がんの備え|私たちが日本でがんになってしまった時、選択肢となる『4つのがん療養』

『がん 治療』というキーワードで、グーグル検索すると、たくさんの治療方法が出てきます。ちなみに、2021年11月10日(水)午前8:52時点だと、検索結果はなんと3億5,800万件です。

がん患者さんやその家族は、がんが治ってほしいという思いから、ネットでもいろいろと調べると思います。ただ、この情報量です。『情報が多すぎて余計わからなくなった』と思う方も多いのではないでしょうか。

数あるがん治療に対する情報ですが、出どころという観点から、4つに分類することが可能です。私はそれを、『4つのがん療養』という形で整理しています。

万が一あなたががんの診断を受けてしまった時、あなたがどのような選択をする可能性があるのか、それを知らずして適切な備えをすることはできません。

そこで今回は、がんになってしまった時に選択肢となる4つのがん療養、それぞれの位置づけについて、一緒に見ていきたいと思います。

まさに今、『がんの備えとしてがん保険を検討』しようとしているあなたへ、お届けしたいはなしです。


治療に対するスタンスと、健康保険適用かどうかのマトリクス

がんに対する治療行為などは、4つに分類できるのですが、『どのような方針でその行為を行うのか』という観点から、2つに分類ができます。それは

・がんを叩いてやっつける(なくす)ことを目指すのか
・がんとうまくつき合っていく(共生する)ことを目指すのか

という2つです。もうひとつの分類として、その治療などが

・健康保険適用の医療行為か
・健康保険適用外の医療行為(自由診療)、もしくはそもそも医療行為ではないのか

という2つです。

これらの療養行為を組み合わせると、4つに分類が可能で、この体系を押さえておくと、出てきた情報がどこに属する情報かということがわかります。

標準治療と自由診療

がんを積極的に叩くという方針のもと行われる医療行為で、健康保険適用とそうでないものを分類していくと、

『標準治療』と『自由診療』

に分けられます。健康保険適用で行われるのが、標準治療、健康保険がきかずに受けるのが、自由診療です。

そもそもこの違いはなんなのかというと、簡単に言うと、健康保険適用だと、自分が払うお金が安くて、自由診療だと高いというイメージです(正確な表現ではないですが、イメージとしてとらえてください)。

また、健康保険適用の治療は、日本に暮らす多くの人が、小さな負担で良い治療が受けられるようにと、国が承認をしている治療です。一方、自由診療は、それを行う医師が独自の考えで行っている医療行為なので、その医療費は『言い値』となり、一般的に高額な印象があります。

緩和ケアと補完代替療法

もうひとつのがんとの共生を目指すというスタンスでの分類では、

『緩和ケア』と『補完代替療法』

があります。緩和ケアは、がんになって、肉体的、メンタル的なつらさが出てしまった時に、そのつらさを取り除く、もしくは緩和するための医療行為です。

健康保険適用ですので、比較的小さな経済的負担で受けることができます。具体的には、がんによる痛み、薬の副作用による吐き気、そしてうつ症状などへの対処です。

もうひとつの補完代替療法ですが、これは漢方薬や鍼治療といった東洋医学もひとつですし、健康食品やサプリメントなども該当します。ここについては、ここまでがという線引きも難しいほど、いろいろな種類があります。

そして、 健康食品やサプリメントもそうですが、必ずしも医師が医療行為として行っているものばかりではないということです。こちらについての経済的負担は、ピンからキリまでといっていいと思います。


国や主治医の先生が推奨するもの

さて、日本で受けることができる4つのがん療養ですが、実際がんになってしまった時にどれを選ぶのか?そもそも選ぶことができるのか?そういった疑問が出てくると思います。まずは、一般的な流れを見ていきます。

通常がんの診断を受けるということは、健康診断、がん検診、何か症状があって受診をして、そこで『要精密検査』という判定が出た時、がん治療を行っている大きな病院で精密検査を受診し、そこでがんの診断確定がされます。

そして私たちは、その精密検査の結果を聞きに行った時に、がんであることを主治医の先生から伝えられます。

標準治療での根治

がんであることを伝えられると、すぐに先生から治療のはなしをされます。私は母のがんの告知に同席していましたが、こんな感じです。

『谷藤さん。残念ながら乳がんが見つかりました。ただ今ならまだ手術が可能です。手術をしましょう。(中略、手術の内容など)2週間後の25日でしたら、私が直接執刀しますけど、どうしますか?』

このように、先生は具体的な治療方法を提案してくれますが、ここで出てくるものは、4つがん療養のうちの

標準治療

です。基本は、がんの進行度合いを見て、治療が可能ならば、主治医の先生は、積極的にがんをやっつけるための治療を勧めてくれます。

ここで、自由診療や補完代替療法が出てくることはありません。自分で選べないという点に、疑問がわくかもしれませんが、それが国や医師が推奨する治療、いわゆる日本の医療のルールのようなものなのです。

緩和ケアでフォロー

その標準治療を受けたことで、痛みや辛さなどが出た場合には、それを取り除くために

緩和ケア

を並行して行うこともあります。ちなみにこの緩和ケアですが、つらさがあった時に患者さんが自分で伝えないと、受けられませんので、小さなものでも我慢せずにし先生などに伝えることが大切です。

このように4つのがん療養がありますが、国、主治医の先生が推奨するのは

標準治療と緩和ケアのセット

ということになります。どちらも健康保険適用の療養となります。日本で暮らす全ての人が安価な負担で受けられるようにという目的で、健康保険の適用になっているという側面もあります。


ネットを叩くと出てくる、たくさんの選択肢

では、反対側、健康保険が適用でない療養は、どのようにしたら受けられるのか?これについては、受けたければ自分で調べて、自分で受けに行く必要があります。

また、その治療などの効果などについて、国は承認をしていなものですから、結果についても自己責任ですし、健康保険がきかないため、一般的に費用が高額になるとも言われています。

たくさん出てくる免疫療法

まず、がんを積極的に叩きに行くというスタンスの自由診療ですが、ネットを叩くと『免疫療法』という名称を数多く目にします。

末期がんが消えた
ステージ4でもあきらめない

などのキャッチフレーズで、以前、がん患者の家族として、母のがんについてネットを叩いていた時に、私もそのキャッチフレーズに、ハッとしました。

血液を採取して、その中の免疫細胞を強化して、再び体内に戻し、パワーアップした免疫をもってがんをやっつける、そんなイメージの治療があります。

この免疫療法以外にも、いろいろな治療方法が出てきますが、自分で安全性や効果などについて、納得して選ぶことが大切です。ちなみに、耳にされたこともあるかもしれませんが、『先進医療』というものも、ここに分類されます(※1)。

※1 先進医療については、過去の記事「がんの備え|『先進医療』がんの夢の新しい治療?でも現実には、ほとんど受けられないというはなし」を、是非ご覧ください

実は多くの人が行っている

もうひとつ補完代替療法ですが、がん患者さんの半分くらいの方が、なんらかを行っているとも聞きます。私の母も、『びわの葉お灸』をしていました。あとは普段飲水として買うペットボトルの水も、バナジウム入りのものを選んで買うようになりました。

正直なところ、これをしたからどうだったか?ということはわかりません。主治医の先生も、『その程度だったら好きにやっていいですよ』とおっしゃっていました。

ただ、医師の立場からすると、この補完代替療法は、標準治療と違い、科学的根拠(エビデンス)が乏しいため、推奨することはありません。また、高額な料金を請求する悪質な業者にだまされ、ひどい目に合っている患者さんもいるため、注意を呼び掛けています。

ですから、自分が気分が良くて、かつ家計に無理がなければ好きにしたらいいというスタンスなんだと思います。この補完代替療法も『○○を食べたらがんが消えた』みたいなキャッチフレーズが目を引きますが、注意深く判断することが必要だと思います。


この体系を理解することの大切さ

メンタル的に大きなショックを受けると言われる『がん』になってしまった時、この情報の分類ができていないと、かなり振り回される可能性があります。

先生からは、標準治療が提案されます。それに対し、家でネットを叩き、自由診療の免疫療法や、食事だけでがんが消えたなどという情報に触れると、気になるので先生に聞くと思います。ところが先生は、

『科学的根拠に乏しい』

という見解を示す、でも自分的には良さそうだと思うのだけど…というズレが生じます。そこでしっかり先生とはなしをして、納得感を得られればいいのですが、悶々としたまま治療に入ってしまうと、不信感を感じてしまうかもしれません。

また、先生に全幅の信頼をおいていたとしても、この日本の医療のルールを知らないことで、以下のようなことも起こり得ます(※2)。

※2 日本の医療のルールについては、過去の記事「がんの備え|がんと日本の医療のルールを知らないことにより、主治医とのミスコミュニケーションが生じる可能性があるというはなし」を、是非ご覧ください

突然主治医に見捨てられる

がんが最も進行したステージ4になり、それに応じた標準治療を受けていたのに、ある日突然

『もうこれ以上治療のしようがありません。あとは残りの時間を好きなことをして過ごしてください』

などと、一方的に治療打ち切り宣言を主治医の先生からされることがあります。ちなみに私も母の乳がんの時、私だけ別室に呼ばれて告げれました。

こういったことを受けて『医者に見捨てられた!』といった内容の記事などを見ることがあります。もちろん言い方に問題がある医師の方もいらっしゃるのかもしれません。

ところが、標準治療には限りがあります。ですからこれは、医師に見捨てられているのではなく

『標準治療はすべてやり尽くしたので、治すための治療はこれで終了です』

という意味であることを理解する必要があるということです。この仕組みを知らず、医師に見捨てられたと落ち込んでいる時にネットを叩き

末期がんが消えた!

などのキャッチフレーズを見ると、そこに希望を見出したくなる方も出てくるという現実もあります。

ただし、自由診療は自己責任、全額自己負担の治療です。冷静に判断する必要があります。効果がないのに高額な医療費を取り続けた、などといった内容での訴訟が実際に起き、賠償判決が下っている例もあります。

がんを知ることから

がんへの備えで一番大切なことは

がんを知ること

と、私は考えています。がん患者さんは、様々な負担を負ってがんと向き合っています。その中で、もちろんお金の負担も小さくない場合があります。ですからがん保険を考えることも大切です。

ただ、がんになってしまった時に、今回の医療情報も含めてどのような負担があるのかを知ることが、本当のがんの備えと言えるのだと私は考えています。

そういった意味で、医療保険、がん保険の相談をする機会を大切にしていただきたいと思います。その相談の機会に、あなたの保険の担当者から、がんに関する保険の商品情報だけではなく、がん治療の実態や、実は大事な日本の医療のルールなど、実際がんになってしまった時の影像が浮かぶ情報を得ながら、正しいがんへの備えを作っていただきたいと思います(※3)(※4)。

がんと聞いて、がん保険商品の選択肢しか出せない人は、がんについて、しっかり学んでいない可能性があります。もし、はなしの内容が薄いと感じたならば、他でセカンドオピニオンをとってでも、正しい情報をとっておくことをおススメいたします(※5)。

それくらい、事前にがんを学んでいるかどうかは、大きな違いだと思っています。それは、正しいがんの知識を持たずに、約9年間、がん患者の家族という立場を体験した、私の実感でもあります。

(※3) がん治療の実態については、過去の記事「がんの備え|私たちが日本でがんになってしまった時、選択肢となる『4つのがん療養』」を、是非ご覧ください

(※4) 実は大事な日本の医療のルールについては、過去の記事「がんの備え|がんと日本の医療のルールを知らないことにより、主治医とのミスコミュニケーションが生じる可能性があるというはなし」を、是非ご覧ください

(※5) 生命(がん)保険相談のセカンドオピニオンについては、過去の記事「がんの備え|『がん保険選びにもセカンドオピニオン』一番大切なことは、オトクながん保険選びではない、というはなし」を、是非ご覧ください

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