思っています。

がんは、治療の実態の変化が激しい世界です。その変化に、加入している保険がついていけてないこともよくあります。ですから、がん保険を扱う人は、最新のがん治療などの動向を知っていなければなりません。

プロのがんへの備えを見せてもらおう!

これは堂々とリクエストしていいと思います。自分ががん保険を含めた、がんに対する備えをどのようにしているか?お客様に明示できないのは、問題だと思います。プロであれば、ひとつのモデルとして、自分の保険や備えを示して当然だと思います。ここをはぐらかす人は、その時点で、少し警戒した方が良いかもしれません。

なぜそのがん保険?

また、担当者が自分が入っているがん保険など、備えについて語ってくれた時に、なぜその手段を選んだのか?という点も合わせて聞きたいところです。どういった治療の可能性、そして発生する費用の見積もり、こういったことへのイメージがあるから、それに対する備えもできるはずです。あらゆる可能性を考えているかどうか、確認すると良いかと思います。

そのうえで、あなたへ対するおススメはどういう形か聞いてみると良いかと思います。対象となる人が違うので、おススメするものも違ってくることがあるからです。

どこまでの想定か?

がんのお金に対する備えは、治療費だけでは済まない可能性があります。がんは、一度治まっても再発・転移などで、長期戦になることがあります。長期戦になると、後遺症や副作用などで、肉体的・精神的にかなりつらくなってくることもあります。

そういった時に、今まで何とか続けてきた仕事が困難になり、収入を失ってしまうケースもあるのです。がんは治療費がかかるとも言われていますが、収入を失い毎月の生活費に困窮するケースの方が、経済的ダメージは大きい可能性があります。

すべてのシナリオに対して、保険をかけるかどうかは別にして、こういったところまで影響が出る可能性を語ってくれると、あなたのがんへの備えも安心感が出てきます。

(※1) 生活費への影響については、過去の記事「がんの備え|意外と忘れられがちな、がんになってしまった時にも発生する普通のお金」を、是非ご覧ください

がんは情報があって初めて備えになる

がんというとたいていお金のはなしが出てきますが、一方で、がんは情報戦とも言われます。がんの治療は、新しいものが開発されて出てくることもありますし、また国の医療に対する方針なども変化していくことがあります。

万が一がん患者になった時に、どのような治療や制度の利用ができるのか?といった情報を持っているかどうか、これは大きな違いとなります。そしてその情報は常に変化していきますので、最新の情報を持っていることが大切です。

がん保険で助かるケース

がん保険ランキングなどで上位に位置して評判がいいとされるがん保険は、保障内容や価格の面などで確かに良いところがあると思います。

ただしがん保険ということで言うと、今ランキング上位のがん保険は、今のがん治療の実態に対して良い保障内容だというように理解しておく必要があります。先ほどから、がん治療などが変化をすると申し上げましたが、今最新のがん保険に入っていても、一定期間経過したらもうその時の最新治療についていけていない、ということは起こり得ます(※2)。

がん保険に加入するのであれば、今後の見直し可能性や手段についてまでアドバイスをしてくれると良いかと思います。

(※2)最近のがん治療のへんかについては、過去の記事「がんの備え|『がんゲノム医療に対応するがん保険』今抗がん剤治療保障に動きを起こしつつある、がん治療の変化、というはなし」を、是非ご覧ください

納得して治療を受けるには

万が一がんになってしまって、あらゆる治療の選択肢から自分で納得して選択したいと思ったら、主治医の先生からの情報だけでは不可能です。例えば、主治医の先生からは「手術をしましょう」と提案を受けたものの、いろいろな理由から手術以外の治療を受けたいと思ったとします。

その場合、その違う治療の選択肢は、自分で探して自分でそれを行う病院へ行ってはなしを聞かなければなりません。がん保険はパンフレットをいくつか並べれば比較が可能ですが、がん治療ではそうはいきません。基本的に、時間とお金と労力が必要になります。

そういったことを含め事前に一定の知識を有していないと、自分で選ぶということは難しいかもしれません。

がんには『メンタル』『情報』『お金』の3つの力が必要

情報とお金、この2つを持ち合わせておくことが、事前にできるがんへの備えなのですが、この2つがあったとしても、おそらく実際がんの告知を受けるとメンタル的なダメージを受けます

「治らないのでは…?」「家族に負担をかけてしまう…」といった不安が出てきます。がんと戦っていくには、メンタル面を含めた3つの力が必要ですし、場合によって家族など周りの人の支援も必要となります。

せめて、情報とお金は…

がんの告知を受けた方の、一定割合の方がうつ症状などを発症したりします。そういった状態で、がんに関する最新情報をそこから初めて集めたり、お金の準備をしたりすることは、簡単ではありません。メンタル面はどうしてもその時にならないとわからないところもあります。

ただし、情報やお金の準備は、元気なうちにできるのです。そしてそのふたつの準備をしておくことで、少なからずがん告知によるメンタル的なダメージを緩和できる可能性があります。

日本人にとってはまだまだ怖い病気であるがん。80歳まで生きるならば、2人に1人ががんになると言われています。まだまだ先でも、いずれなってしまうのであれば、できる準備は今のうちからしておいた方が良いと思います。確率は低くても、実際若くしてがんになってしまう人も確実にいるのですから。

是非セカンドオピニオンを

死亡保険や医療保険の提案は、生命保険業界で一定期間仕事をすれば、それなりにできるようになります。ある程度の型があるからです。ただし、がんに関しては、その人自身が個別にがんのことを学ばない限りその提案能力は上がりません

なぜならば自分で取りに行かないと、がん治療などの最新情報は入ってこないからです。それでも、がん保険の説明だけならばパンフレットを読めば出来てしまうことが、最大の問題だと思っています。

是非みなさまもがん保険を検討する機会には、あなたの保険の担当者からがん保険の商品情報だけではなく、がん治療の実態や実は大事な日本の医療のルールなどについても情報を得て、正しいがんへの備えを作っていただきたいと思います(※3)(※4)。

がんと聞いてがん保険商品の選択肢しか出せない人は、がんについてしっかり学んでいない可能性があります。もしはなしの内容が薄いと感じたならば、他でセカンドオピニオンをとってでも正しい情報をとっておくことをおススメいたします。

それくらい事前にがんを学んでいるかどうかは大きな違いだと思っています。それは、正しいがんの知識を持たずに約9年間、がん患者の家族という立場を体験した、私の実感でもあります。

(※3) がん治療の実態については、過去の記事「がんの備え|私たちが日本でがんになってしまった時、選択肢となる『4つのがん療養』」を、是非ご覧ください

(※4) 実は大事な日本の医療のルールについては、過去の記事「がんの備え|がんと日本の医療のルールを知らないことにより、主治医とのミスコミュニケーションが生じる可能性があるというはなし」を、是非ご覧ください

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