がんの備え|がん保険では不十分!本当のがんへの備えの3つのステップ、というはなし
何かのきっかけでがんの備えを考えた時、あなたはどのようなアクションを起こすでしょうか。
もちろん人それぞれですが、『がん保険に入った方がいいのか?』と、がん保険について調べるという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
やはりがん保険には入っておきたいと思い、近所の保険ショップで相談。Aがん保険、Bがん保険、Cがん保険と比較して、一番コスパが良いと思われるがん保険に加入。そして『これでがんは安心』という方もいらっしゃるかと思います。
ところが『良いがん保険に加入したからがんは安心』となることは、場合によって怖いことであると私は考えています。
そこで今回は、がん保険でできるがんの備えとは、またがん保険ではできないがんの備えとは、がんに備えるためにはどうすれば良いのか、ということについて、一緒に見ていきたいと思います。
まさに今、『がんの備えとしてがん保険を検討』しようとしているあなたへ、お届けしたいはなしです。
目次
ステップ1『お金の備えを考える』
がんの備えでがん保険を考えたのならば、まずはがん保険とは、というところを押さえていただくことが大切です。がん保険は何のための保険なのか?それは
がん治療費のための保険
です。当たり前と感じるかもしれません。ただし、けっこうぼやけて理解されている方もいらっしゃるかもしれません。
もう少し補足してお伝えすると、がん保険は、がんに関しての治療費以外のお金には対応できない可能性があるということです。がんになってしまった際、経済的な負担は治療費だけとは限りません。ご自身がどこを保険に守ってもらう必要があるかを明確にすることが大切です。
がん保険でできる備えとは?
一般的にがん保険は、がんで治療を受けた時の治療費を助けてくれる保険です。さらに付け加えると、そのがん保険が発売された時期の、最新のがん治療に対応しているという点も押さえておきたいところです(※1)。
どういうことか?
がん治療は日進月歩で新しい治療方法が出てきています。がん保険に加入した後に誕生した、新しいがん治療には、対応できないケースもあるということを知っておいていただきたいと思います(※2)(※3)。
※1 がん保険の基本については、過去の記事「がんの備え|取扱い注意!がん保険には、2種類ある。その選択次第で、がんになった時の備えが変わってくるというはなし」を、是非ご覧ください
※2 がん保険の基本については、過去の記事「がんの備え|『私の家族が入っていたがん保険』がん保険は時代の変化についていけないかも、というはなし」を、是非ご覧ください
※3 新しがん治療に対応できないケースについては、過去の記事「がんの備え|『がん保険の見直しは必要?』見直しはしなくても、見つめ直しは必須、というはなし」を、是非ご覧ください
がん保険でできない備えとは?
がんになってしまった時、治療費以外にどのような費用が掛かるのか。それぞれのライフスタイルにもよりますが、ひとつ代表的なものとして、日常の生活費があります。がん治療が長期化し、仕事を退職して収入を失ってしまうことにより、生活費に困窮するケースがあります(※4)。
保険を考えるということは、経済的に最も厳しい状況を想定する必要があります。その時点での預貯金額や公的な保障などにより、どの程度まで生活費をカバーできるか、把握する必要があります(※5)。場合によって、治療費よりも経済的負担が大きくなるリスクがあると、私は考えています。
そして、この生活費への備えを保険で考えたい場合、がん保険では力不足であると、私は思っています(※6)。
※4 生活費に困窮するケースについては、過去の記事「がんの備え|意外と忘れられがちな、がんになってしまった時にも発生する普通のお金」を、是非ご覧ください
※5 公的な保障については、過去の記事「がんの備え|『傷病手当金』がんだけではないですが、公的保険制度に、働けなくなってしまった時の保障があるというはなし」を、是非ご覧ください
※6 生活費に対する備えについては、過去の記事「がんの備え|『がん保険、必要?不要?』論争があります。私はどちらかと言えば、不要かな・・・というはなし」を、是非ご覧ください
ステップ2『情報戦に備える』
お金について備えたとしても、それだけでは十分ながんの備えにはなりません。あくまでがんに関するお金の備えです。中には、お金をたくさん積めば、良い治療が受けられて、がんが治る可能性が高いと思う方もいらっしゃるかもしれません。
ただし、がんに関しては、お金があるだけでは戦えないと思います。では、他に何が必要なのか?
ステップ2は、情報の備えです。がんは、情報戦とも言われます。また、がんは再発・転移などで、治療が長期化する可能性があります。長期化する治療の中で、がん患者さんは、様々な判断を医師から求められます。
そこで納得して判断するために必要なものが、情報だと私は考えています。
すぐに決断を求められる
医師:残念ながらがんが見つかりました…
患者:えっ!?
(中略)
医師:手術をしましょう。今ならば手術が可能です。(中略)2週間後の○○日の水曜日でしたら、私が直接執刀できますけど、どうしますか?
あなたならば何とお答えになるでしょうか。これ、私が母の乳がんの告知に立ち会った時の会話です。中略の部分は、がんの進行状況や手術の内容などの説明ですが、おそらく時間は10分程度であったと思います。
がんの告知を受けて、まだ心のゆとりもない中、医師から決断を求められます。医師は何を根拠に治療方法を選んでいるのでしょうか。医師が言う治療方法がベストの方法なのでしょうか。日本でがんになってしまった時の、基本的な体系を知っているかどうかで、少し対応が変わるかもしれません。
最低限のルールは知っておく
私たちが日本でがんの告知を受けた時、医師からどのような治療の提案がなされるのか。基本的に医師は、『診療ガイドライン』と呼ばれるマニュアルのようなものを根拠に、治療を選択・提案します。その治療は、科学的根拠に基づいて、患者さんに推奨されるべき治療とされています。
その治療のことを『標準治療』と言いますが、世の中には標準治療以外の治療も存在します。『がん 治療』などとネットを叩けば、膨大な量の治療情報が出てきます。この標準治療とそれ以外の治療という枠組みを押さえておかないと、主治医との信頼関係にもマイナスの影響が出る可能性があると、私は思っています(※7)(※8)。
また、別の医師に意見を求める『セカンドオピニオン』といった制度もあります。こういったものを活用することもひとつの手段ですが、やはりそこも一定のルールを知って利用しないと、納得する情報が得られなかった…といった結果になる可能性があることも、合わせて押さえておいた方が良いと思います(※9)。
※7 標準治療とそれ以外の治療という枠組みについては、過去の記事「がんの備え|私たちが日本でがんになってしまった時、選択肢となる『4つのがん療養』」を、是非ご覧ください
※8 主治医との信頼関係にもマイナスの影響が出る可能性については、過去の記事「がんの備え|がんと日本の医療のルールを知らないことにより、主治医とのミスコミュニケーションが生じる可能性があるというはなし」を、是非ご覧ください
※9 『セカンドオピニオン』については、過去の記事「がんの備え|がん治療におけるセカンドオピニオン。取り方を間違えれば、目的が果たされない可能性があるはなし」を、是非ご覧ください
ステップ3『メンタル的なダメージに備える』
ここまで『お金』と『情報』について触れてきました。これらはがんと向かい合っていくための武器になるものです。具体的に備えをすることができますから、備えの有無がわかりやすいかと思います。ただし、これらと合わせて備えておきたいものがメンタル面だと思います。
がんの告知を受ければ、おそらく大半の方は何らかのショックを受けるのではないでしょうか。その大小はそれぞれだと思いますが、いまだに『がん=死』というイメージを持たれる方もいらっしゃるようです。心をどこまで整えられるかが、その後のがんとの向き合いに影響があるのではないかと、私は考えています。
約1割がうつ状態に…
がんの告知を受けた場合、約1割の患者さんがうつ病になると言われています。また、うつ病にまでは至らなくても、多くの患者さんにうつ症状は現れるかもしれません(※10)。
また、働くがん患者さんの3人に1人が離職しているというはなしもあります。しかもその離職者の約4割は、治療開始前に仕事をやめてしまっています(※11)。
※10 がん患者さんとうつ症状については、過去の記事「がんの備え|がんフォーラムでがんサバイバーの方から聞いた、がん患者さんの二極化の側面」を、是非ご覧ください
※11 がん患者さんの離職については、過去の記事「がんの備え|がんが治まった後に、がん患者さんを悩ます、再就職に際しての、ご自身のがんの申告のはなし」を、是非ご覧ください
完全な準備はできないが…
がんの告知に対して、ダメージゼロを目指すことは難しいかもしれませんが、がんになったとしても、元気で日常を過ごしている方はたくさんいらっしゃるし、決して『がん=死』ではないということを知っておくことは大切なのだと思います。
また、病院内には、がん相談支援センターといって、がんに関しての精神的な不安、治療のこと、経済的なこと、仕事のことなど、まずは何でも気軽に相談できる場所があります。この相談場所があるという安心を知っておくことも大切なのかと思います。
がんを知ることから
ここまで、がんのお金⇒がんの情報⇒がんとメンタル、というステップで3つの側面を見てきました。ただ、実際にがんになってしまった時には、ステップ3⇒ステップ2⇒ステップ1の順で、がん患者さんには波が訪れます。この『がん治療までの流れ』というものも、知っておくと備えを考えやすいかもしれません(※12)。
メンタル、情報、お金、どれをとっても、まずは実際どうなのか、ということを知ることが備えの第一歩です。
冒頭述べたように、がん保険は、がん治療費のための備えです。がん治療費の一定の不安は消すことができますが、がん保険で、生活費までまかなうことは難しいですし、まして情報を得ることもできませんし、メンタル面すべてを整えることもできません。
※12 がん治療までの流れについては、過去の記事「がんの備え|『がん治療までの流れから考えるがん保険』いつもらえるかによる違いを知ることも大切、というはなし」を、是非ご覧ください
がん難民という言葉がある
日本では『がん難民』という言葉が使われることがあります。正確な定義は無いのかもしれませんが、
何らかの理由で、がん治療を受けることができないがん患者さん
というように、私は捉えています。
精神的に追い詰められて何も行動がとれない(メンタル)、ネットの情報に振り回されて主治医と関係がこじれた(情報)、治療費をねん出できない(お金)、などといった理由で起こることが考えられます。
がんを知っている担当者に
繰り返しになりますが、がんへの備えで一番大切だと私が考えていることが
がんを知ること
です。
がん患者さんは、様々な負担を負ってがんと向き合っています。その中で、もちろんお金の負担も小さくない場合があります。ですからがん保険を考えることも大切です。ただ、がんになってしまった時に、お金も含めてどのような負担があるのかを知ることが、本当のがんの備えと言えるのだと私は考えています。
そういった意味で、医療保険、がん保険の相談をする機会を大切にしていただきたいと思います。保険ショップなどに相談に行けば、保険を選択するにあたって、様々なアドバイスをもらえる可能性があります。是非その機会を大切にしていただきたいと思います。
医療保険、がん保険の相談の機会に、あなたの保険の担当者から、がんに関する保険の商品情報だけではなく、がん治療の実態や、実は大事な日本の医療のルールなど、実際がんになってしまった時の影像が浮かぶ情報を得ながら、正しいがんへの備えを作っていただきたいと思います(※13)(※14)。
がんと聞いて、がん保険商品の選択肢しか出せない人は、がんについて、しっかり学んでいない可能性があります。もし、はなしの内容が薄いと感じたならば、他でセカンドオピニオンをとってでも、正しい情報をとっておくことをおススメいたします(※15)。
それくらい、事前にがんを学んでいるかどうかは、大きな違いだと思っています。それは、正しいがんの知識を持たずに、約9年間、がん患者の家族という立場を体験した、私の実感でもあります。
(※13) がん治療の実態については、過去の記事「がんの備え|私たちが日本でがんになってしまった時、選択肢となる『4つのがん療養』」を、是非ご覧ください
(※14) 実は大事な日本の医療のルールについては、過去の記事「がんの備え|がんと日本の医療のルールを知らないことにより、主治医とのミスコミュニケーションが生じる可能性があるというはなし」を、是非ご覧ください
(※15) 生命(がん)保険相談のセカンドオピニオンについては、過去の記事「がんの備え|『がん保険選びにもセカンドオピニオン』一番大切なことは、オトクながん保険選びではない、というはなし」を、是非ご覧ください
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